「ライターの教科書」は必携の書になりそう
「嫌われる勇気」を書いたライターの古賀史健さんが、ライターの教科書(『取材・執筆・推敲』)をつくられました。古賀さんのnoteを読んで、本を書かれていることは前から知っていて、ずっと楽しみにしていました。今回、4月に書店に並ぶ前に、古賀さん自ら本の内容についてお話されるイベントが開催されたので参加してきました。
私がイベントに参加した理由、イベントのダイジェストをお伝えします。
私は何者か
私は、システム開発の会社で、社内の情報を社内外に発信する仕事をしています。発信は、主に会社が運営するブログなどの記事という形をとります。社内のエンジニアに記事を書いてもらうこともあれば、エンジニアから話を聞き取って代わりに原稿を書くこともあります。ずっと今の仕事をしていたわけではありません。もともと個人ブログや技術系の同人誌にちょっとした文章を書いていたことがきっかけで、一年半ほど前にエンジニアから職種転換しました。ただ実際には、私が書いた記事が公開されることは、まだほとんどありません。ずっと初心者マークがついたままで、原稿の完成度は低いし、原稿を書くのも遅い。どうやれば、一本の記事が出来上がるのか、日に日にわからなくなっています。パソコンの前で固まっている時間がとても長い。
ダラダラとブログ記事を書いていたときのほうが、もっと文章を書いていたでしょう。今も企画している記事が一本、きっと長くても4,5千字程度にしかならない記事を半月ほど放置しています。
そんな毎日を過ごす中、ライターの教科書が出ると聞いては読まないわけにはいきません。それも一日でも早く読みたい! 4月の発売を待っていられません!
そういうわけでイベントの参加を申し込みました。会場でイベントに参加できる人数は20名。参加は抽選でしたが、切なる願いが届き無事当選。当日、会場で参加できた方には、見本誌が配られましたので、これからすぐに読みます!
YouTube配信もありましたので、悩みを持つライターの方はご覧ください。
ライター講座ダイジェスト
古賀さんの話は、とにかく、目を開かれることばかりでした。
当日聞いた内容をダイジェストで紹介します。
ライターはコンテンツをつくる人
映画監督は映画を撮らない。撮るのはカメラマンが撮る。監督はあくまで「映画」をつくる人。写真家もただ撮っているだけではない。構図を決め、レンズを決め、画角を決め、シャッタースピードを決め、写真を「つくる」作業をしている。ライターもコンテンツをつくる。コンテンツとは「お客様をたのしませるためことを目的につくられたもの」である。
(気づき)ひどい話ではありますが、私が日々、記事をつくるとき、集めた材料をただ並べるだけの作業をしていることがあります。これでは誰が読んでもおもしろくなるわけがない。読み手のことを忘れるなんて、ライターと名乗って言い訳がありません!
「書く」から「つくる」へのステップアップ
「書く」から「つくる」には編集という作業が必要。
編集者が行う「編集」
「人」「テーマ」「スタイル」といったコンテンツのパッケージを編集する。
「人」:誰が語るか、誰ならコンテンツを形にしてくれるのか。
退任した元大統領の回顧録のように「人」だけでコンテンツが成立してしまう場合もあるが、単に有名人を連れてくるということではない。「テーマ」を語れる必要性と説得力を持った人を選ぶ。
「テーマ」:何を語るか。
「人」「テーマ」は近すぎるとおもしろくない。
例えば、禁煙を専門にしたカウンセラーという「人」を選んだ場合、単に禁煙をテーマにするのではおもしろくない。悪習慣を「やめる」ことをテーマにしたり、禁煙状態を「続ける」という点に着目して、良習慣を「続ける」ことをテーマにする。
(気づき)私は仕事として、エンジニアに記事を書いてもらうこともありますが、ただ得意なところを聞き取って書いてもらうことばかり考えていました。どうりで当たり前のことしか聞けないわけですね。
「スタイル」:どう語るか、どう読んでもらうのか。
図版を多く使う/数式を極力省く/マンガでわかる〜 etc
「人」「テーマ」「スタイル」の例
例えば、「バカの壁」は、当時すでに知の巨人として名高かった養老孟司さん(「人」)が、知性ではなくあえてバカ(「テーマ」)を語る。養老孟司さんが執筆したものではなく、口述で語りおろした(「スタイル」)結果、より読みやすくなっている。
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」。岩崎夏海さん(「人」)がドラッカーの入門書を書くだけだと発展性がない。女子高生がドラッカーの『マネジメント』(「テーマ」)を説明する青春小説(「スタイル」)になっている。
ライターが行う編集
「情報の希少性」「課題の鏡面性」「構造の頑強性」
「情報の希少性」:ここでしか読めないものが含まれているかどうか。
取材の相手がどこでどんな発言をしているのか?
