外国人労働者に頼らなければ成り立たない日本
今現在もですが、外国人労働者、いわゆる技能実習や特定技能に関する仕事に就いています。一部世間では外国人を差別し排斥するような発言がありますが、まず一言「レイシストくたばれ」と申し上げておきます。それは今回は置いといて、この仕組みを良く知らない方が多いと思いますので、かいつまんで説明とそれに頼る日本の現状をお話します。
■あなたの街にも必ずいる
他人事のように考えている人も多いと思いますが、まずその先入観を捨ててください。どんな田舎であろうとほぼ100%技能実習生(特定技能外国人)は住んでいると思ってください。私は愛知県ですので、これくらいの大都市であれば企業も多いだろうしまぁいるよねと言うのは想像に難くないでしょう。付き合いのある企業もほとんどが大都市圏ですが、知り合いの組合を見ると結構な田舎の企業に入れているケースも多いです。業種職種にもよるでしょうが、田舎は農家であったり食品工場であったりと、その土地の地元企業というケースが多いです(そりゃそうです)今年の夏、岩手の実家に帰り盆に親戚の家に行きました。そこも結構な沿岸の田舎ですが、そういった土地ですら実習生はいます。親戚の方が「最近は頭に布被っている人たちが増えたね」と言っていました。ヒジャブ、イスラム系なのでおそらくインドネシアの人たちでしょう。以前までは中国人が多かったと言っていましたが近年景色が変わったそうです(これについては後程解説します)制度自体は20年以上前からありますが、この10年近くで実習生を入れる企業は急速に増え、それは地方まで影響したことでしょう。全員ではないですがあなたの街で歩いている中国・ベトナム・インドネシア(他様々)の人は結構な確率で技能実習生か特定技能の人と考えて差し支えありません。なにも不法滞在でもなければ昔のように嫁に来ているというのは極少数です。
■どこの国が多いのか
以前は圧倒的に中国が多かったのですが、中国の発展に伴いその人数もここ数年一気に減りました。ベトナムが多いというのは報道などでご存じでしょうが事実多いです。ですがベトナムも色々な理由で減っており、来年以降恐らくですがインドネシアと人数が逆転してくることになるでしょう。これも私の感覚ですが、現状は以下のような状況です。
中国:2割
ベトナム:4割
インドネシア:2割
カンボジア:1割
ミャンマー:1割
その他:ごく少数(フィリピン・ネパール・バングラディシュ・スリランカetc)
あくまで最近の入国から見る比率ですので、現在まだ日本にとどまっている人はこの限りではありません。まだ圧倒的にベトナム人が多いです。組合が管理している半数以上がベトナム人です。その次に中国人がいて次にインドネシアとカンボジアって感じです。とはいっても組合によって受け入れ可能な国が異なりますので、これはあんまり参考になりません。ただ上の数字はあながち間違ってはいないと思います。そしてこの数字は前述の通り来年以降確実に変わってきます。ベトナムが激減してインドネシアが激増するでしょう。そして中国もまた少し増えると思います。中国もやっぱ地方の経済は酷いままです。中国に関して補足すると、コロナ前までは経済発展の関係でもう海外に出なくてもいいという状況になりました。しかしやはりコロナというものは世界の構図を一気に変えました。当然技能実習にも大きな影響がありました。一時減った中国の実習生が今また微増傾向にあります。それは中国国内での就業が出来ずにまた海外に働き口を求め始めたからです。うちの会社に中国の人が大勢いるので、日本が報道する中国よりはよっぽど詳細な現状を知ることが出来ます。やっぱそこらへん大事です。
■何をして働いているのか
今回の本題です。技能実習・特定技能として日本で働くことが出来る職種には限りがあります。ただそれを全部説明するのはダルいので傾向だけ大まかに説明します。性別・国によってもその傾向は結構顕著に違います。あくまで目安です、当然それ以外も多くいます。
中国男性:建設系
中国女性:食品関係 縫製関係
ベトナム人男性:建設系 食品関係
