雲の向こうまで届くように。
僕たちは、いったい何のために生まれて、戦ってきたのか。
結局は何にもならない、たった一つの平凡な命に過ぎなかった
でも、きっと無駄じゃない。そうだろ?
激しいい光に目を焼かれ、凄まじい爆音に脳を揺らされ、僕は目を覚ました
「逃げろ! 早く!」
状況が全く理解できていないが、逃げなければ死ぬのは理解できた
「何してる、早く逃げろ!」
だから、僕は望むように、逃げ惑う大衆と逆に歩き出す
目まぐるしいほどに大量の銃弾が僕だけを置き去りにして背後の仲間達を蹂躙する
「なんとなく、わかっていたよ」
結局、銃弾は僕を殺さないまま、僕は敵の砦の前まで辿り着いてしまった
僕は足元に転がる、かつてのクラスメイトの亡骸から最後に彼が、自分を殺すために残していた爆弾を取り出し、敵陣目が明けて、投げ飛ばす
爆弾は空高く舞った
もう一度地面に触れる時、僕の名前すら知らない大勢の命を吹き飛ばして、大量の銃弾を止めた
2040年
人間たちはついに再び過ちを犯した
世界戦争の火ぶたは切って降ろされた!なんてことはまったくなく、まるで他人ごとのように起きていた戦争が、知らない間に僕たちを巻き込んで、地獄に叩き落とした。
戦争が僕たちのものになったのは、僕達が高校三年の最後
卒業式前、敵国の飛行機が東京にミサイルを落とした
それから、僕たちのあたりまえは、戻らない過去になり、新しい当たり前ができて、僕たちを支配した
僕達は気が付いたら当たり前に敵国との戦場に、当たり前に武器と自殺ようの爆弾をもって、名前も知らない誰かに武器を向けていた
生身の人を殺したのは、初めてだった
これは戦争で、何一つ冗談も遊びでもないとわかっていたけれど、その一回までは、僕はどこか現実味がないままそこにいた
自分が引いた引き金で、確か一人の命を奪った
その現実を、僕の体は本能的に拒絶して、気が付けば僕は、戦場のど真ん中で気絶していた
目を覚ますと、馴染みある友人たちが僕をのぞき込んでいた
「お、おきた笑」
「失神どかだっせよな~」
笑い声と共に届く彼らの声に、心が安らいだ。
しかし次の瞬間僕が殺したあの人の顔が頭をよぎり、僕はその場で胃の中身を全部吐いた
僕の次の任務は、既に占領済みのエリアの見回り
ショックで失神した僕を気遣い、親友たちと比較的安全な任務で成功体験を積ませるとのこと
正直舐めていた
安全なんて言葉、ミサイルが東京を焼いたあの日から、もうとっくにないのに......
彼の最後はあっけないなんて言葉でも足りないくらい、唐突だった
任務に出てから数時間、見回りも折り返し、四人でまるでいつもの下校のように拠点への帰路に着く最中だった
はじけるような音が、僕の鼓膜を揺らす前に、彼は死んだ
ショックとか、恐怖とかもう全部おかしくなってしまった
「えっ、最後の言葉が、元クラスメイトの乳のサイズの話?」
放心状態のまま訳のわからない言葉を話して立ち尽くす僕を、別の友人が無理やりひぱって物陰に隠した
「おまえ、しかっりしろ! あいつ死んだんだぞ!」
必死に僕に呼びかける彼もよく見たら気絶しないように、腕を捻っていた
彼を殺した銃弾の数秒後、一気に大量の銃弾の雨が降ってきた
僕らはすぐさま逃げようと、走り出す
しかし背後で、もう一人の友人が、うまく走れないで転んだ
「俺を置いて、さきっ!..............」
[俺を置いて先に逃げろ。]映画のような死に際のセリフも吐かせてもらえないまま彼は銃弾に跡形もないほどに壊された
僕と彼は、何とか走りつずけた
後ろを振り返れば死ぬ
ただひたすらに走りつずけ、味方の陣営までどうにか逃げ込めた......
目を覚ますと、もう誰も僕をのぞき込んではくれなかった
笑い声も、僕をバカにするような言葉も聞こえない
もう全て、おかしくなってしまった。
僕は、唯一生き残った彼を探しに歩き始めた
しかし、彼はすぐに見つかった
拠点から少し離れた洞穴の中
半身、骨をむき出しにしながら彼は死んでいた
あの日から、珍しいことでもないらしい
みんなおかしくなって、爆弾一つもって、どこかで一人死ぬらしい
僕はその日から、声が出なくなった......