本当に希少な発言かどうか、周りの情報を調べておく必要がある。
経営書だと、他の経営者も類似の発言しているかどうか知っていなければいけない。
(気づき)私は、取材対象者だけから聞き取って、関連する記事の調査がほとんどできていませんでした。書こうと思っているテーマの類似記事をもっと調べておく必要がありました。
「課題の鏡面性」:読者にとって自分ごとになりえているかどうか。
専門家が専門用語だけで語っているのはNG。
(気づき)私の最大の弱点は、わかったふりをして、話を聞いてしまうことです。見ず知らずの読者を頭の中に置いて、その話がおもしろいかどうか、何が理解できないのかしっかり聞き取る必要を感じました。
「構造の頑強性」:論理的であるかどうか?
5千字、1万字、本なら10万字くらいになると、論理的に構造化しないと読まれない。
(感想)長い文章を書いていない私にとって、まだ未知の部分が大きい話です。この本を読んで備えておきます。
ライターとは?
ライターは学者の知識も、大統領のような経験もない。空っぽの存在。だから、取材をして、空っぽを満たそうとする。
空っぽのライターは何を書くのか?
取材したことをそのまま書くのか? 違う!
取材した人、作品や資料を集めてくれた人など向けて、「私はこう理解した」「こういう部分に心を動かされた」といった「返事」を書く。取材相手に対する敬意が深いほど、原稿は丁寧になる。取材相手を軽んじているほど記事は雑になる。
(感想)ここは耳が痛いとしかいいようがないです。雑に書いているのは、関係してくれた人への敬意が足りないというのは、その通りです。書きたいと思って書き始めるものばかりではないからですが、それでも情報発信への協力いただいた方への感謝はあります。相手への感謝と敬意を持って取り組みます。
取材したものをどうやって原稿にするのか?【会場からの質問】
取材:下調べ(前取材)、インタビュー・作品に触れる(本取材)、わからなかったことを調べる(後取材)
後取材の段階で、いろんな本を読んだり、テープを聞き直したり、ようやくこの人の言ってることがわかった! という瞬間がくる。
後取材でも、わからなかったことは書いちゃダメ、自分がわかったことしか書かない。理解した瞬間に、なんでこれまで理解できなかったことを考える。
1.自分がわかるまで考える
2.わかってないことは書かない
3.どういうふうに説明してもらえたら、理解が早かったのか考える。
読者の理解にとってどうすれば助けになるかを考えて、それを書く。
よりよい返事を書くためには?【会場からの質問】
ライターがなんで必要なのか?
専門家の先生が書けばいいのに、なぜライターが介在するのか?
それは、理解できない人の気持ちがわかるから。取材のときは、絶対に知ったかぶりをしてはいけない。このライター大丈夫? と言われるくらい初歩的なことも聞く。ライターの後ろには読者がいる。仮にその分野に詳しくても、取材相手とマニアックは話をしてはいけない。詳しくない読者が考えるような質問をしないといけない。
(感想)ライターの資質として、知ったかぶりをしないということがあれば、私には資質がないと言わざるを得ません。ただおもしろいことをシェアしたい精神は持ち合わせています。きちんと読者に届けるために、わかっていないことは書かない。わかるまでしっかり考えることは怠けないようにしないといけないと感じました。
参加してみて
すぐにでも仕事を見直す気づきが得られました!
なんと上記のダイジェストはすべて本の中のガイダンスとして、第一章が始まる前に書かれていることです! とにかくいただいた見本誌をすぐに読みたい! 気にしないといけないことが多いので、本を読んだ後も、手元に置いて、仕事で詰まるたびにパラパラとめくることにします。
4月刊行の本も、見本誌から内容もだいぶ変わっているそうです。すでに予約購入しました。記事を書くことを仕事にしている人にとって、役立たないわけがない本です。気になる方は、ぜひご購入ください。