円城塔を読んでみる 〜「プロローグ」から挑む円城塔の世界〜
こんにちは.なむです.
春ですね.花粉症の季節です.
気が付けばティッシュの箱が空になり,目から涙がこぼれます.
それはさておき.
最近意識的に本を読む時間をとるようになりました.
学術書を積みまくっているのはとにかく,小説や新書まで積みに積んでおり,さすがにまずいなと思ったことと,
今年はもう少し自分の時間をとっていきたいと思ったためです.
読書の記録をつけているのですが,最後に文庫本を読み切ったのはほぼ1年前.
久しぶりにきちんと本を読み,それがなかなかに刺激的だったので記録に残します.
読んだ本は,円城塔の「プロローグ」(文春文庫)です.
円城塔との出会い
作品の内容に触れる前に,まず僕と円城塔という作家の出会いを振り返ってみました.
恐らく初めて円城塔を認識したのは,「屍者の帝国」だったと思います.
あれは浪人しているときだったか大学に進学してすぐだったか,親の目を気にすることなくテレビを見ることができる環境を初めて手に入れた僕は,興味がありそうな番組や映像作品をあさり続けていました.
そのとき偶然目にしたのが,伊藤計劃作品のアニメ化プロジェクトのホームページ.
これをきっかけに,まず伊藤計劃に興味を持ちます.
その後立ち寄った書店の伊藤計劃特集コーナーで見たのが「屍者の帝国」で,このとき伊藤計劃の盟友であった円城塔という作家の存在を知りました.
次はおそらくTwitterで「文字渦」が話題になっていたのを見かけたとき.
ツイートの内容は覚えていないのですが,写真がすごかったんですよね.あのルビまで全力で使った紙面の迫力.
(当時見かけたツイートを探してみたのですが見つかりませんでした)
このときに本格的に円城塔という作家に興味を持ったように思います.
以降,本を読む機会はあった一方で,あの文字渦の紙面の迫力に少しだけひるんでいる自分がいて,なかなか挑戦できずにいました.
あれから5年以上.ようやく初めて円城塔作品を読むことができました.
「プロローグ」という作品
次にプロローグという作品について.
この本は文庫化して間もなく書店で見かけたものを購入し,積んでありました.
姉妹本として「エピローグ」があります.
プロローグが文春文庫,エピローグがハヤカワ文庫JAですので,出版社を超えた姉妹本の展開がされていることになります.
変わった作品展開だな,と思って手に取ったことを覚えています.
読んでみた感想
さてようやく本題の感想です.
あ,ネタバレを含む可能性があるのでお気をつけください.
真っ先に出てきた感想は「難しい」でした.
例えば,読み始めて真っ先に「一人称,語り手が何であるのかがわからない」という問題に直面します.
「わたし」と表記されている語り手と思しいものは「わたし」に話しかけるシーンがあって,その返答は「わたし」にされる.
うーん,書いててもやっぱりわかりませんね笑
他にも,地の文/語り/描写の区別が明確につけにくい,気がついたら世界が分岐している,メタと描写が混ざり合うというか何が起きているのかわからなくなる,などなど.
そしてなんとこれが「私小説」だというのだから驚きです.
えっ,私小説って語り手複数だったりプログラムが喋ったり世界が4つの軸で回転したりするものだったっけ…?と思ってwikipediaで調べてしまったほどです.
私小説(わたくししょうせつ、ししょうせつ)は、日本の近代小説に見られた、作者が直接に経験したことがらを素材にして、ほぼそのまま書かれた小説をさす用語である。(wikipediaより)
あ,やっぱり僕の認識合ってますよね…となるとこれは……?と更に混乱します.
ただこれは「悪文」というか「ただ訳のわからない文章」というわけでもない気がします.
小説としてのゴールが恐らくあって,それに向かう大筋は(たぶん)理解できる.
構造がわからないから,理解できないからといって「駄作」と決めつけてしまっていいものなのかは,僕には判断がつきません.
個人的には,「小説とは何か」を問い直すような,文学に対する挑戦を感じる気がします.
もちろん,ただの一介の本を読む一般人の意見ですが.
そういう意味で「面白く,刺激的な」読書体験でした.
最後に
是非読んだ方の感想を聞いてみたいと思いました.
そして次は,姉妹本の「エピローグ」を読む予定です.
気が向いたらまた投稿します.
以上,なむでした!