彼が残した遺書に、お前だけは生きてくれと書いてあった。
お前は生きて、僕たちの命の意味を見つけてほしいと
それで、むこうに四人そろったら、卒業式、できなかった演奏会をやろうと
俺たち四人で、吹奏楽バンドフォーナイツなんだからっと
吹奏楽......数か月前、トランペットを握っていたこの手は、今は武器を持って、誰とも知らない敵の命を奪っている.......
(もう、僕には楽器を握る資格はないんだ......)
それから数年
僕は、言葉も心も消してただただ戦った
もう何のためとか、この先の結末なんて考えない
ただ、引き金を引いた
ある時、戦場で、久しぶりに元クラスメイトに再開した
彼もいろいろ失って、沢山壊れていたけれど、何年振りかに声を出して、思い出話をして笑った
比較的安全な戦場で、僕らは少しだけ心を取り戻せたような気がした
目を覚ますと、激しいい光に目を焼かれ、凄まじい爆音に脳を揺らされた。
「逃げろ! 早く!」
状況が全く理解できていないが、逃げなければ死ぬのは想像できた
「何してる、早く逃げろ!」
もう、殺してくれよ......
僕は、逃げ惑う大衆と逆に歩き出す
目まぐるしいほどに大量の銃弾が僕をかすめて、背後の仲間を蹂躙する
しかしその全てが僕を殺さないで、僕だけを置き去りにした。
「なんとなく、わかっていたよ」
結局、銃弾は僕を殺さないまま、僕は敵の砦の前まで歩いて辿り着いた
僕は足元に転がる、かつてのクラスメイトの亡骸から最後彼が、自分を殺すために残していた爆弾を取り出し、敵陣目が明けて、投げ飛ばす
爆弾は空高く舞い、もう一度地面に触れる時、僕の名前だって知らない大勢の命を吹き飛ばして、大量の銃弾を止めた
僕はそのまま零れない涙を流して倒れた
目を覚まして、誰かがのぞき込んでくれたのは何年ぶりだろうか
きっと、ようやく死ねたのだと、僕は安堵して笑みをこぼした
「ようやくも目覚めか、寝坊助ボーイだな!」
「日本人、はよく眠るんだ、な?レン?」
「日本人がじゃない、この若造がまだガキなんだ」
僕を茶化す声、でも彼らじゃない......まだ死ねていないのか.......
僕は慎重に体を起こすと、目の前の景色に驚愕した
明らかに国籍の違う欧米の黒人男性、ヨーロッパ系の白人男性、日本人の女性が、三人が向かい合って会話を弾ませている
「てっ......敵......」
思わず出たその言葉に、黒人の大男が僕をにらんで立ちあがる、それを制止するように日本人女性がなだめる
「敵とは物騒だな~まあ無理もないか、 私はレンだ。よろしく」
差し出された手に僕はよくわからいまま握手した
「で。このイケメン気取りがクリスで、この黒いのがボブ」
日本人女性の紹介に後ろの二人が好意的に、手をあげた
「で、今日から君は我々シャフトの仲間だ。よろしく」
仲間......その響きが懐かしくて、久しぶりに会話が嬉しくて、僕は差し出された彼女の手を握った
「あの......この車は、どこに向かっているんですか?」
「あー、そうだな。この車は今我々の組織、シャフトのアジトに向かっている」
「組織?シャフト?」
「ボーイ、よく聞けよ?」
黒人男性が促す
「そうだ、しっかりきいてくれよ。
我々は君のことを隅々まで調べさせてもらった、そのうえで君を我々シャフト勧誘......誘拐することに決めた。」
「ゆ、誘拐?」
「そうだ、誘拐だ。拒否権はない。」
「いいです。拒否はしません。」
「そうか、助かるよ。
我々、シャフトは、この世界戦争終末を目的としている組織だ」
「戦争......終わるんですか......?」
「終わらせて見せさ。一日でも早く、これ以上戦場に血が流れないように私たちは戦う」
正直、バカみたいな話だと思った、でも、もう僕はとっくに全てがどうでもよくなっていたから、馬鹿でも夢でも、見たいと思えた
「夢みたいですね......」
「ああ、夢みたいだな。しかし我々は夢を実現する。知っているか? 先日ハワイの戦場が解放されて、復興が始まっている。あれはわれわれシャフトの功績だ」
ハワイ......僕の初めての戦場だ......
