【観た映画】悪は存在しない(監督:濱口竜介)※大半は無料

『悪は存在しない』を観た。
好みの映画だった。
ただ、ラストシーンに引っ張られている気はする。
でも、ラストシーンがなくても好みのタイプではある。

♥ 好きだったシーン

ネタバレにならないと思うので言ってみる。

村の湧き水を使った特製うどんをごちそうになった男が「体が温まりました」とお礼を言うが、お店の人に「それって味じゃないですよね」と返されるシーンだ。

想定外の返された男が押し殺しながらも少しムカついたような表情を漏らすのも良い。
まあ、お話的には、そこに至るまでの色々な背景があって含みのあるやりとりなのだが、それにしても会話上だとあまりに唐突すぎるマジレスに笑いそうになった。たぶん、本来は笑うシーンじゃないので我慢したが、ある程度、笑いを狙っているとも思う。

♥ 事前に『WILL』を観ているか・観ていないかで印象が変わるかも

旧Twitterでも何人かが発言していたが、この映画を観て、どうしても『WILL』のことを思い出してしまった。

『WILL』とは、エリザベス宮地監督によるドキュメンタリー映画で、俳優の東出昌大さんの現在に迫った作品だ。東出さんは今、俳優業の傍らで山に住んで、鹿を狩るなどの狩猟生活をしている。というか、映画を見る限りは、どちらかと言えば、狩猟生活の傍らで、俳優業をしている感じに見えた。

『WILL』の中で、東出は鹿を何度も撃ち殺す。中でも自分で仕留めた鹿をナイフでさばき、鹿の内臓が飛び出してくるシーンは衝撃的である。
『悪は存在しない』に話を戻すと、森の近くで銃声が聞こえた場面で、巧が「今日はもうちょっと遠くで狩りをしていると聞いている」と言い、うどん屋の店長っぽい男が「それなら大丈夫か」と返すくだりがあったのだが、自分は『WILL』を観ていたので、「狩りをするハンターたちが事前に自分がどこを担当するかを申請して共有している」という前知識があったので状況を理解しやすかった。(ちなみにこれはあまり重要じゃないシーンだ)

そんな『WILL』を観た後だと、自然や動物に対する印象は大分変ってくる。
そして、それは『悪は存在しない』を観る上で結構重要な価値観だと思う。

♥ 巧役の⼤美賀均さんの演技について

ネットニュースによると、主演の⼤美賀均さんの演技について、一部の人が「演技が下手」などと批判をしているようだが、自分は全くそう感じなかった。
現実でもああいう人はいるし、役柄的にはあのしゃべり方で合っていたと思ったが、批判している人はどういう感じを求めていたのだろうか。
また、あの役に求められるのは言葉よりも身体性だと感じたので、その役割は十二分に果たしていたように思えた。薪を割るとか、水を汲むとか、そういう生活の所作の説得力。

♤ 本当は映画を考察したくない

意図とか意味とかを紐解いていくのは本当はあんまり好きじゃない。
そういうのも楽しみ方のひとつだと思うけども、そういう消費のされ方だけだと、もったいないと思う。
ただ人の感想や考察を見て、作品の見え方が良い意味で変わることもあるので、悪いことだけではない。

♥ ラストシーンの解釈

この作品が話題となっているのは、あのラストシーンの要因も大きいと思うが、あのシーンについて自分の解釈を書いてみる。
こちらはネタバレを含むので、以降を課金箇所にした。
読みたいと思ってくれた稀有な人は、一旦課金して読んだ後に、返金してもらって構わないです。
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