レシピ:ポルケッタ
年末年始はいつものように海外に逃亡した。
日本を離れて、朝から酒を飲んだり、早寝早起きをしたり、長い散歩に出かけたり、食べたり、食べたり、食べたりしてリフレッシュするのが私の年末年始の過ごし方だ。
加えて、今年は帰国後の休暇も長めに取った。
リフレッシュしてすぐに仕事とか、リフレッシュした気にならない。リフレッシュした後しばらくは、リフレッシュをリフレッシュする休暇が必要なのだ。
帰国して冷蔵庫を開けると、何も入っていなかった。まるで人生の終わりを覚悟したかのような物のなさだった。干からびた人参さえない。清々しいくらい空っぽだった。
買い物に行かなければ。
私は大きなエコバッグをバックシートに放り投げ車を走らせた。わくわくする。何もかもイチから始める食材集め。まるで新生活を始めるかのような気分だ。
久しぶりのスーパーの匂いと不思議な音楽。
正月に飽きてきたと思しき家族連れが多い。
そうなんだよ。日本の正月は退屈なんだよ。年末の紅白歌合戦がピークで、年が明けたらゆく年くる年の放送と共に、まるで風船がしぼんでいくみたいに静かで刺激のない日々が始まっていくわけよ。そりゃあ、おせちもいいけどカレーもね!となるわけなのよ。
私はカートに乗せたカゴの中に基本の野菜(玉ねぎ、人参、じゃがいも)や葉物野菜、意識高い系の人が食すというアルファルファスプラウトを入れていった。肉コーナーでは各種肉のさまざまな部位をカゴに入れた。他にも牛乳やらベーコンやらチーズやらバター、醤油に白だしなんかも買い込んだ。二つのカゴの中が瞬く間に入りきれないくらいに詰まっていった。たぶん、向こう一ヶ月は食材に困らないくらい買ったと思う。
今回の目玉は豚バラブロック。これは、冷凍してしまうと解凍にやたら時間がかかるので今日にでも調理に取り掛かりたい。牛ステーキ肉も買ったが、こちらはしばらくチルドで寝かせて2日後あたりに食べたいと思う。
さて、この豚バラブロック、どうしてくれようか。
いい具合に脂の入った縦長のブロックを前に、私は天からレシピが降りてくるのをまな板の前で待った。角煮の国から帰ってきたばかりなので角煮は却下だ。茹で塩豚という手もあるが、何かが違う。豚肉はとにかく時間をかけて煮てしまえばとんでもなく柔らかくなる食材なので、シャトルシェフにでも突っ込んで肉が柔らかくしてから改めて使い道を考えてもいい。何も思いつかなかったら、何日もかかるが塩をすり込んでハーブを添えてパンチェッタにしてしまえばいい。
む。パンチェッタ?
パンチェッタってイタリアじゃない? ということは、イタリアには他にも豚バラブロックのレシピが転がってるってことじゃない? グーグルさんに聞いてみると、ポルケッタなるレシピを発掘した。
ポルケッタとは、イタリアではポピュラーな家庭料理ということだった。肉は肩ロースでもモモ肉でもバラ肉でもいい。とにかく塊であることが重要だという。かたまり肉ににんにくとローズマリーなどを刻んだものを挟んでロールしてオーブンでゆっくり加熱していくだけだ。材料も少なく、なんと簡単なことか!
ということでレシピへGO。
簡単でめちゃくちゃ美味しいので、ぜひ試していただきたい✨️
《材料》
豚肉のかたまり(今回は豚バラ肉)600g
↑ 大きさに決まりはない。ただ最低でも400gは欲しい。
A にんにく 1~2片
A ローズマリー(生でもドライでも可)まぁまぁたくさん
A 他お好みのハーブ類(なくてもいい。私はフレッシュタイムを追加した)
A オリーブオイル 大さじ1
塩(肉に対して1.3%)、胡椒(適量)
タコ糸(食べない)
1.肉の塊に包丁の先を刺す(この工程は省いてもいい)
2.肉の塊に分量の塩を擦り付ける
3.肉を30分~1時間、冷蔵庫で放置する
4.肉を放置している間にAのオリーブオイル以外の材料を細かく刻む
5.刻んだに4.をボウルに入れ、Aのオリーブオイルを追加、ペースト状にする
6.肉を呼び戻す。オーブンを160℃の温度で温めておく。
7.肉の状態にもよるが、ロースやもも肉の場合はロールしやすいように観音開きのような切れ目を入れる。豚バラの場合はしなくていい。
8.肉の内側に5.のペーストを塗りつける。豚バラの場合は少し躊躇するかもしれないが、脂身じゃない方にペーストを塗りつける。大丈夫。ちゃんと巻ける。
9.ペーストを内側にして肉を巻く。豚バラ肉は、え?これでいいの?みたいな気持ちになるが、自分を信じてちゃんと巻く。他の肉は何周か巻けるが、豚バラ肉の場合は一周も巻けないかもしれない。それでも大丈夫。ちゃんとペーストを肉でロールして挟んで欲しい。
10.ロールしたら準備してあったタコ糸で適当にぐるぐる巻きにする。焼いている間に肉が開かなければいいだけなので、適当でいい。
10+.フライパンに油を敷き肉の表面に焼き目を入れる。このあとオーブンでローストするので表面が香ばしい色になるだけでOK。
11.肉をオーブンに入れる。目安は160度で60分。肉の大きさにもよるのでご自身で調節して欲しい。加熱しすぎないほうが柔らかく仕上がる。
12.切って食べる。切り方は自由。ハムみたいに切ってもよし。カットステーキのように噛み応えのある切り方もよし。
ポルケッタは冷めても美味しい。昨日のカレーならぬ昨日のポルケッタもなかなかのものだ。なので、余ったとしても面倒なことにはならない。フランスパンに挟んでも美味しいし、熱々のご飯の上に乗せても美味しい。
注意して欲しいことは、豚バラ肉を巻く時だ。とんでもなく分厚いものを巻くことになるので厚みの比率がおかしいんじゃないかと自分を疑いたくなるが、案外肉は柔軟に言うことを聞いてくれるので、とにかく自分を信じて巻いて欲しい。なんというか、うん、人間を頭からくるくる巻くことってできないよね? みたいな気持ちになるのだ。でも、案外人間も頭から巻ける。巻こうと思えば巻ける。ちょっとサイコパスだけど。
ということで、ぜひイタリアの伝統料理ポルケッタをぜひ皆さんもチャレンジしてみて欲しい。簡単だから。ホントホントー!