【絵本のススメ】ねえ、どれが いい?
1. 今日の一冊
子供の頃の「絵本の読み聞かせ」は、大人になってもおぼろげに残っているものである。
現代では、さまざまな玩具やゲーム機、ユーチューブなどのコンテンツが豊富に揃っている。夜、寝る前にすることの選択肢が増えているいまこそ、「絵本」の世界をのぞいてみることを薦める。
大人がうーんと、えーっと、と作り出した物語は、リアルな日常より、ポップで皮肉の効いたものが多い。
「絵本」は特にその傾向がある。
その可愛らしい絵本の世界に、現実的な側面を忍ばせている、一人の絵本作家とその作品を紹介する。
『ねえ、 どれが いい?』(英題:Would you rather?)
まず、題名がいい。
わかりやすく、かつ惹き込まれるフレーズの一言。
対象年齢の引き下げに成功している。
彼の作品は多数にのぼるが、この一冊は、絵本の内容が題名だけで推測できてしまうのが、魅力のひとつ。
この絵本の概要は、2つ以上の選択肢やシチュエーションから、あなたならどれを選ぶか、ページごとに問いかける内容となっている。
最初の1ページは、こう、掲げられている。
この作品の面白いところは、前提として、
「これから描かれる状況を、読者は想像してください」
と、投げかるところから始まるという、特異なスタートを切っている点である。
児童文学然り、フィクションの導入は、時代とともに、あるいは作家とともに、バリエーションのオンパレードだ。
著名な哲学者の名言から引用する、作中の中盤に登場する遺書の抜粋…。
しかし、「あたかも現実との境目はない世界線」だと仄めかすことはない。
「ねえ、どれがいい?」は違う。
めくられていく選択肢に興奮してほしいから。
読み終わり、兄弟や、両親や、あるいは一人で悶々と、想像して欲しいから。だから、「もし…」と聞いてくるのではないだろうか。
絵の特徴
今後、絵本紹介で、ジョン・バーニンガムの作品をいくつかあげる予定だが、共通することは、「簡素な表情」と、動きのあるコミカルなポーズだと分析している。
おどろくほど、表情のヒントが少ない。
しかし、幼い子どもでも理解ができる顔が描かれている。
極端な顔の動きがない反面、手や足や首の曲げ方で状況を把握できてしまう。
最後に(ジョン・バーニンガムとは?)
作者の紹介を少し。
ジョン・バーニンガム(1936年 イギリスサリー州の生まれ)は、ロンドンの美術学校でイラストを勉強し、処女作の絵本『ボルカはねなしガチョウのぼうけん』で鮮烈なデビューを飾った。
妻も有名な絵本作家である。
ぜひ、手に取って読んでほしい。
クスッと笑える作品である。
そして、各々がアレンジして「どれが いい?」と誰かに迫ってみると、彼のオリジナルの例題がいかに優れているか、いかに絶妙な雰囲気を持っているか、わかっていただけると思う。
では、また。