ベトナム人女性:食品系 各種工場系(プラスチック製品や自動車部品など)
※当方が愛知県なのでやはり自動車関係は多いです
インドネシア人男性:食品・工業製品など工場系
インドネシア人女性:食品系 農業
ミャンマー人男性:建設関係 流通関係(倉庫仕事)
ミャンマー人女性:縫製関係 手作業関係(手先が器用な感じがあります)
これはあくまでも私の管理している組合と付き合いのある別組合の傾向です。そして土地の偏りもありますので全てこうではないと補足しておきます。ですが国によって結構働きたい職種業種の偏りはあります。これは全国を見たとしてもある程度同じ感じになると思います。やっぱその国の性格や経済状況などで左右されるわけです。
さてこれを踏まえてですが、恐らく読んでいるあなたが日常的に使っている食べているお世話になっている製品が作られる過程で、ほぼ100%彼ら彼女らは関与していると言って差し支えありません。食品系で例を上げればコンビニのお弁当を作っている工場やスーパーのお惣菜、加工食品の各種ライン、どの工程にもまずいると言って間違いありません。今の日本の食は確実にこういった人たちに支えられています。それでいて「外国人は日本から出ていけ」と言ってる人、明日から食うもの無くなりますよ? とにかく今自分の手元にあるなにか、それが作られるのにどこかで必ず関与していると思ってください。少し考え方変わりませんか?
■どの程度の給料で働いているのか
たまにニュースになりますが、薄給で正当な支払いなく働かされているというお話がありますが、あれは稀な例です(稀だからニュースになるんですけどね)基本的に技能実習生であれ日本の土地土地で設定されている最低時給は上回っていないといけません、これは大原則です。これを無視しているとそもそも受け入れは出来ませんし、それが後からばれた場合その企業はアウトです。またその企業において雇用している日本人と明らかにおかしい給与差があってもいけません。同じことやらせてるなら同じ額払えよというルールも存在します。外国人で言葉も通じないし未熟だからということで差別することは絶対にあってはならないのです。組合の仕事として毎月必ず給料支払いのチェックはあります。そういった部分で不公平なことはできないシステムが一応は取られていると思ってください。ただこれが企業と組合が結託して悪いことをしているというケースはあります。そういったものがニュースになって出てくるわけです。ちなみに私の知っている範囲では一つもありません。
どの程度稼ぐことが出来れば満足できるのかという話ですが、ぶっちゃけた話最低時給でも彼らとしては高いというのは事実です。一例を記載します。私が実際現地に行って話を聞いて見た内容です。
インドネシア:月収3万円(自動車整備・土木系)
カンボジア:月収2万円(農業)
ホント一部ですが、この程度くらいの収入が平均値であるとお考え下さい。そう考えると時給例えば1100円で働いて1か月稼ぐと、残業など含めれば25万円程度稼げるわけです。彼らの現地の年収を1か月で稼ぐことが可能です(もちろんそこから保険や家賃はひかれます)
ただ十分というわけではありません。当然自分の日本での生活費と結局現地通貨にして仕送りをするわけですから、今の激烈円安時代は彼らにとってめちゃくちゃ不都合です。物価も高くなっていますし、そういった面でも改善がなければ我々日本人と同じです、辛い生活になります。日本がどんどん貧乏になれば彼らも日本に魅力がなくなります。そうするとこの制度に頼っても労働力を確保できない未来が来るでしょう。恐らくすぐ来ると思っています。
■どうやって日本に来るのか
散々「組合組合」言っているのでお分かりだと思いますが、大体は企業何社かで組合を作って、そこが手続きを行って入国してもらいます。企業単独で手続きをして受け入れることも可能ですが、やっぱそこに割く人員がいない、余裕がないという理由から、企業単独でやるというケースは非常にまれです。受け入れを希望する企業にも要件があり、どこでも入れられるというわけではありません。前述の通り受け入れ可能な業種であること、会社の従業員数、売り上げ、労働環境などなど、結構細かな要件の審査のうえで受け入れが可能となります。そういったことを通常業務の合間に事務員にやらせていてはたまったものではありません。ですので組合が代行して書類作成から面接から入国まで全部やるわけです。
