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メモ用詩『領主と本の歌』

ある領主がいた
彼は読書が好きだった
本を集め
本の館を創った
門扉は広く
民衆に開かれていた
いつの間にか
旅人が
商人が
学者が
集まった
領主は彼らの土地の話
言語や昔話を聞くのが
何より愉しみだった
いつの間にか
本の館を中心に
家が建ち
市がたち
学校が創られ
町になった
あるとき
宗教家が訪れ
神への信仰を伝えた
町の人々は
宗教を信じるもの
信じないものと
二つに分かれ
いがみ合うようになった
あるとき宗教家は
神を信じぬのは
本の館のせいだと叫び
様々な本,学問を否定した
怒り狂った信者を
先導し
本の館に
学校に
人々に
暴力が振るわれた
血が流れ
炎が町を呑み込んだ
ついに領主も
捕縛された
宗教家は
領主に
町の人々に
神への信仰をせまった
領主は
人々の町と信仰からの
解放を約束に
領主は数多本とともに
焚刑に処された
その後
町は廃れ滅びたという
今も見つかっていない
だが
この領主と町の話は
今も本のなかに
息づいている