ねこになりたい
にんげんってむずかしい
人間として人と関わるのは、考えることが多すぎると思う。距離感を間違えてしまえば相手からの印象を悪くする、話したいことを話したいときに話そうとすると鬱陶しがられる、一度持った印象はなかなか改善することができない。
間違えないように、嫌われないように、そうやって正解を考えながらでないと、私は人と関係を続けることができない。
大袈裟だと思うでしょう。
ここで、実際に私が人と接するときの手順を紹介しよう。
ステップ1、相手との距離をはかる
相手が自分に対してどんな印象を持っているのか、どう思われているのか、どれくらいの距離を心地いいと思うのかを探る。相手のちょうどいいところにいられるようにする。
この段階で既に、距離を取りすぎて仲良くなるに至れない。
ステップ2、距離を詰める
ある程度心地のいい関係になれると、私は途端に心を開く。相手のことをもっと知りたい、私のことを知ってほしい。ここで一気に距離を詰めてしまう。相手はこの距離感に引くか、よろこんで仲良くしてくれるかの二択である。
ステップ3、迷う、悩む
詰めすぎた距離を後悔する。相手に距離を取られるとか、自分から自分の発言を見直して無かったことにしようとしたりとか、ことごとく人間関係の失敗例を詰め込んだような行動を起こす。
きちんと、人間に向いていない。
大切な人とはずっと一緒にいたいし、話したい人には話したいときに声をかけたい。甘えるなら全力で甘えるし、毎日優しくしてほしい、褒めて、撫でてほしい。
そうだ、ねこになろう。
いや、なるしかない。人間としてなら誰にも愛されなかった私だけれど、ねことしてならきっと、誰かに愛される。優しく撫でてもらえる。いい子だねって、かわいいねって褒められる。
来世でねこになるために、今世、徳を積もう。そのためだけに生きていよう。生きることをがんばろう。そう決意した。
ほんとうのねがい
冷静に考えたらわかることだった。人間をやめて、ねこになって、それで解決するはずがない。
ねこになりたい、と思うけれど、それは愛されたいから。大事にされたいから。毎日がんばって生きている、それだけで褒めてほしいから。
ほんとうは、ねこになりたいんじゃない。
ほんとうは、今の私のままで、誰かに大切にされたかった。
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