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来年開校!職人高等学校

昨日は株式会社四方継の高橋社長が来年開校を目指している大工職人のための高等学校である職人高等学校のキックオフミーティングでした。

この学校はいわゆるダブルスクール制で、通信制高校と提携し高校卒業資格を取得をしつつ、提携している工務店に所属してOJTで職人の技術が学べたり、OFFJTで自分の志を立てるための教育やビジネス全般を学べる学校です。

高校を卒業したら所属していた工務店で職人としてのキャリアが始まります。

同じような形式でダブルスクール制でやっているのは、堀江貴文氏が主宰するゼロ高等学院が有名ですね。

ちょっと話しが逸れちゃいましたね。戻します。
工務店が職人高等学校と提携するには様々なハードルがあります。
例えば、社内でのキャリアプラン(役割等級制度)を明確化することや学生を正規雇用することなどです。このキャリアプランは1部上場企業等では当たり前かもしれませんが、役割に応じて必要な能力やその年収が明確化されたものです。
自分がどのような能力を身につければキャリアアップしていけるのかわかるので目標を立てやすいですよね。中小企業の工務店でこのキャリアプランを策定している会社はほとんどないそうです。

正規雇用するのも理由があります。大工職人はこの30年間で激減しています。グラフによるとあと10年で絶滅が危惧されるような職種です。 

高橋さんのスライドより


その理由の1つに1人親方の増加です。この30年間ゼネコンや工務店は自社の利益率を上げるために大工職人を雇用せず、1人親方に仕事を発注してきました。
当然自社利益を考えるとなるべく安いお金で仕事を依頼しようとします。

その結果、熟練の1人親方でも年収が500から600万円程度が平均となっています。また個人事業主なので経費も自分持ちですし、社会保険等の支払いも必要になります。現場へ行くのも自分の車で、ガソリン費用も自分持ちで行く必要があります。その他、工具等様々なことに経費がかかるのでその分を収入から引くと、1人親方の可処分所得は350万〜400万円位になるそうです。つまり、大工職人の収入はアッパー400万円程度と言うことです。

この問題は国でも把握していて国土交通省では2020年に「建設業の一人親方問題に関する検討会」を設置されました。
建設業界の課題に関しての詳細は高橋さんのブログご確認ください。

また、客観的に「良い企業」と認定された工務店だけが職人高等学校と提携できるようにするために日本最大級のシンクタンクである日本総合研究所の監修で作られた未来創造企業という認定を受けることを必須条件にしています。

工務店改革のスキーム

キックオフミーティングには、様々な工務店の社長さんがこられていました。そして、このミーティングにおいて先ほど説明したようなハードルを越えないと職人高等学校と提携することはできません。

それなりに準備をする時間やお金がかかる内容ばかりです。それにもかかわらずこの仕組みに対して文句を言っている社長さんは誰もいませんでした。私は建設業界にいたことがないので、少し不思議に思いました。詳細の部分で多少改善要望があったとしても大筋は合意しているといった感じでした。

キックオフミーティングが終わった後に、社長さん達と話す機会があったのでいろいろ聞いてみました。

「職人高等学校に学生さんを通わせている間、OJTとはいえ賃金を払う必要がある。それを損に感じないのか?」

という空気を読まないド直球な質問してみました。笑
すると、ある社長さんから以下のように返答いただきました。

「目先の損得で言うともちろん損です。しかし、それで大工職人になりたいという人が増えてくれるなら、長期の目線で見ると決して損ではありません。今、自治体で入札案件があっても職人不足により、どの業者も札入れできず、入札が流れてしまうようなことが起きています。建設業界の職人不足は切実なる課題です。何とかこの課題を解決していきたいと思っているので、高橋社長がやっていることに賛同します。」

職人不足は建設業界にいる人たちなら当たり前のように感じている課題なんですね。なので、高いハードルも職人のことを思えば当たり前と感じられるのでしょう。

将来的に、大工職人が若者から憧れられる職業になればいいなと思います。そのためにも、雇用条件を整えていくことや若者たちが安心して学べる場を作っていくことが必要と理解しました。

また、大工職人になろうと思ったら職人高等学校に入学してから職人になるのが当たり前になれば、職人高等学校と提携している工務店しか職人を雇うことができなくなっていきます。工務店を続けようと思ったら職人高等学校と提携しないと仕事を続けられなくなるのです。

提携しようと思ったら、職人の地位向上のために作られた様々なハードルをクリアしてもらう必要があります。
つまり、この職人高等学校は全国の工務店を改革するためのスキームなのです。

建設業界の課題と似ている教育業界

今、建設業界に大きなうねりが起き始めているように感じます。職人が不足している状況やその原因など、完全一致ではありませんが学校の先生のなり手が不足している問題に似ていると私は感じています。

公立の学校ではいくら残業しても正規の残業代は支払われません。私立でさえ給与は年功序列ですし、最初から正規雇用で先生を迎えいれることは少なく、まずは有機契約を結び、3年で雇い止めにするケースが後をたちません。成り手が不足しているのに先生募集する要項には、給与の枠のところに「当学園規定による」と書かれているのみです。

私は先生たちの地位向上や幸福度向上に今後も時間を使っていきたいと思っています。そのためにも先に進んでいるひとから学び、自分なりのソリューションをどんどん生み出していく必要があります。そういった観点から考えても、高橋さんがやっている職人高等学校は学ぶべきところがとても多いので、これからも参加させていただきたいと思っています。

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