ゼノブレイド3は初代ゼノブレイドを超えた、ゼノブレイド3感想・考察(6話時点)

高橋哲哉は哲人である。高い認知能力、豊かな想像力、優れた共感力を持つ、哲人である。この様な人物がゲーム制作をしている事を、私はゲーマーとしてとても幸せに思う。そして、その彼が制作したゲームに出会う事が出来て、これもまたとても幸せに思う。

ゼノブレイド3で私が震え上がる点は、人間の描写にある。その人物が何を思っているのか、言語非言語問わず細かく描写しており、更に、その人物が抱えている矛盾、口には出せずに居るが密かに認識していた問題、これらは必ず何らかの形で指摘又は警告される。そして、私の経験上、その矛盾や問題は、人が生きて行く上でしばしば不可避的に発生するもので、全知全能で無い限り必ず何らかの形で指摘又は警告をされるものであって、その指摘又は警告に依って、それを受けた人物の評価が落ちるどころか、寧ろその一連の現象に深い共感をプレイヤーに与えている。

その矛盾や問題を、一人物だけに留めず、一定の共同体にもしっかり発生させているのも興味深い。人が集まれば必ず発生する蟠りを、高橋哲哉はゲーム内で再現し、またゲーム内でその矛盾や問題をやはり指摘している。政治的な保守派や過激派も描かれていたし、中盤から登場する『シャナイア』と云うキャラクターに於いては、競争社会故に生じる劣等感や、不満、不公平感、無力感、絶望感、これらが見事に描かれていた。詳しく述べる事は避けるが、例えば恋愛と云う点に於いて一定の満足をしており「一生今のままがいい」と願うキャラクターが居るが、『シャナイア』は「その様に一生今のままがいいと願うのは、少なくとも今に満足出来る力のある者の特権であり、弱者である私は満足の出来ないザワザワを抱えたまま生きろと言うのか」と指摘する。

例を挙げだすとキリが無いのでここまでにするが、これ程までに人間の細かい描写を実現しているのは、やはり高橋哲哉の高い認知能力、豊かな想像力、優れた共感力があってこそだと感じる。そして、その哲人の表現を、これ以上無い形で完成させているモノリスソフトのスタッフはやはり素晴らしい。今はまだ6話に差し掛かった所だが、今後のシナリオが気になって仕方がない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?