ゲストハウスを創る、9月のはなし
9月1日に、高崎市あら町の物件を借りた。この日から具体的で実践的な、ゲストハウスを創る冒険が始まった。
物件は、築50年の軽量鉄骨造りで、長方形の箱を2つ重ねただけのシンプルな形である。1階の入り口に広い土間、奥に水回りと和室。2階が居住スペースだったようで、和室と洋室とキッチンがある。元々は酒を売っていたため、一昔前のまちの小売店そのものの雰囲気だ。立地に関しては、高崎駅から徒歩8分くらいで、建物の右も左も奥も隣と1mと離れていない、マチナカ物件である。
160平米が確保できること、間取りがゲストハウス向きだったこと、そしてアクセスの良さの3点で借りることを決めた。狭まった区画のため、消防法をクリアするのに時間をかけてしまったし、賃貸契約すらスムーズにいかないトラブルもあったため、見つけてから借りるまでは3ヶ月がかかった。
物件の紹介に不足があった。
酒屋を閉めたのが今から6年前で、その時間の分、荒れている。当然、借りる前に内見をしているが、気がせって美化していた部分もあるのだろう、改めて見るとどうしようもない箇所が山ほどある。そして手を動かすと、それらはさらにひどいことが明らかになった。
修繕には、融資額のほとんどを工事費に充てても全く足りない。そのため、1階の水回り工事と全体の電気工事のみを業者に依頼し、他はDIYで行うことにした。2024年9月の冒険は、物件とDIYの実情を知り、向き合い、応じた矢先に、現実はさらに苦なりということを学ぶものだった。
僕が机上の空論を練るのに飽きて暇を持て余していた時に掛けられた言葉である。1ヶ月を過ごしてみて、はたしてその通りになった。作業に入ると没頭し、視野が狭くなるのは僕のクセなので、なおさらかもしれない。
1週目(9/1-8)
2階の和室部分から取り掛かる。広さにして12畳プラスそれを囲う廊下とさらに囲う窓や壁。やることの想像がつけやすいこの場所からスタートした。
まずは箒と塵取りを買い揃えて開始するが、窓のサッシに溜まった砂は外に出ていかないし、砂壁は拭くたびにボロボロと落ちるし、畳はベニョベニョだし、押し入れの棚の釘は抜けない。想像以上に掃除と解体に時間を要するうちに、早速飽きてきた。和室の白木は、漂白クリーナーなんかでは全くキレイにならない。
2週目(9/9-15)
当初から、仲間をどのように増やすのか、は課題であったが、3日でモチベーションを失ったため、それを喫緊の課題に格上げした。Instagramのアカウントを作成すると、数人の友人が応援をしてくれた。(本当に有り難い)その中からお手伝いしてくれる人も増えてきた。
作業としては掃除からペンキ塗りに移った。しかし砂壁に塗るのは難しく、おまけに大雑把な性格だから、シーラーやペンキは目算よりも足りなく、買い足した色も微妙に違っていて、ムラも相まってチグハグな和室が出来上がった。
この週末に父親がゲストハウスに怒鳴り込んでくることになる。
3週目(9/16-22)
実務の困難さをそのままに、家族問題も抱えることになった。
詳細は割愛する(直接話します)が、保守とリベラルという思想の違いから目線が合うはずもないが、これに時間と精神を使う。
DIYはわかりやすい段階が終了し、一部腐食している畳、一角が抜けているキッチン、崩れたモルタルの壁など、見たことないものを考えることに追われた。毎日のようにセキチューに通い、段々とモノが揃ってきた。
業者の工事も始まり、近所の人にも周知し始め、ゲストハウスオーナーの先輩方も来てくれて、少しずつ賑やかになり始めた。
4週目(9/23-30)
大小の失敗を重ねながらDIYに関する成長を実感してきたが、一難去ってまた一難。排水管が壊れていることが判明する。想定外で見積もり外。本来壊さなくてもいい床を破壊し、崩壊箇所を特定し、見積もりを出し、オーナー様へ交渉する。壊れ方、オーナー様の対応、どこかで狂えば台無しになる。そう思うとDIYを進める手も鈍る。
調子に乗って個室の天井にペンキを塗ったら変な感じになった。助っ人がやった壁の方がキレイに仕上がっている。
思うようには進まないこと、DIYに向いていないことがわかった9月だった。
10月へ続く・・・