【ショートショート】「2005年の思い出」/忘年怪異
『良い年になりますように』
2005年の初詣。
本堂を参拝していると、彼女が話しかけてきた。
「こっち行ってみようよ」
何度か来たことがある神社だけど、こんな道あったっけ?
好奇心に駆られ、彼女の後をついて行った。
まっすぐ続く林道。
鳥のさえずり。
木々が途切れ、穏やかな光が降り注ぐ所に茅葺き屋根の庵があった。
どうやら茶屋らしい。
「お茶飲んで行こうよ」
和風の食物をあまり好まない彼女からの珍しい提案。
抹茶好きの俺に合わせてくれたのかな?
「どうぞお寛ぎ下さい」
柔らかな光芒に包まれた空間。
暖かい室内。
美味しい抹茶を飲みながら、穏やかに微笑む彼女との時間を過ごしていた。
ゴ〜ン
お寺の鐘が鳴る。
音が消えるまで目を閉じてその余韻に浸っていた。
「明けましておめでとう!」
ハッ!
ここは…家?
茶屋は?
抹茶は?
そもそも…
彼女って誰?
…ん?
2006年!?
「2005年は?」
「はぁ?今終わったでしょ?」
……え?
忘却の年2005年。
この怪異は謎のままだ。
(410字)
終
こちらに参加させて頂きました!
かなり誇張しましたけど……
実は、私の体験談が含まれているっていう怪異もプラスされていたりします笑(…いごとではない)
よろしくお願い致します🙇