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【ショートショート】「サンタさんとお話ししちゃった」

 あたし、とうとう会ってしまったの!
 サンタさんに会ってしまったの!

 クリスマスの夜、お家にお父さんでも、お母さんでも、お兄ちゃんでもない人がいたんだ。

 電気もついてなくて真っ暗なのに、その人は温かそうな光に包まれていたんだよ。

「サンタさん?」

 あたしが言うと、こっちをニッコリ見たの。

「おや、見つかっちゃったね」

 真っ白なおヒゲがフサフサしている優しそうなおじいちゃんだった。

「えんとつがないのにどうやってお家に入ったの?」

「ワシはみんなの心にあるえんとつから入って来るんじゃよ」

「心にあるえんとつ?」

 サンタさんはね、笑顔でゆっくりうなずいて、こう言ったの。

「みんなの心には暖炉があって、優しい心、人を思いやる心、助けようとする心、そんな温かい心を作っておるんじゃ。そこから伸びるえんとつから入って来ておるんじゃよ」

 お家にあるえんとつから入るわけじゃないんだぁ。だからみんなのお家にプレゼントを届けられるんだね。

 でも熱くないのかなぁ?

「暖炉に火がついていると、やけどしちゃうよ?」

 あたしがそうきいたらね、サンタさんはおヒゲを揺らして笑ったんだ。

「大丈夫じゃ。心の火は、なんにも傷つけないのじゃよ。温かくて、元気が出て、勇気が湧いてくるんじゃ」

「そうなんだ!あたしの心にも暖炉ある?」

「みんなあるさ。ワシはな、君のえんとつから入って来たんじゃよ」

「そうなの?あたしの暖炉、熱くなかった?」

「温かくて、優しい暖炉じゃったなぁ」

 うれしい!
 あたしにも暖炉があったんだ。温かくて優しい暖炉だって!
 サンタさん、やけどしなくて良かったぁ。

「これからみんなのところにプレゼント持って行くの?」

「いやいや。もう今年は終わりじゃよ」

「あたしが最後だったの?」

 そしたら、サンタさんは首を横に振ってね、不思議なことを言ったの。

「みんなの心の中はつながっているんじゃよ。だからワシはみんな一緒にプレゼントを届けられるんじゃ」

 ね?不思議でしょ?
 みんな一緒にもらえるんだって!
 あたしがもらうとき、みんなも一緒にプレゼントをもらっているんだって!

 そういえば、あたしが転んで泣いていたとき、お母さんも泣きそうな顔をしていたっけ。
 『心がつながっている』って、そういうことかなぁ?

 あ、でも……

「コウくんがね、『サンタさんじゃなくて、お父さんがプレゼントを置いてた』って言ってたよ。サンタさん、なんでコウくん家に行かないの?」

 あたしがサンタさんを見たらね、サンタさんはしゃがんで、あたしの頭に手を置いたの。大きくてあったかい手だったぁ。

「それはね、ワシが頼んでいるからじゃ」

「サンタさんが?」

「『この子は私に配達させて下さい』とな、ワシにお願いする人がたくさんおる。そういうときは、その人に配達をお願いするんじゃよ」

「コウくん家もそうだったの?」

 サンタさんは今にもとろけそうなおめめでコクンとうなずいたの。

「みんなの喜ぶ顔を見たい人が世の中にはたくさんいるんじゃ。でもな、その人たちを見つけてもそっとしておいてほしいのぅ」

「どうして?」

「ビックリさせたくて、コッソリやっているんじゃから」

 サンタさんはニコニコ片目をつむって、人差し指をお口に当てて、
「シーッ」
 イタズラっ子みたいで、可愛い!って思っちゃった。

「そっか!『シーッ』」
 あたしもまねっこ。

「さて、トナカイがお腹を空かせて待っておるから、そろそろ行くかの」

「ありがとう。あたし、『サンタさんとお話しした』ってみんなに自慢していい?」

 サンタさんはゆっくり微笑みながらうなずくと、少しずつあたしの心にある暖炉の火に溶けていっちゃった。

 世界一素敵なプレゼントは、人を思う優しさなんじゃ。

 たとえプレゼントを持っていなくても、人の幸せを願う人。
 喜ぶ顔が見たくて、その人のために一生懸命になれる人。
 自分ができることで精一杯、人に寄り添おうとする人。

 そんな人達は、みんなサンタクロースなのじゃよ。

 他のだれかの心にある暖炉に火を灯す人は、みんなサンタクロースなのじゃよ

 君にもそういう大人になって欲しい。

 それがサンタの願いじゃ


 最後にこんな言葉を残して。




こちらに参加させて頂きました!
素敵な企画ありがとうございます😊
よろしくお願い致します🙇

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