BP製剤で顎骨壊死が起こったケース
この患者さんは先日インプラントがごそっと抜けてきた患者さんです。
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この患者さんは、過去にインプラントを埋入し、前後関係はわかりませんが、骨粗鬆症のお薬を飲んでいた時期がありました。しかし、それも短期間のもので現在はもう何年も服用されていない方です。
(このインプラントは自院で入れた物ではないのですが)歯医者さんのメインテナンスを長らく拒否されており、ご自身での歯磨きもまともには行ってくれない方でした。
その理由は高額な治療費をかけて治療したのだから、絶対に大丈夫。調子が良いのに変に触られて、おかしくなったら困るという理由からでした。
なんとか説得をし、ケアを受けては下さるもののご自身での歯磨きはちゃんとされない、虫歯の治療は嫌がられていました。
高齢になってきていることもありご家族さんにもお話はしましたが、本人のしたいようにしたら良いと思っているとのことで説得の協力を得ることはできませんでした。
そんなある日、インプラントのガタつき、痛みが生じ、排膿、歯茎の腫脹、骨が歯茎から露出していることに気がつきました。(抜歯をしたわけではありません)
骨は白くて健康なものではなく腐敗している骨でした。つまりただの骨露出ではなく腐骨が出てきていたのです。
ビスフォスフォネートを服用すると副作用の1つとして顎骨壊死が起こる可能性が示唆されています。
骨粗鬆症でBP製剤を服用した方の1~3/1000、悪性腫瘍でBP製剤を服用した方の6~9/100の確率で大体生じるそうです。
これは運任せで生じるものなのか。
勿論お薬の影響はあるので100%の予防というものはありません。しかし、これは様々な論文で口腔衛生不良が危険因子となること。つまりお口の中が不潔状態(細菌の質の悪さ・細菌数の多さ)だとこの顎骨壊死は生じやすくなると言われます。
また、インプラントを入れた直後に起こるとは限らないです。私の患者さんのパターンもそうです。
そもそもインプラントと顎骨壊死の関連性がとても明確なのかと言われるとそうではありません。
BP製剤を服用したら生涯リスクは付きまとう。だから、お口の衛生不良が引きがねとならないように、ずっと気をつけなければならない。
これはどんな疾患を患っても、お口の健康を保つことで副作用を避けたり、お口から栄養が取れたりが維持できるわけです。
最後にBP製剤は、それなりのリスクも多いですが、骨粗鬆症に効果的な薬であり、骨粗鬆症による骨折で寝たきりの患者さんがこのお薬のおかげで減少したと言われています。
疾患を治すには療養に加えてお口からしっかりと栄養を摂取すること。お薬の副作用を起こさないためにはお口の健康・清潔を保つこと。
これに尽きると思います。