「デッドボール」と「Royal We」

noteでは「書きたいテーマ」をタイトルだけ書いておいて下書きしておき、書く気になったら書くスタイルを取っているんですが、「これはちょっと今書かなあかんやろ」と思って引っ張り出したのがこれです。

8月19日の東京ヤクルトー中日戦、7回表に東京ヤクルト・木澤尚文が投じたシュートが中日・石川昂弥の頭部に直撃。石川は負傷退場し、木澤が危険球退場を命じられる場面がありました。

それ以前にも東京ヤクルトは、8月13日の阪神戦で今野龍太が梅野隆太郎に死球を与え、結果梅野が左尺骨骨折の重傷を負うシーンがありました。

SNS全盛の現代において、野球ファン界隈でデッドボール、特に負傷退場が起こってしまったシーンを取り巻く状況について考えることがある、と言うのが今回のテーマです。
ぼくが東京ヤクルトスワローズのファンであることを先に改めて表明した上で、以下読んでいただければと思います。


「ファン心理」として出る行動は、理解できるものも多いが…………。

まず、タイトルに書いた「Royla We」とは何ぞや? と言う話からしておきます。
「Royal We」とは、一言で言うなら「尊厳の複数」。起源は古代ローマにまで遡るようですが、ともかく主に王政時代のヨーロッパにおいて「国王などの高位身分にある者が自らを指す場合に、代名詞として一人称単数でなく一人称複数を用いること」を言います(Wikipediaから引用)。国王などの統治者が、国民を代表して公的な場で発言する時などに用いる文法・概念あたりと言えばいいでしょうか。
現代でも君主制国家において君主が用いることもある「Royal We」ですが、そうでない場合(そして多くの場合それを指すと思う)は「勝手に代表しやがって」くらいの皮肉として使われることが多いはずです。

それを踏まえた上で、以下のニュース。

「デッドボールを与える」と言う行為はそもそも投手が自分の首を絞めることだし、負傷退場させるリスクもある(実際短期間で2回やった)ので概してネガティブなものになります。
当事者(今回のケースで言えば今野と木澤)はもちろん、東京ヤクルトのファンからもこういう言葉が出て来るのはなんら不思議ではない話で、被害者の側になった阪神・中日のファンが怒るのも当然です。

それを踏まえた上で、ぼくは「試合でデッドボールがあり、負傷退場する選手が出る」→「被害者側チームのファンが怒り、加害者側チームのファンが謝罪する」と言う流れは正直なところ疑問符がつく。
端的に言えば「ファンサイドは所詮傍観者やん」と言うことなんですが、もう一度言います。「起こる言動は理解できる」と前提した上で、さらに持論を展開します。

非難されるべきは、「プロフェッショナルとして持っているべき技術がないこと」では?

そもそもデッドボールは、よっぽど打者が悪質なケースでなければ過失は投手にあります。添付したニュース記事にも書かれているんですが、今季(8月19日終了時)東京ヤクルト投手陣が与えたデッドボールの数は52個でリーグトップ。それまでも3日連続で複数死球を与えていて、この状態は「プロとしてどうなの?」と思われても仕方ないんです。
近年だと、その典型例は藤浪晋太郎でしょう。藤浪は素人目にも分かりやすく制球難に苦しみ、しかも出力で言えば160キロオーバーを連発できるパワーがある分「本当に危ない」存在だったのは、多くのファンの記憶にあるはずです。その藤浪もメジャー移籍を経て立ち直りつつありますが、藤浪の話は本題ではないので割愛します。
藤浪が制球難となるに至った過程も割愛しますが、要は「プロとして有り得ないくらい、本筋ではない恐怖心を与えたこと」がネット上でネタにされ、色々言われた原因のはず。それと似たようなことが、今の東京ヤクルト投手陣にも起きていると言えばいいでしょうか。

1週間で2回も負傷退場者を出したのだから、当たり前と言えば当たり前の話です。特に東京ヤクルトのファンとして思うのは、今野も優れているとは言わないけど木澤は制球力で言えばはっきり低いと言えるレベルなので、裏で努力はしているかも知れないけど「なんとかせえよ」となるんですよね。
だから、「お前らプロか?」と言われるとそれはもう甘受しかするないんです。
しかし、それはデッドボールを与えた当事者だけでいい。ぼくは、ファンがそれを背負う必要は全くないと思っています。
なぜなら、ファンは「被害者でも加害者でもなく、ただの傍観者」でしかないから。介在しようがないので、本来責任を負う必要はないと思うんです。

そう言うと、この記事を読んでくださっている阪神ファンの方や中日ファンの方は怒ると思いますが、ごもっともです。
ですが考えてみてください。野球でデッドボールって、どこのチームもやってしまうものなんですよ。そこはどのチームも、加害者にも被害者にもなり得る話です。
今回は1週間で2回やらかしたことで東京ヤクルトが非難の矢面に立っていますが、過去を探せば多分他球団も似たようなことはやっているはずです。1週間で2回はそうそうないにしても。

もう一度言いますが、今回のケースで言えば今野や木澤に対して「プロとして持っているべき技術がない」と批判するのなら、それは本人にとっては甘受すべき話です。
けど、「ファンが責任感じる必要あるの?」「ファンが必要以上に責める必要あるの?」と。起こってしまった結果も変わらない以上、気休めでしかないと思うんですよ。

結局、ファンが「第三者」でしかない以上は。

ぼくはその辺りドライかなって言う自覚があるので、怪我をして(させて)しまった選手に対しては当然心配に思うんですが、場外でファンが何をかやっているのを見ると「なんかなー」と感じます。
梅野の話だと、ニュース記事にも何回か上がっていますが、あの後今野から梅野に連絡があって、梅野も今野を気遣うコメントを残しているようです。
ぼくから言わせれば、「当事者間で解決したから梅野の件はそこで終わり」なんです。そりゃもちろん、リーグ優勝に向けてスパートしたい時期に正捕手を欠いた阪神のファンの中には遺恨を持つ人もいるでしょう、それは理解します。だけど「当事者間で手打ちにしたことを、何で第三者が蒸し返すの?」とぼくは思ってしまうんですよ。
これは、例えば逆に東京ヤクルトの打者がそうなったとしてもぼくの考えは変わりません。ここまでつらつら書いた以上は約束しておきます。

「持ちつ持たれつ」と言うと違うけど、野球と言う「石と同じくらい硬いボールを使う」スポーツをやる以上、ボールに起因する怪我をしてしまうリスクはあるんですよ。そのリスクを軒並み排除しようとするのは無理で、どうしても嫌ならプロ野球は見られないと思います(軟式も当たりゃ痛いが)。

何回も言うけど、贔屓チームの打者が負傷退場させられて悲憤慷慨するのは当然の心理です。逆に贔屓チームの投手が相手打者を負傷退場させてしまうと申し訳なく思うのも、モラルのある人間であれば当然のことだと思います。
要は、「第三者が必要以上に詰っても謝罪しても意味ないよ?」と。
これも突き詰めると、外野席での応援などにも話が行っちゃうんで結構危ない言説ではあります。それにネットを10年以上やっていて、似た流れは数多く見聞きしているので、たぶんぼくが言ったところで何も変わらないとは思っています。
ただ、自分のあずかり知らないところで起こったことで、必要以上に自分の精神を削ることはないだろうと。「それが賢い~」とか言っちゃうと「思い上がんな」となると思いますけど、どこかで線を引いて割り切る必要があるかなとは感じています。

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