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【ショートショート】「蒼く染める白い花びら」/ブーケ・ドゥ・ミュゲ
こちらの曲をイメージして作らせていただきました。素敵な楽曲をありがとうございます!
誕生日にくれたスズランの花束。
それがあなたなりの、別れの言葉だったのかもしれない。
小糠雨の雫が煌めいて星が照らす夜の道を今、あなたとの思い出をたどるように歩いている。
レトロな雰囲気のメリーゴーランド。手をつないでよく来たよね。
「私のイメージって何色?」
そう質問をした時、あなたは一瞬首を捻って即座に答えた。
「 "あお" だな」
「え?私ってそんな冷たい感じ?」
「違うよ。すべてを包み込むような優しい "あお" 。静かな海の "あお" 」
巡る木馬の陰影とあなたが好きなアマリリスの香水にそんな会話が蘇り、私を淡く包んでくれる。
遊園地の光が消えると、月の光が一人ぼっちの影を映し出した。
隣にあなたがいない。
夜の雫が静かに落ちた。
ねぇ、今あなたは何を思っているの?
この前訪ねて行った時、あなたを見て泣いてしまった私のことは忘れて欲しい。
あの時は胸がいっぱいになって、張り裂けそうになって……。
ごめんね。
本当に泣きたいのはあなたの方なのに。
『一緒にいれなくてごめん』
ふと、あなたの声が聞こえた気がした。
周りを見渡しても誰もいない。
そのときマーチが高鳴った。
消灯したはずのメリーゴーランドのマーチが。
慌ててスマホを握る。
「すぐ来れますか?あなたを呼んでいます」
急いで病院に向かうと、あなたはたくさんの機器に囲まれていた。
涙ながらにあなたを見つめるご両親。
命を繋ごうと懸命に動き回るお医者さんと看護師さん。
茫然と立ち尽くす私の肩にあなたのお母さんがそっと手を置いた。
「この子、ずっとあなたを呼んでいたの。話してあげて」
私を見つめるあなたは儚げに笑みを浮かべた。
そばに寄り添って手を握る。
あなたは手を握り返した。
「ごめんな……」
あなたの目尻から涙がこぼれた。
泣いてはいけない。
唇をギュッと噛みしめた。
そうだ。楽しいことを話すんだ。
「ねぇ、元気になったら何がしたい?」
精一杯、元気で明るい笑顔を作った。
あなたを勇気づけたかった。
まだ未来があると信じて欲しかった。
……そして私も信じたかった。
もしあなたの夜が明けて、空が青くなったら。優しい青が訪れたら……。
「……メリーゴーランドに乗りたいな……」
楽しそうな笑顔を浮かべながら、あなたの手はポトリと私の手からこぼれ落ちた。
※
有明の月はあなたの姿。
あなたが残る私の心。
スズランの花言葉 "もう一度幸せであれ"
あなたは私に、違う幸せを掴んで欲しいと思っていたんだよね。
自分以外の相手ともう一度……。
だからスズランをくれたんだよね。
自分の余命を知っていたから。
でも私はこれから迎える朝をあなたと生きる。
他の誰かを好きになっても、家庭を持つようになっても。
いつまで経っても変わらない。
あなたはずっと私の心で生き続けるから。
窓が染まっていく。
心の中の蒼いヴェールをあなたが揺らす。
もう一度幸せに……。
一緒に幸せに……。
たとえ姿は見えなくても、目を閉じればそこにはいつもあなたがいるから。
終
こちらに参加させていただきました。自分なりに考えて作ってみましたが、素敵な楽曲の世界観を壊していなければいいのですが💦
よろしくお願い致します🙇♀️