不安のプラナリア
昨日は気持ちの悪い夢を見た。
丸1日経った今でも思い出すと悪寒がする。
蛭のような蚓のような、黒くて長い虫が1匹、身を激しくくねらせて蠢いていた。
私はそれを、夢の中の「私」の目を通して見ていて、「私」はその虫を狂ったように踏み潰していた。
不快な音を立てて踏み潰されたその虫は身体を切断され、破片は四方に散らばった。
けれどその虫は死なない。
死なないどころか、散った破片それぞれがプラナリアの如く身体を再生させ、瞬く間に完全体がどんどん殖えていくのだ。
てらてらと光るその虫を「私」はヒステリックにひたすら踏み潰し、その破片を掃除機で吸い込む。潰すとさらに殖えると分かっているのに、何故か潰し続ける。
掃除機に吸い込まれた破片は掃除機の中で既に再生を始めている。
これでは虫は無限に増殖するばかりで、減ることは無い。
「私」が何度目かの奇声を発する寸前に、私は目を覚ました。
あの夢の中で、「私」はその虫を最も効率よく処分する方法を理解していなかったのだろう。
ヒステリーを起こして虫を踏み潰す前に、虫が1匹しかいない状態で捕らえてしまえば虫は増えなかった。
その1匹を殺す方法こそまだ見つかっていなかったが、虫を増やさず現状を維持することは出来たはずだ。
私は何も、気持ちの悪い夢の話がしたかった訳では無い。
この夢は、現在の私を暗示していたのでは無いかと思うのだ。
黒い虫は、私が抱いている不安。
狂ったように虫を踏み潰す「私」は、不安を解消しようと躍起になる私。
踏み潰される度殖えてゆく虫は、あれもこれも解消しようと手を出しすぎて余計増えてしまった不安。
最近、4月からの大学生活に対して抱えきれないほどの不安を感じている。
鬱になって高校で不登校になり、退学してからまだ1年。この1年で鬱と睡眠障害はまったく良くならなかった。
何も治せていないのに、良くなっていないのに、1年前に出来なかった学校生活にまた戻らないといけない。
私が大学に合格してから、家族が明るくなった。
お金が無いとぼやきながらも、母は私を何度も買い物に連れ出してくれた。
普段ほとんど笑わない父が、「お祝いだ」と言ってにこにこ笑いながら焼肉屋さんへ連れていってくれた。
彼らからの祝福が、私のために使ってくれたお金が、私にとっては重圧だった。
きっとまた、高校時代と同じように彼らの思いを裏切ってしまうから。
鬱になって2年間引きこもっていたのに、いきなり大学生活に適応しないといけないこと。
昼夜逆転が治っていないのに、朝早くに起きて満員電車に揺られないといけないこと。
どれだけ辛くても、もう不登校は絶対に許されないということ。
これらが全て大きな不安になって、「私」の前に黒い虫として現れた。そんな気がする。
マインドマップを思い浮かべて欲しい。
私のマインドマップは、中心にある大きな不安が枝分かれして、その先にまた小さな不安の種ができてしまう。
「私」が踏み潰した虫が芋づる式に殖えていく様子そのものではないか。
寝ている間まで不安に押し潰され不安を踏み潰そうとし、不安と喧嘩をしていたらいつ心が休まるのだろう。
今日も、もう午前の1時半だ。
眠剤を飲んでから2時間が経った。全く眠れる気配がない。
今日は朝起きられるんだろうか。またひとつ不安が増えてしまった。
今日もきっと、夢にはたくさんの虫が出てくるんだろうな
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