読書感想文「方舟」
こんにちは。mikaです。
毎日暑い日が続きますね。
外へ出るとそれだけで体力を消耗するので、休みの日は家にこもって読書をしています。
今はビジネス書よりは小説を読みたい気分で、探していたところ見つけたのが夕木春央さんの「方舟」です。
ミステリーはあまり得意ではないのですが、2023年の本屋大賞にノミネートされた作品とのことで読んでみることにしました。
一言でいうと、「読後感」はこの上なく最悪です。
今まで読んだ本の中で、間違いなく一番読後感が悪かった…。
最近心がほっこりするような小説ばかり読んでいたので、「地下建築に閉じ込められて、閉鎖された空間の中で殺人が起きる」というストーリーは暗くて重くて「うわぁ…こんな状況嫌だな」と思える場面だらけ。
読み進めるのを躊躇するときもありました。
さらに「誰か一人を犠牲にしなければ自分たちは助からない」という輪をかけて嫌な状況の中で、登場人物たちは極限状態に置かれているはずなのに、なぜかみんな淡々とした雰囲気を感じます。
こういった設定の作品では登場人物が狂ったように暴れたり、ひどく感情的になったり、精神が崩壊する様子が描かれたりすることも多いと思うのですが、この作品はほとんどそういった場面がありません。
もちろん皆、他の誰かを疑ってはいますが「誰か一人を犠牲にしなければならない」ということもあり、それをあからさまに口にすることは少なく、「お前が怪しい」「いやそれを言うならお前のほうが…」というやりとりもほとんどありません。
私は夕木さんの作品を初めて読んだのですが、こういう淡々とした描写は読みやすくて好きです。
これは、翔太郎というストーリーを整理する役割のキャラクターによるものなのかなと感じました。
「誰を犠牲にするのか」「自分たちが出す結論は正しいのか」「そもそも誰かを犠牲にすることが正常な判断なのか」など、読みながら登場人物と一緒になって考えさせられてしまいます。
きっと正解なんてないんでしょうね。
でも私達の周りは正解がない問題だらけで、正解がわからない中でも進んでいかなければいけないことがほとんどです。
そんなときに、自分はどういう軸でものごとを見て、何を思って判断するのかをあらためて考える機会になりました。
暗く重いストーリーで読後感も本当に最悪なのに、なぜかもう一回読みたくなるんです。
結果をすべてわかったうえで、再度読んでも良い気分にはなれないこともわかっているのに、もう一回読みたい。
これは本当に不思議で、今まで感じたことがない気持ちでした。
ちょっと元気なときにあらためて読み返したいと思います。
気分が塞いでいるときに読むのは辛いので…。
あ、暗いところや閉ざされた場所が苦手な方は気をつけてお読みくださいね。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。