あれはもしや?とおもう出来事。
疑っていいのかしら。
と、しばらく頭から離れない出来事があった。
やわらかい陽差しのなか、少しひんやりした風が頬をなでる。
ふわっと香りものってきた。
「すぅーっ」
つい口元が緩み、胸いっぱいに吸いこむ。
姿はみえないけれど、からだの中は金木製でいっぱい。
犬は気になる匂いを見つけたのか、
道のわきに生えた草を、ひたすらすんすん。
たまにはのんびり歩くのもいいか。
脇道にはいると、途端に車の音も聞こえなくなる。家々が並ぶその小径は、平日もあってすれ違う人もほとんどいない。
心もゆるんだせいか、ふだんの散歩道をあらためて眺めていた。
目の前は古いブロック塀で囲われた家だった。庭の木々がそよぐたび、陽の光がキラキラとさしてくる。目を細めながら覗きこむと、オレンジと白の絵具を混ぜあわせたような、淡い色の壁がみえた。こぢんまりとした洋館のよう。
古いのか新しいのかどっちなんだろう?
首を傾げていると犬が歩きだし、あわてて視線を道路にもどす。
すると、5mほど先に男の人が立っていた。
紺のワイシャツにジーンズ姿。私と同じお家をみてる。ブロック塀が途切れたあたり、おそらく門の前だろう。
(あ、お家のひとか)
のぞいたの見られたかしら?とバツが悪く、ササッと背後を通り越す。
角を曲がろうとしたそのとき。
「お宅に修理した方がよさそうなところがあるので伺いしましたー」
ん?無意識に耳がうしろ向きなる。犬よ、そこの匂いを嗅いでなさい。
からだの向きを少しずらし、視界の端に先ほどの男をいれる。
インターフォンに向かって話している。
インターフォン越しに聞こえる声はお爺さん。
「すみませんねぇ。いまウチのものいないんでねぃ」
人のよさそうな声。でも玄関を開ける様子はない。
大丈夫か。無意識に安堵しながら、散歩の続きという顔でその場を離れた。
その家の下見ということもある。
家族構成、いつでかけるか、誰が留守番か。
最近よく聞くニュースと重ねてしまう。
何事もなければ・・とその後も何となく歩いている。