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【"物"語り】「本の願い 文字の魔力」/ 風雷


 私は本と呼ばれています。
 文字によって力を与えられる存在です。
 私を開いてみてください。
 文字の大群があなたに押し寄せてくるでしょう?

 文字は言葉から生まれました。
 言葉は時に人を癒し、時に人を殺す道具にもなる強力な呪文です。
 その魔力が封じ込められている文字も、使い方一つで人を生かしもするし、殺しもします。

 知っていますか?
 文章になった文字たちが微かな声を発することを。

 面白い文章では文字たちも笑っています。
 感動的な文章では文字たちも感涙にむせびます。
 喜びを伝える文章では文字たちもはしゃいでいます。

 聞こえますか?
 文字たちの喜びが。
 嬉しそうな躍動が。

 そういう文章を読むと、人は生き生きしてきます。
 感動に心が突き動かされます。


 でも、中には文字の力を悪用し、人を痛めつけ、切り刻み、死に追いやる人もいます。

 そんなとき文字たちがどうしているか知っていますか?

 文字たちは泣いています。

『そんなことに使われたくない』と泣いているのです。

 その嘆きを聞いたことがありますか?
 その悲しみを感じたことがありますか?

 時には厳しいことを書かなければならない時もあるでしょう。
 悲しいことを書く必要に迫られるときもあるでしょう。
 そのような時でも、その一つひとつが人の役に立つ情報であり、生きる力であり、皆が必要とする文章であって欲しいのです。

 私を開いた時、風が吹き荒れ、心を乱し、混乱を招くこともあるでしょう。
 雷に打たれ、土砂降りの雨にたたずみ、前が見えなくなることもあるでしょう。
 でもそのすべてが恵みの海となり、心を溶かす光となって、文字の魔力を受けた人の心を育て、意思を育み、強さをもたらす一助になって欲しい。

 そう願っています。


 人間の皆さんにお願いがあります。
 どうか、文字たちが喜んで魔力を使えるような、生き生きと飛び回れるような、そんな文章を書いてください。
 文字たちの表情は人間には見えないかもしれません。しかし、それを読んだ人を見れば、文字たちの気持ちも分かるはずです。

 本を読んだ人、文章を目にした人の気持ちは、文字たちの気持ちそのものですから。

 書いた人の心を伝え、読んだ人の心を動かす。
 それが文字の魔力です。

 神にも匹敵するこの魔力。
 使い方はあなたたち次第です。

 生かすも殺すもあなたたち次第なのです。

 神の姿をかたどり生まれた人間たち。
 あなたたちなら、文字の魔力を最大限に使いこなして、読んだ人に大きな喜びを与える。
 それがきっとできるはずです。

 文字の声に耳を傾けてください。
 文字の魔力を思い描いてください。

 読んだ人がどう思うかを考えてください。
 読んだとき、あなたならどう思うかを考えてください。

 人が喜び、楽しみ、笑い、育ち、未来へ羽ばたける言葉。
 それが文章となったとき、文字の魔力は天を焦がし、風雷となって人々に優しく降り注ぐことでしょう。

 それは神と見紛みまがうほどの遥かな光となり、人々の心を明るく照らし続けるのです。



こちらの楽曲をイメージして書かせていただきました!幻想的な曲、力強く優しい歌詞。素敵な曲をありがとうございます!

こちらの企画に参加させて頂きました!
本という「物」が語るスタイルなので、【"物"語り】とさせて頂きました。

言葉好きの端くれとして、精一杯思いを込めて書いたつもりです。
よろしくお願い致します🙇‍♀️

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