メモ用詩『羽根』
食べては
美味い鳥がいた
その歌声も美しく
賢さも人語を操るほどに
あるとき
父は娘に
鳥を贈り
娘は鳥を可愛がり
いつしか鳥は
良き話し相手
ある日
貴人が訪れて
鳥の肉を
所望した
娘は
鳥守るため
訴えど
父は無惨に
翼もぎ
貴人を饗した
鳥は娘を慰めて
言葉をかけるが
娘は涙で
目を腫らし
鳥は哀しみ
癒やすため
妙なる歌声
聞かせれば
娘の心に
光が灯る
その歌声を
聞いた貴人
次は歌声望み
金銀財宝
山ほどつみて
父親の目を
曇らせた
娘は哀しみ
言葉かけ
鳥よ鳥よ
どうか逃げて
鳥は娘に
伝えます
翼なく
どこへ
逃れられましょう
どうか娘よ
殺してください
娘は苦しみ
躊躇うも
節に屈し
ナイフを
手にし
鳥に向かう
末期の言葉
羽根で
矢を作るよう
鳥は伝え
娘の手のなか
息絶える
娘は羽根で
矢を作る
貴人は
鳥が死したと知るや
父を鞭打ち
娘から矢を奪い
財貨を奪い
去ってゆく
帰り道
貴人は空に
あの鳥をみ
自らの手
捕らえよう
弓に矢つがえ
鳥に向い放つ
気づけば
その矢
貴人の胸に
深く深く
突き刺さり
貴人は
喀血
落馬し
息絶えて
鳥獣の餌となる
胸に刺さった
鋭き矢
あの鳥の羽根
作りし矢であった
老婆は
子らの前で
話し終えると
美しい
一枚の羽根
取り出し
手から放す
風に乗り
羽根を
遥か彼方へ
飛ばしてやった