日本がこれから外国人労働者を受け入れるのに必要なこと
以前特定技能、技能実習に関することを書かせていただきました。前回は現状に関する内容が多かったですが、今回は今後日本が受け入れるにあたって必要になるであろうことを、私個人の視点で書かせていただきます。
先日Yahooの記事でこんなものを見つけました。
非常に素晴らしいし正しい取り組みだと思います。こんな会社であればいくらでも頑張って海外に紹介したいと思いますね。
特定技能や技能実習の人たちの居住スペースのルールというのは当然あり、過去に問題になった「タコ部屋」のようなところでは当然現在は違法になります。一応前提条件として
技能実習生:4.5平米(3畳程度)
特定技能:7.5平米(4畳半程度)
を最低限個人スペースとして提供しなくてはいけません。地域差も会社による差もありますが、3LDKを借りて6畳の部屋3つを3人で使ったり、ワンルームの部屋を借りてあげたりと様々です。ですがやはり企業によってはルールで大丈夫ならと、限界ぎりぎりのサイズの部屋を提供しているケースもあります。これが例えば子供で兄弟と一緒というのであればまだ譲って納得できますが、来るのはいい大人の他人同士です。プライベートのスペースを確保するのは当然必要なんです。考えてみてください。もしあなたが他人と6畳一間で3年間一緒に暮らせと言われたら、許容しますか?
居住環境は海外からくる人たちにとって働く内容の次に重要と言っても過言ではありません(給与は別軸なので置いといて)日本に来て仕事に行くまでの間の研修期間、生徒たちから必ずと言っていいほど聞かれるのは「ぼくたちの部屋はどんな部屋ですか」です。当然ですよね、今から3年もしくは5年暮らす部屋ですから気になります。わかる範囲で教えてあげますが、やはり狭い部屋だと表情は暗くなります。ですので上記のように人ファーストで考えてくれる企業はこれから制度が変わっても確実に人は来てくれることでしょう。それくらい重要です。中小企業でどうしてもそういったところでも経費を削減したいという姿勢はすぐに伝わっちゃうんですよね。少し古めの物件であれば随分と空きも増え安く借りれるところも多くなりましたが、そのあたりケチってたらすぐに悪評は海外に伝わります。今のうちに手を打ったこの会社は大正解です。
住環境の話になってしまいましたが、これからの未来日本がこの制度で海外に人に「来てもらう」ためには様々な工夫と努力が必要です。記事の中にもありますがもう「来させてやる、日本の技術を教えてやる」という上から目線でこの制度は絶対に成立しません。
そもそも「技能実習制度」と言いながら、その言葉の技能実習を目的としてきている人は皆無です。100%に近い数字で「出稼ぎ」です。日本がこれだけ円安になって弱くなったとはいえ、来てくれる国はそれよりさらに弱い国なわけです。確かに技術的に持って帰れることも多いでしょうが、それはもうとっくの昔に方便です。私の見てきた中で唯一現地の同じ内容の会社から日本の同じ職種の会社に来たという人がいました。ただ、どの組合を見てもそんな人1人いればいい方だと思います。そんな状況ですから「育成就労」とか本邦お得意の名称ロンダリングしたところで来る人の目的は変わりません。出稼ぎなんだからもうそれを割り切って制度作れよと言いたいんですけど、国がバカだからしないでしょうね。その前に氷河期世代どうにか救えよと小一時間。
そうなってくると、やはり重要なのは日本にいる間のさまざまな環境が定着率向上に一番関わってきます。私が考えるには以下の点を充足した会社は残ることでしょう。
・採用にあたっての事前説明
・給与水準(昇給・ボーナスなど)含む労働環境
・住環境
・言語環境
この制度もすでに「売り手市場」であることは間違いありません。企業側が選べる立場ではなくもうすでに海外の人たちから選んでもらう状況です。「とりあえず日本に来させてやるから黙って働け」なんて思っている経営者は明日にでも会社ごと潰れてください。
まず日本に来るにあたって現地で面接をします。会社の社長が同行するケースもあれば組合に丸投げするケースもあります。ですがやはりここはちゃんと会社の社長が現地に赴き「うちはこんな会社でこういうことやってるんだよ」と説明をきっちりすべきです。組合の人間だけでは絶対に足りません。また可能であれば写真なり動画なりと、勤めることになる会社と仕事のイメージを現地にいる段階できっちり見せてあげるべきなんです。これをほとんどの企業はやりません。私が独立したら撮影から編集まで全部やってあげますけどね。イメージ齟齬は常に起こっています。数か月で帰国してしまう人はお金よりもこっちが原因です。金銭的な面は書面や契約書でほぼ固まりますが、仕事内容はやはりやってみてわかる部分です。どれだけ詳細にその人が触れる仕事内容を伝えられるかは日本に来てからの離職率を下げるためにめっちゃ重要です(もし今これ読んでる関係者いたら絶対やったほうがいいですよ)
お金と住環境に関しては前回含めある程度説明していますが、日本人と比べてもかなり緻密にしっかり考えている人が多いです。お金は現地に送金するので常々円相場も調べていますし、給与の計算間違いなどもしっかり突っ込んできます。日本人だってしますけどそれ以上にやります。現地の家族を養うため、家を建てる、目的は人それぞれですが、日本人のように給料から税金保険を引かれているのにあまり気にしていないということはありません。日本人の納税意識が希薄すぎるんですけどね。ですので日本人視点で「気にするなよ」って思っているところを無視した段階で、彼ら彼女らは離れていきます。特に転職がしやすくなる次期制度ですからあっという間ですよ。中小企業でたまにそういった部分が雑なところがありますが、そういう点の不満は管理している組合の方に先に伝わります。是正しないと色んな意味でアウトです。
そして最後に言語についてです。特定技能に関しては最低限の日本語水準あってやっと在留許可が下ります。しかしあの基準もザルなところが多く、点さえ取れてしまえばという感じで、いざ日本に来たら挨拶くらいしかできないなんて人はごまんといます。であれば「現地でしっかりやって来いよ」なんですが、それ自分が逆の立場になった時に言われてもいいですか? 母国語以外を学ぶということがどれほど大変化、日本の外国語教育を見ていればそれを理解できない人が山ほどいます。はっきり言います、「言葉に期待して受け入れるな」です。一番壁になる部分はどうしても言葉です。仕事を教えるにしても何にしても言葉が通じなければ何もできません。だからこそくる人たちも頑張って覚えようとしてくるのですが、それでも限界はあります。
私がこの仕事に就いて一番感じたことは「受け入れる側の言語対応が出来ていなさすぎ」です。通訳がいなければいけないというルールがありますが、絶対的に通訳が足りません。うちは中国人社長と従業員がいましたので、中国から来ている人との意思疎通はしっかりできていましたが、そのほかの国はやはり大変です。自動翻訳を使ってやり取りするのなんてざらで、資料を作るのもgoogle翻訳とか、間違いだらけですよ。そんなでは当然伝えたいことが正確に伝わりません。ですので我々日本人側もそちらの言語をある程度習得しないとダメだなと強く感じました。私も今一番円のあるインドネシア語を勉強しています。いつか検定取ってやると思ってます。ただ仕事として通訳をしたいというよりも、日本に来てくれた人たちと普通のコミュニケーションをとりたいという思いが強くなったからです。
まだまだこの制度に関する話をしたいところですが、また頭の中でまとまったら書こうと思います。自分も毎日勉強です。入管法覚えないとなーって。