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山のチャンス


最近、ある登山家の本を読んでいたら、


興味深いことが書いてあった。


登山では、頂上を目指して登っている時よりも、下山する時の方が遭難の可能性が高い


と書いてある。


その理由としては


登山後の体力の消耗が、
本人が感じているよりも激しいことや
登頂という目標達成後の心の緩みや
虚脱感、それに加えて
山頂から見た下界の見晴らしの良さに
錯覚をして距離感を失い
思うように歩みが進まないように
精神的な疲労が倍増してくること


が挙げられていた。



登山の初心者ほど

下山の道を見失った時にパニック状態
になりやすく

落ち着きなく道を探して歩き回る時に

体力の消耗を早めてしまうそうである


たしかに、


人は何かの目標を達成した後や


大きな失敗や苦しみを経験した時などに自分の生き方を見失ったり


焦って行動したことがマイナスに
働いてしまう


にっちもさっちも行かなくなったり
することがある



例えば、仕事一筋で定年を迎えて


何をしていいのか分からず


抜け殻のようになってしまった人


念願のマイホームを持ってホッとした途端


子供が登校拒否や家庭内暴力を始めて


途方に暮れている夫婦。



健康だった体に思いがけない大病を

患った人など、それまで上に向かって

登ることばかりを心の支えに

頑張ってきた人が、その登った距離の分だけ


自分の心を見つめ直しながら坂道を


下りなければならないことがある。


そんな時、苦し紛れにあわてて行動すると


状況が悪化する場合が多い。


ベテランの登山家によると


雪山などで道を見失った時は

まず雪洞やテントで休養をとり

心身の回復を図ることが大切らしい。


気力が戻って落ち着いてから周囲を見回すと



思いがけないほど近くに


正しい道を見つけることも多いそうです。


登ることに比べたら一見
楽なように見える下りが実は大変。
人生の節々の中でも、誰もが自分自身の下り坂に正面から向き合わなければいけない時期は必ず来る




その時は、一歩を踏み出す前に
ゆっくり深呼吸をして、


心と体の休養を図り


その上で一緒に道を下ってくれる人と
素直に話し合い


呼吸を合わせて、周囲の状況や景色に
心を配りながら歩みを進めることが


大切だ。





小さなプライドはすてて、
決して一人で意気込まず、


自分自身を孤独に追い込まないことである。



最近の、青少年事件の悲しく辛い報道を見るたびに


上に向かって道を進むことしか学んでこなかった子供が

道の下り方が分からずに
荒れているような気がして仕方ない。




自分自身の小さなプライドに
しがみつき


自分を認めてくれない周囲に苛立ち


強い孤独感や根深い被害妄想に
さいなまれて


事件を起こすまで自らの心を
追い詰めていくのではないのか。



「忍耐とは希望を持つ技術であり
希望のない忍耐は無意味である」


という言葉がある。


苦しい時ほど希望を探し



喜びを探すことが
自らの力を高めていくのだと信じたい



その彼らの心の中に明るく前向きな
「希望」
という言葉は存在していたのか?


「上り坂と下り坂」

人はいつも道の途中である。






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