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恩返し
短大を卒業して、初めて勤めた会社に、Tさんというある先輩がいた。
彼女はとても優しくて、仕事が出来る先輩だった。ある日のお昼休みの事。その先輩がランチに誘ってくれた。まだ慣れない新入社員の私を連れて、近くの美味しいお店に連れて行ってくれたのだ。
自分の成績、評価を上げる為に、それに繋がる仕事ばかりを率先してやり、時間をとるばかりの仕事は、見て見ぬフリをする人もいる中、その先輩は、そんな仕事を嫌な顔一つせずに、こなしていた。そして、まだ慣れない新人を気遣ってくれる優しさがある人だった。
ランチは美味しかった、と思う。何を食べたとか、料理の味、は全く覚えていないが、ただ、ただ、嬉しかった事だけ覚えている。
連れて行ってくれただけでも嬉しいのに、その先輩は支払おうとする私のお金を受け取らず、ご馳走してくれた。
どうしても受け取ってくれないので、ごちそうさまでしたとお礼を言い、このお返しは、今度は私がと、次は払わせて下さいとお願いした。
すると、その先輩は笑顔でこう言ったのだ。
「私にお返しはしなくていいから、nonchaさんがいつか先輩になった時に、後輩にしてあげ」と。
私の中での名言の一つである。
大人になった私は、ちゃんと恩返しが出来ているだろうか?
ランチではないけれど、私があげられるものはこれから頑張ろうとする、新人さんにあげているつもりだ。失敗しても、出来るようになって欲しい。出来るようになった先の楽しさを知って欲しいから。
そうして、またその子達がどこかで、誰かを助けてあげれる人に成長してくれれば、また嬉しいと思う。
3月、4月はお別れと出会いの季節。
ふと思い出した昔の話。
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