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カレーの隠し味
私の家族は、私が小さい時から食卓を囲むという時間がほとんどなかった。両親が共働きだったため、夜ごはんは、母が朝に作って置いてくれたものを弟と2人で食べることが多かった。母が家に早く帰ったとしても、仕事が終わって、他にも家事をしなければいけない母は、一緒に座ってご飯を囲むことはほぼなかった。たまに、家族が集まったかと思えば両親の喧嘩が始まる。食卓を囲むことに良い思い出があまりない。日曜日、サザエさんを見るたび、あんなふうに食卓を囲むのが憧れだった。
だからこそ、一緒に家でご飯を食べた日のことはとても良く覚えている。
私が小学生低学年のころ、珍しく母は私たちと一緒に食卓を囲んでいた。その日のメニューはカレー。いつもはサバサバ、テキパキしている母がその日は、何だかちょっとお茶目に「さて問題!」と、カレーを食べている弟と私に問題をだしてきた。
「今日のカレーにはある隠し味が入っています!それは何でしょう?」
「①牛乳②チョコレート③はちみつ④オイスターソース」
弟と私は一生懸命、考えて答えた。
確か私は「チョコ!」って答えた気がする。
お母さんは勢いよく「ぶっぶー」と楽しそうに答える。
あたったら何かご褒美がもらえたはずなんだけれど、それは覚えていない。けどお母さんの笑顔は覚えている。
「答えは全部でした~」とお母さんは楽しそうに答える。
「えーずるい!」私は答える。
「答えが1つなんて言ってないもん~」と母は大人げなく答える。
答えは外れたけど、私は何だかその日はいい気分だった。
楽しかったなあ。
それ以来、29歳になった今でもカレーを作るときは、この日のことを思い出す。だからか、カレーを作るとなんだか温かい気持ちになる。
お母さんのクイズの隠し味を全部入れる日もあれば、どれかを入れなかったり、入れたりのアレンジもするようになった。今はスパイスカレーにはまって、ルーに頼らず、一からカレー作ることもある。
カレーが好きになったのはこの日の暖かい食卓があったからかなとも思う。
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