数字に強い人が「限界利益」で判断していること
「あの人、数字に強いよね。意思決定も早いし。」
そういった方々に共通するのが、数字の捉え方に管理会計的な目線があることです。
先日、利益分析のテーマでセミナー講師をする機会がありました。
そこで利益分析をするための指標の一例として、限界利益を活用した意思決定方法の事例について紹介しました。
会計をかじったことある人であれば、聞いたことのある「限界利益」。限界利益を算出する方法を知っている人はいても、意思決定にどう活用しているかの目的が抜けている人が多い気がします。
今回の記事では、「数字に強い人は、限界利益を見てどんな意思決定をしているのか?」というテーマで書いていきたいと思います。
■限界利益を把握する目的
「限界利益」。聞いたことがあるという人は多いかと思いますが、損益計算書(PL)に表現される利益指標でしょうか?
答えは、財務会計の損益計算書(PL)には出てこない利益指標です。
限界利益は、財務会計ではなく、管理会計的な考え方で登場する利益指標になります。
管理会計の目的は、経営上において何かしらの意思決定をすること。
つまり、限界利益についても、経営上の意思決定に寄与するものです。
限界利益を把握することで、今後伸ばしていくべき商品や部門の判断ができるようになります。
内容を少しかみ砕いて説明するために、ラーメン屋を例にして説明してみます。
■売上総利益から分かること
管理会計と財務会計の目線の違いを説明するために、まず財務会計の売上総利益について触れていきます。
とあるラーメン屋の損益計算書の売上総利益が以下の数字だとします。
材料費がラーメンの原材料、労務費が店長や社員の人件費、経費がラーメンを作るための水道光熱費といった例の売上原価の構造で。
売上総利益は、本業(商品)で稼ぐ力として捉えることが出来ます。
損益計算書上は、さらに販管費を引いて営業利益、経常利益というように最終損益を出していくわけですが、まずは売上総利益で利益を出すことが大事です。
「なんだ。売上総利益がしっかり把握できていれば大丈夫じゃないか。」
と思った方もいるかと思います。間違った考えではないです。が、今後注力していく商品や部門を判断するためには、限界利益を把握する方が適している側面があります。
■限界利益を把握する方法
売上総利益でなく、限界利益が見えることでどんな判断ができるかについて考えていきます。
このラーメン屋では複数の商品(A or B)を取り扱っていたとします。例として、ラーメンとつけ麺の両方を扱っている。
さて、このラーメン屋として、管理会計的な目線で今度どちらの商品に注力してすべきでしょうか。
この意思決定に役立つのが限界利益。そして、限界利益を算出するために必要なことは、費用を変動費と固定費に分けることです。
少し補足しておきます。
変動費は売上の数量に応じて増加する費用のこと。ラーメンの原材料費であったり、水道光熱費の経費なんかも仕込みが増えれば上がっていく費用です。固定費は売上の数量に関係なく一定の費用のこと。店長や社員の人件費なんかは固定費の扱いです。
売上高から変動費を差し引いたものを限界利益と定義します。これにより、該当商品や部門の売上単位毎の収益性が分かる、ということになります。
先ほどの売上総利益の例を、限界利益で表現すると以下の通りです。
商品Aも商品Bも原材料費は変わらないです。ただし、商品BはAよりも仕込みに時間がかかっているなどの理由から、経費が多くかかっている。
限界利益率でみると商品A>商品Bとなっていることが分かります。
こういった違いから、商品Aについてはより販売戦略やPRを強化していこうといった意思決定ができるようになります。これが製造業の例であれば、工場側の生産数量の増産を依頼して、営業側の販売計画も見直す、といった意思決定ができます。
■まとめ
今回は、「限界利益を見て、どんな意思決定ができる?」をテーマに書きました。
数字に強い人になるためにも、ビジネスマンとして管理会計の目線は身につけていきたいところです。
それではまた!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?