組合は当然日本国内の手続きがメインです。では現地はどうでしょう。現地には「送り出し機関」というものがあり、受け入れるためにはまずそことの契約が発生します。国によってはもうちょっと面倒な手続きをとるところもありますが割愛します。長くなるんでw そして色々な手続きを踏んで、海外の希望者は日本に来ることが可能となります。受け入れを決めてから大体ですが半年はかかると思ってください。「明日から来てくれ!」なんてのは当然ムリです、馬鹿言うんじゃねぇって感じです。旅行じゃねぇんだよw
■どういったところから希望者は集めるのか
これも国によって異なりますが、大体はやはりその国の貧しい地域ということになります。失礼な話、日本より発展が遅れている国、昔の言い方をすれば「発展途上国」です。今は日本が衰退国になっちゃいましたからね、なんだかなって感じですが。前述の通りお給料が少ない人たちが日本に来たがります。その国の大都市圏でも人は何とか集まるというケースもありますが、やはり郡部の人の方が多いと考えてください。こればっかりは実際に行ってみないとわかりませんが、私も人生で初めて行った海外がこの仕事で面接に行ったカンボジアです。見ると聞くとでは大違いでした。めっちゃ勉強になりました。テレビで見れるのって本当に一部なんだな、自分の世界が如何に狭かったかを恥じました。そういったところで暮らしているわけですから、やはり収入は非常に少ないです。今の日本の給料ですら魅力的なんです。なんか申し訳ない気もするのですが、そうしてでも集めないと今の日本は労働力を確保できないんですよね。情けない限りです。
■失踪はどうしておこるのか
これが一番の問題ですが、日本に来てからの失踪です。これは私も何件か遭遇したことはあります。ですが思っている以上に多くはありません。私が管理していたところで400人程度として、年間に失踪する人は2~3人いれば多いとお考え下さい。1%にも満たないです。理由としては「給料が安い」が最も多いとお考え下さい。仕事量と比べて稼げない、結局稼ぐことを目的としてきているので、それがかなわないと悪いとわかっていても失踪して稼げるところに行きます。当然ですが失踪が多くなれば組合の運営、企業の受け入れに支障が出ます。そうならないように努力しなくてはいけませんし企業もちゃんとした待遇で迎え入れなければいけません。酷いことをすれば最終的に自分に返ってきます。
■最後に
私はこの仕事に就いたことを本当に良かったと思っています。色々な国の状況や日本の状況、人との交流含め人生観が変わりました。散々書きましたがそれでも日本に希望を見出し自分の生活を良くしようとそれこそ人生を賭けて日本に来ているわけです。何百人と出会いましたがいつもありがたいと思う反面申し訳ないとも思います。彼ら彼女らの人生が少しでも良くなるようにと努力しました。言葉はあまり通じないですが、それでも楽しく話せて色々聞けて嬉しかったです。そんな私に感謝してくれて何度泣きそうになったことか。
VISAの手続きや制度にもかなり詳しくなりました。漠然と取れればいいなくらいで思っていた行政書士の資格も目的が明確になりました。今はまだ愛知県にいますが、いずれ地元に戻ってこの仕事をできればいいなと思っています。それこそ田舎が消えてしまう前に何とか維持出来ないかと、こういった視点から支えていこうと考えています。結局産業は人がいないと維持が出来ません。その真逆の政策を推し進める今の日本、未来があるとは到底思えません。ですがその最悪の未来が来るのを少しでも遅らせ、その間に回復の光が差し込むようにしなければいけません。自分の仕事はこれだなって確信しました。
非常に簡潔にかいつまんでのお話でしたが、この制度の一端と今の日本の状況を知っていただければと思い書きました。