新社会人、 MOTHER HOUSE を買う
花粉を乗せた風が、鼻をくすぐる。
晴れの日のお手本のような日。
空は、まさに空らしい色に塗られていて、
ちぎれた雲は、形を少しずつ変えながら泳いでいる。
千駄木の小さなカフェで、おしるこを飲みながらこのnoteを書いていた私は、大学1年生からひっそりと持っていたひとつの夢を叶えたがために、ほくほくしていた。
どんな夢かというと、
MOTHER HOUSE の名刺入れを買う、という夢だ。
買ったのはこれ!
この美しいグラデーションに一目惚れ…
あじさいの色らしいけど、私には青い春の空と桜に見えた。
花びらがそよそよと舞って、空に溶け込んでいくかんじ。
まさに今の季節っぽい色!
この名刺入れに、どんな出会いが入ってくるだろう。
楽しみだ。
おしるこ屋さんにいた、カエル
バングラデシュが原点にあるブランド
実は、MOTHER HOUSE の原点は、バングラデシュという国にある。インドの東に位置している、アジア最貧国だ。人口はおよそ1億6000万人。でも日本の面積の約4割くらいしかないので、人口密度はえげつない。勢いのある国である。
今の私と同じ23歳のとき(!)にバングラデシュで起業を決意した山口絵理子さんは、特産のジュートと呼ばれる麻を使った高品質バッグを、現地で生産し輸入販売する MOTHER HOUSE を設立した。
「もっと健全で、見える形で、持続的な新しい協力の仕方があれば」という想いから、立ち上がったこのブランド。その裏には、それはもう壮絶な過去があったのだと彼女のエッセイ「裸でも生きる」を読むと分かる。ジェットコースターのような人生を追体験しながら、ぶわぁっと涙が溢れてくるアツい本…。おすすめなので、ぜひ!
MOTHER HOUSE に惚れたわけ
私が MOTHER HOUSE に惚れたのは、私自身バングラディシュに行ったことがあり、そこでの経験が結びついた時だった。
バングラデシュと出会ったのは、大学1年生の夏。4年前に遡る。スタディツアーで、首都のダッカに1週間、そしてチッタゴンの小さな村に1週間滞在した。
ダッカの様子。移動はリキシャが多い
スタディツアーの内容は、とっても面白いものだった。グラミン銀行(*)とタッグを組んでいる団体のスタディツアーだったので、実際にグラミン銀行から融資を受けている女性とお会いして、ヒアリングすることができた。
*グラミン銀行:貧しい人々へ無担保少額融資「マイクロクレジット」を行っている。創設者は経済学者でもある、ムハンマド・ユヌスさん!2006年にその功績が讃えられてノーベル平和賞受賞。優しいイケオジらしい(友人談)
ダッカ大学に通う大学生の通訳を挟みながらお話をしていくうちに、「グラミン銀行から支援を受けている女性」としてひと括りになっていた方々は個別化されていった。バックグラウンドをお互いに打ち明けながら、一気に距離が縮まったような気がした。
中には、当時の私と同じ18歳で2人の子供を育てている方もいて、衝撃を受けたのを覚えている。(下写真)
「貯めたお金は、息子の養育費に使いたい」
「夫は今バーレーンで出稼ぎしているけど、仕送りがどうしても足りない」
「子供が学校に行っている間、働きたい」
「もう少しビジネスを大きくして、親の生活をもっとよくしたい」
そんな生の声を聞きながら、女性も、男性も、求めているのはやはり「仕事」なのだと感じた。
川で洗濯をするお母さんたち
だから、「世界に通用するブランドを作る」というコンセプトの元、バングラディシュ現地でフェアに雇用機会を作り、ビジネスをしている MOTHER HOUSE にはぐっと惹かれたのだった。
小さな村に向かう、船の中
バングラディシュが近くなる
バングラデシュから帰国してから、バングラデシュという国がいろんな方向からびゅんびゅん目に飛び込んでくるようになった。
ふと服の裏を見ると、MADE IN BANGLADESH って書いてあったり、バングラデシュの料理店を見つけたり、たまたま道を歩いていたらバングラデシュ人の方に話しかけられたり。MOTHER HOUSE の存在を知り、バングラディシュのことを近くに感じる人も、増えたんじゃないかなぁ。
世界中で称賛されたドキュメンタリー映画「The True Cost 真のコスト、真の代償」にも描かれているように、バングラディシュを始めとする途上国での搾取問題は問題視されている。だからこそ、MOTHER HOUSE のようなフェアな雇用が広がってほしいと思うようになった。
このバッグを手にしてまず幸せになるのは、もちろん消費者だけど、これが日本に届くまでの過程にいる人も幸せにしているブランドなんだなぁ…
そう思いながら、私はおしるこをすするのであった。おいしかった。
「途上国の可能性」が一緒に届く
もちろんデザインや価格も大事だけど、やっぱり、その背景に芯のあるストーリーが見えるものは、魅力的だなぁと思う。誰のためにどんな想いで始めたブランドなのか。ブランドにおいてそれが占める部分が、とても大きくなってきているように感じる。
私は MOTHER HOUSE の「モノづくり」を通じて途上国の「可能性」を世界中のお客様にお届けする、という言葉も、まっすぐでいいなと思っている。
実際、貧しい国で作られたものを「かわいそうだから」という理由で買うフェアトレードの一部は、かなり高い値段が付いており、先進国のバイヤーが買っているケースが多い。でも、「かわいそうだから」という一時的な感情で買って、その商品は持続的に使われなかったりする。
でも、普通のブランドと同じように「かっこいい」「かわいい」という感情から買う。そして、山口さんの想いや、「途上国の可能性」が一緒に届く。結果的に、離れたところで生きる人々と繋がれる。そして買った自分もストーリーの一部になる、そんなブランド。ソーシャルで、かっこいい。
いつか、MOTHER HOUSE のネックレスを買いたいなぁ。高くてポンッと買えるものではないけれど…。ぷっくりしたしずくの形をした天然石は、心に刺さりすぎて、言葉を失うほど、美しかった。ドンピシャで好み。
最後に
めちゃくちゃ役に立つ魔法のベンガル語(バングラディシュの公用語)をひとつ!
「あみ ばんぐらでしゅけ ぱろばし」
(網 ばんぐらでしゅけ パロ橋 って覚えていた)
「私はバングラディシュが大好きです!」という意味。
この言葉をバングラディシュ人に言うと、口角がぐい〜って上がって、極上のスマイルを見せてくれる。「ベンガル語話せるの〜!?」って言われた後に、ベンガル語で色々捲し立てられるのは覚悟したほうがいいかも!
みなさまも、この言葉使ってみて下さい☺️あと、 MOTHER HOUSE にもぜひ行ってみて下さい!
現地の言葉を教えてくれた、ダッカ大学の学生。
バングラディシュはカレーが主食。私の唯一の命綱であった「のりたま」は、友達の口の上で真っ逆さまになり、一瞬にして消えていった。「めちゃ上手い!」と満面の笑みで言われた、よかった。「のりたま」が「MORITAMA」になった瞬間だった…。
バングラディシュで一番つらかった思い出はこれかもしれない(笑)
最後脱線しましたが、みなさまにとって、明日もいい1日になりますように!