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ミニ物語「絶対に嘘をつく男」
絶対に嘘をつく男
あるところに絶対に嘘をつく男がいた。
ある賢人は、その人に向かってこう尋ねた。
「そなたが、絶対に嘘をつく男か?」
その人は答えた。
「いかにも、私が絶対に嘘をつく男である。」
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矛盾の言葉遊び
その人が、絶対に嘘をつく男である場合、
「私が絶対に嘘をつく男である。」という台詞は嘘になるので
「私は絶対に嘘をつかない=真実のみを言う男である」という意味になる。しかし、これは絶対に嘘をつく男であるという前提条件と矛盾するので、前提条件が間違っていることになる。
では、その男は嘘をついてないとする。
「私が絶対に嘘をつく男である。」という台詞は嘘ではないので
その男は絶対に嘘をつくことになる。このとき男は嘘をついてないとする前提条件と矛盾する。
ということは、前提条件「あるところに絶対に嘘をつく男がいた。」が正しいとしても間違っているとしても、矛盾が生じるのである。
このようにして前提条件さえも矛盾の回路に入っている場合、次はどこを疑えばいいのだろう。