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マンガ文化の起源は手塚治虫?いえいえ、そうじゃないんです!「マンガの歴史」みなもと太郎

現在の日本におけるマンガ市場は、紙ベースでは3000億円(2016年※1)あると言われています。
これに電子書籍と合わせて2016年は過去最高の市場規模を達成したと言われています。
このように、日本におけるマンガはビジネスとして十分な市場規模を持っています。

では、産業として、そして文化としてマンガが日本に登場した理由はなんでしょうか。
よく言われる定説は「手塚治虫」という天才の登場によってマンガが文化としても産業としても発展したという事です。
しかし、それは本当なのでしょうか。
そんな、考え方に一線を画す本が登場しました。
今回紹介する「マンガの歴史」は、今だからこそマンガとはどんなもので、どんな事があり、現在まで続く産業・文化になったのかを知ることができます。
作者は「風雲児たち」でおなじみ「みなもと太郎先生」です。
みなもと太郎先生は、風雲児たちで歴史マンガを書かれているマンガ家でありながら、マンガ研究家としても有名です。
そんなみなもと太郎先生が日本にマンガが登場してから現在まで書いていこうという本です。

・マンガの登場

マンガの歴史が大きく動くことになったのは、第二次大戦が終わってからです。
具体的に言うと、手塚治虫の登場で状況は一変します。
しかし、マンガそのものは手塚治虫が作ったわけではありません。
それ以前にも、存在しました。

みなもと太郎先生は、「なぜ日本ではこれだけマンガが発展したのか?」と聞かれることがあるそうです。
これに対しての返答は「日本にはもともと絵を楽しむ文化があったからだ」と答えることにしているそうです。

そのマンガの元祖としての文化として紹介しているのは「絵巻物」です。
絵巻物は、日本の絵画形式の一つで、情景などの絵を連続して描き、物語を表現しています。
この絵巻物は、日本では奈良時代、今から一三〇〇年も前にあったのものです。
みなもと太郎先生は、絵巻物の「本家」は中国にあると思っていたそうです。
元々、中国にあったものが、何らかの形で日本に伝来したのだろうと思ったそうです。

ところが、調査したものの、元となるようなものが中国はもちろん、それ以外の諸外国でにも、こうした「連続した絵で物語を伝える表現形態」という物が見つかりませんでした。
そう考えると、この表現形態が日本独自に発展した絵画形式なのかもしれないと指摘しています。

このような部分を見ると、日本においてマンガという表現形態がここまで発展したという理由が判る気がします。

・手塚治虫の登場

突然でしたが「一万時間の法則」をご存知でしょうか。
これはマルコム・グラッドウェルの「天才!成功する人々の法則」で提唱された概念です。
どのような法則かと言うと、どんなエキスパートもだいたい一万時間程度継続して取り組んでいたという法則です。
現在は、一万時間に関しては違うのではないかという意見もありますが、やはりどんな人も天才と呼ばれた人は継続して取り組んでいたのは事実のようです。
なぜこの話をしたかといいますと、手塚治虫も例外ではなくこの法則に当てはまる人なのです。
戦前・戦後はマンガもほとんど出版されておらず子どもたちがそれらに接せられるのは非常に特別なことでした。
そんな中、手塚治虫は突出して「恵まれた環境」の中にいました。
その状況を、みなもと太郎先生は「彼はマンガ家になるため生まれてきたといっても過言ではない」と文中で明言しています。
手塚治虫は親がとてもマンガ好きで、たくさん収集していました。
いまでは古典として名作と言われる作品「のらくろ」などを含めてほとんど揃っていたそうです。
それだけでなく、ディズニーのアニメもたくさん観ていました。
他の子供が映画館で観ている中「家」でも観ていました。
当時とても高価だった家庭用フィルム映写機があって、それでディズニーの短編映画を観ていたそうです。
その為、彼はフィルムを実際に手に取って観ることができました。
一フレーム、一フレームどういう絵を描いているか、どう絵を動かしているのかを観れる。
これはとても勉強になりました。

事実、手塚治虫が漫画界に影響を与えた「新宝島」という作品(当時手塚十八歳)では、「藤子不二雄」が「音が聞こえる」や「車が動いて見える」と言い「さいとう・たかを」は「紙で映画が作れる!」と感動したという話が残っています。

これはディズニーアニメの映画的表現というものが影響を与えていたのです。
その為、当時新宝島を読んだ人の中には「すごいけどディズニーアニメみたいだな」という印象を持った人もいます。

このように、あのマンガ界に多大な影響を与えた手塚治虫はマンガ家になるべく、マンガに革命を起こすべく生まれてきたような人だったのです。

・まとめ

このように、この本は現在からマンガの歴史を改めて観ることで、現在の日本におけるマンガ文化を書いています。
子供向けという事もあり、とても平易に書かれています。
改めて漫画文化というものを考えるには最適な本です。

※1.全国出版協会・出版科学研究所調べ 



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