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「詩情」とは何か。留めたい瞬間を言葉でパッケージすること。そして…

今日、お昼頃、こんな投稿を見かけた。

良い短歌って何だろう?
詩情って何?何でも無いことを美しい言い回しでそれっぽく見せるのが詩情なの?
おもしろ短歌はいけないの?悲しいことや寂しいことなんか世の中に溢れているのに短歌も寂しく無くちゃいけないの?
意味がわからない短歌は読み手のこちらが悪いの?

おたーびお(@Otavio20240331), 午後2:08 · 2024年11月13日

詩情とは何か?

私の「詩情」に対する回答は、

写真家がシャッターを切りたいと思うように、この瞬間を言葉で留めたい、が詩情だと思ってます。キレイな言葉じゃなくても、そこに合う言葉であれば。ただ、ありきたりな言葉だと、もっと他の言葉がありそう… と感じそうではある

のーどみたかひろ(@nohdomi), 午前9:10 · 2024年11月14日

でした。

それに対して、回答をいただいた。

この瞬間を写真におさめたい、わかる気がします。私も育児などの実景で歌を作る時はそんな感じです。必ずしも美しい言葉で無くても良いから相応しい言葉で詠む。腹にストンと落ちました。実景で詠む時は悩まなくて済みそうです。ありがとうございます

おたーびお(@Otavio20240331), 午前9:17 · 2024年11月14日

もともとお知り合いでもないので、これ以上の回答をつけなかったが、「実景については悩まなくて済みそう」というところがひっかかった。詩情が起きるのは、実際の風景を見た時だけじゃないだろう。私が、「写真」を持ち出したので、そうイメージされたのかもしれない。

内面世界を描く時にはネガティブな感情が多い気はするが、憎しみや喪失の悲しみについて、実景にはない心象風景が詠まれることは多いんじゃないだろうか。同様に、春の喜び、誕生の喜び、子どもかわいい、動物かわいい、なんてのも、感情の動きを残したい、と思う時、実際に目にしたものではなく、そのウキウキを表現する際に、見たものをそのまま詠むとは限らない。

心が動いた時、それを言葉にして留めたい時、起きるものが「詩情」なんだと思う。

ちょうどいい程度の分量だったので、Wikipediaに書かれていた大辞泉の説明という箇所を取ってくると、こう書いてあった。

1. 詩にみられるような趣。詩的な情景。「―あふれる夏の高原」
2. 詩に表現されている気分。詩のおもしろみ。「―を解する」
3. 詩を作りたくなるような気持ち。「―をそそる」

私が思っていた「詩情」は、「詩情」の一部かもしれないし、私の考える「詩情」から発展したすべてとも言えるかもしれない。「(私の考えた)詩情」が起きやすい景色があり、表現された言葉から、詠み手の感情が類推しやすいこともあるだろう。

良い詩(短歌)とは?

もう一つ、最初の投稿には、疑問が呈されている。どういうものが「良い短歌」なのか? という問いだ。

毎日、何からの詩(現代詩、漢詩、短歌、俳句、英語の詩)を音読している私から見ると、「詩」には一つ外せない大事な要素がある。どんな詩も、やっぱり音、奥行きを感じる響きがある。

翻訳されたものであっても、原詩の音を意識しているし、漢字、ひらがな、改行、空白、空行を使った形のおもしろさを追求した詩であっても、頭韻や脚韻を踏んでいたり、同音異義語など、音による連想を詩の中に含ませているものが多い。言葉の性質上、音は無視することはできない。音という要素から離れたいという欲求を詩人から感じることもあるし、純粋に言葉の意味に執着したいという欲求を認めつつ、どうせ逃れられないのなら、言葉で遊んでやろうという意思も見え隠れすることがある。

短歌も、「歌」という字にあるように「音」からは離れられないだろう。

ありきたりな言葉であっても、その状況にフィットする言葉を選ぶのはもちろんのこと、それがより、音としておもしろいという要素が、詩には必要だと思うし、おもしろい響きがあったほうが「良い」詩に近づくヒントではないだろうか。

推敲する時、他人の目を意識する。言葉の意味が伝わるような言葉を選んだつもりだったけど、さらに、こっちの言葉のほうが響きがいいよね。音がおもしろいよね、という時、自分だけの言葉への執着を離れて、他人の目による良い詩、良い短歌になる… ことがあるかもしれない。

日々、短歌を詠む時、そんなことは考えていないので、そうかもしれない、というだけ… だけれど。

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のーどみたかひろ
いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。