「よく、わからないですね......」
「いいさ、我々は仲間だ、これからゆっくりわかっていけばいい」
レンの差し出す手に、僕はもう一度希望を持ってみようと決意して手を握った。
こうして僕はもう一度四人になった
彼らとの戦場はどれもこれまでよりも過酷で、常に危険と隣り合わせだったが、確かに少しず戦争を終わらせている実感があり、仲間がいたから、僕は壊れないでいられた
この世界大戦は、混沌を極め、やがて圧倒的な武力で制圧する国ナグと、ほかの国々とゆう形になっていった
この形成になったのもシャフトが、人種国籍問わず組織を拡大した成果と言える
僕たち四人は日々ナグとの戦場で一人でも多くの命を救って戦った
そうしてようやく、その時が来た
ナグの総司令と、幹部が集まる極秘の会議が行われる情報を入手した
シャフトは全精力を掛けてこの戦いを終わらせる作戦を立てた
僕らは、最前線ではないけれど、作戦に参加するとこが決定し、遂に明日とゆう日になっていた
「なぁ、四人で楽器でも、吹かないか?」
いつも男気満載のボブのそんなかわいい言葉に緊張で、少しこわばっていた空気が和んだ
「ボブ、楽器できるのか?」
冗談めかしに聞くクリスも内心嬉しそうだ
「ボブはボンゴやるよな、たまに聞いてるよ」
「なんだよレン、聞いてたのかよ.......」
「すまん、すまん、つい、聞き惚れてしまってな」
ボブは満更でもなさそうに頬を描く
「いいじゃないか、音楽はいいものだ」
そうゆう言うと、おのおの立ち上がる
「ほら、君はトランペットだろ?」
差し出された、トランペットは、ほこりをかぶっていて少し変形していたけれど、確かに僕の大好きだったトランペットだった
「いいんじゃないか? 人を殺した手で楽器を吹いたって」
僕は何年振りかに涙を零した
僕らはただ、空の向こうのみんなに届くようにトランペットに息を吹き込んだ
僕たちの演奏は、消してきれいじゃないけれど、静けさが支配する拠点を包み込んで、笑顔を消えていたシャフトの背中を押した。
作戦は、失敗だった......
作戦の情報がどこかで漏れていたようで、もうシャフトの戦友たちもほとんど生きたはいないだろう
僕ら四人は地獄に様変わりした拠点で、一人でも仲間の命を救うために、ひたすらに戦った
しかし現実は非情に僕たちの仲間を奪う
燃え盛る味方のテントに救出に行ったボブが直後に爆発に巻き込まれた死んだ
彼が最後、一言も残さないまま去ったことを、きっと僕達は忘れられない。
クリスも僕とレンを逃がすために身代わりになって死んだ
最後の言葉を言うよりも、僕達の命の為に彼は黙って去ってしまった。
結局この戦争は僕からすべてを奪った
僕とレンはかろうじて生き延びたが、僕はレンを置いて一人シャフトを出た
それから何年か、僕は誰一人仲間を作らいでただ死場所を探して、敵を殺した。
もうわかることの何倍も、分からいことだらけになった頃
僕はようやく見つけた
この戦争の原因を
そいつは古びた城の最奥、優雅にピアノを弾いていた。
最初の火ぶたを切って、世界中を地獄に落とし込んで、シャフトを壊滅させた元凶......
「こんな老いぼれが......」
もう言葉は出さなかった
そいつが、僕に気がつき、悠々己のロマンを語ろうと口開こうとした瞬間、僕は迷わず引き金を引いた
「言わせるかよ、みんな言えずに死んだんだから、お前には何も言わせない。お前だけは何一つ言葉なんて残させやしない」
その日は、珍しくよく晴れていて、青空が心地よかった
世界は、それから少しずつ平和に向かって歩み出した。
人々の傷も少しずつだが、癒えて、世界は手を取り合って歩んでいる。
これが終わりか、僕は一人ハワイのあの場所つぁ海を眺めながらつぶやく
僕たちは、いったい何のために生まれて、戦ってきたのか。
結局は何にもわからなかったよ、たった一つの平凡な命に過ぎなかった
でも、きっと全部無駄じゃない。そうだろ?
みんな、随分待たせたね、今行くよ
爆弾の栓を抜こうとしたその瞬間、背後から一瞬で爆弾を奪われ、目の前の海に放り投げられた
「ほら、君はトランペットだろ?」
背後から差し出された、トランペットは綺麗に光り輝いていた
ごめん、みんな......どうやら、まだダメみたいだ......もう少しだけ、待っていてくれよ
僕は彼女と二人、雲の向こうまで届くように、目一杯息を吹き込んだ。