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「シャープさん」と考える広告の未来:八百屋の軒先から始めるご挨拶

「ほぼ日の學校」アドベントカレンダーです。
(今回、引用多めですいません)

今回視聴した授業

SNSでバズりたいと思っていたこともありました。でも、今は、バズることの良し悪しもなんとなく理解しているので、ただバズればいいとは思えません。そうはいっても、マーケティングの仕事をしているので、特定のお客様だけでなく、どうやって広く周知するかを考えることもあり、企業アカウントとして成功しているシャープさんのことは気になっていました。

「成功」はしなくていい。シャープさんの人と人との広告論。
山本隆博 (シャープ公式X(旧Twitter)運営者)

フォロワー83万を超える、シャープ公式X(旧Twitter)運営者の山本隆博さん。入社当初はテレビCMなどマスメディア広告を担当していました。その後は、企業公式の型にはまらない"シャープさん"としてSNSで直接のコミュニケーションを続けています。上司に怒られながら、社内で友だちを減らしながら、「つぶやき続けて考えたこと」、「人間らしい広報・広告論」をほぼ日のおくのとたまきがお伺いしました。

授業で学んだこと

もともとは、テレビコマーシャルなどマス広告を担当されていた山本さん。クリエイターの方が持ってきたすばらしいコピーが、社内でハンコをもらうたびに弱くなっていっていくのを見て疑問を感じていたそうです。

でも変なんですよね
(略)
はんこ集めるうちに
ちょっと削って 削って
あるいは半分になってしまって
「おおこれ半分しかあらへんやん」
と思いながら
またこれをまあ
なんとか世の中に出すっていう

マス広告に疑問を感じ、消耗していた山本さんは、東日本大震災をきっかけに役立つことが証明されたSNSの担当者に手を挙げます。最初、国内社員の10%である3,000人くらいは、社員がフォローしてくれるだろうという目論見があったそうですが、3カ月やってもフォロワーは20くらいだったそう。

Twitterに臨むスタンス

会社のアカウントなので、当然、販売する商品の宣伝も必要となります。でも決して、主語を大きくしないことを心がけているそうです。

企業のプレスリリースとかも
ほとんど「何かをつくりました」とか
「何か発売します」とかいうのを
(略)
だいたい主語っていうのが
「わが社は」とか「うちの商品は」とか
「うちのテレビは」みたいなことですよね
(略)
でも僕がいるTwitterの方は
どっちかっていうと
自分のことを話す場所なんで
みんな主語が「私は」
書くか書かへんかは別として主語はほとんど一人称なんで
だから企業のプレスリリースを
全部「僕は」っていう主語に書き換えるという仮定で
全部自分の中でリライトをしたつもりでやってたのは
それならまあ ばれへんていうか
怒られへんやろなと思って(笑)

その他、主語を小さくすることに合わせて、中の人である一個人がやっていると思ってもらえるように、うますぎる写真は使わないなど工夫もしたそう。「僕が言う」「あいつが言ってる」だから、聞いてやろうという感覚を大事にされています。

買収なんかの大きなニュースがあった時、もちろん、広報は、間違ったことも言えないし、上場企業として、タイミングを見ずに言えないこともあります。そんな時でも、個人というスタンスは崩しません。

僕はどっちかっていうと商店街の八百屋の人
ぐらいの感覚なわけですよ
前を通りがかるフォロワーみたいな人と
「え どうなん?」みたいな
世間話しながら 野菜を売るぐらいの話なわけですよね
だけど後ろの母屋が
めっちゃ燃えてるわけですよね(笑)

燃えてることを燃えてないふりして
お前は野菜を売れって言われても
そんな振る舞いは できへんなと思ったんで
少なくとも燃えてるんであれば燃えてるってことは言わんと
話は始まらへんやろと思ってたわけですよね

でもそういう振る舞いをすることで、マスに届く数よりは、桁が一つ二つ低い程度にしか届かなくなります。

全国津々浦々なんていうのはたぶん不可能ですよね
いくらバズっても たぶんそれはありえない
やっぱりその機能として
もう「広く告げる」みたいなのが
たぶん桁が1回下がってるはずなんで
そこはちょっと「すごいですね」って言われても
「でも全員じゃないしな」って思いますよね

一部の人が反応してくれるように、世の中の縮小版でもあるSNSの振る舞いとしては、うっすら怒っている、常にイライラしているなど、世間の空気に同期するようなことを意識されているそうです。

既存メディア広告の逆に張る

既存のマスメディアへの広告をやっていた時に感じた違和感をSNSでとても意識されています。やってたテレビコマーシャルを、久しぶりに会った親戚が見てなかったりする時代がきて、よりそういうことを意識的にやられています。

お金を使って札束で
こうやってバーンって叩いて
こっちを見させて
広告を読ませるっていうのが
広告のやり方ですね
それはたぶんインターネットだろうが
そうじゃなくても たぶんもともと
広告ってそうだと思うんですけど
それがみんなちょっと嫌やなと
思ってるわけじゃないですか(笑)

スマホでも親指に触るような
バナーが出てきて
「ああっ」ってなったりとかして
だからその広告が「広告である」
という佇まいであった瞬間に
たぶん嫌われるやろうなっていうのは結構強烈に思ってて
だからまず佇まいが広告じゃないようにしないと
入り口にも立てへんのちゃうかなと思ってたわけです

広く届ける広告とは違うから、出す内容も変わってきます。

(これまでの広告は)
たぶん見てる人からとったら
ちょっと目線が上っていうか
ここら辺のものをつくって
視聴者の人に いいなと思わせなさいっていう
憧れるような
そうなるとやっぱりだんだん
インターネットで広告やんなきゃ
いかんみたいなことがあって

でもネットで話題になってる いわゆる広告とか
どっちかっていうと
笑われるっていうか 笑かせられるっていうか
見てる人も「アホなことやってんな」
みたいな感じのことが多いなと思ったから
僕がSNSやろうっていうときに
じゃあちょうど真ん中ぐらいというか
別に憧れもせず ちょっと
小バカに笑かすわけでもなく
ほとんど一緒ぐらいの目線で
ずっと何かをやり続けよう
と思ったのがあるんで
「平熱」っていうことは
結構早い段階からやってますね

届け方も違います。

僕は商店街の八百屋をやってるつもりなんですよ
お客さん来ますよね
フォロワーの人が来ますよね
来たらすぐ「キャベツ!」ってやらないですよね
「今日暑いですね」とかどうしたみたいな話から
「何がいりますか?」
「今日何探してるんですか?」
って聞いたら
「今日はこれがいいですよ」っていう
たぶんそれが商売の作法やと思ってるんですよ
僕はどっちかっていうと
そういうふうに思うタイプなんですけど

それがデジタルの広告になると
前をお客さんが通りかかったら
すぐコンバージョンしろっつって
白菜を投げて売りつける
それを何回効率よくできるかが
広告やろうっていう話だけど
それは僕から見たら狂ってますよね

SNSのこわいとところ

本当の炎上の時とかは数千件くるわけですよね
「お前の家燃やすぞ」とか「殺すぞ」とか「死ね」とかいっぱい
あれをやっぱり日中浴びてたら夕方に吐きましたね
だから吐きながら そういう言葉を浴びると体に変調をきたすんやな
と思いながら ゲー吐きましたけど
個人でやってる人とかは本当に僕は死ぬと思います

僕は仕事でやってたから平気だけど
平気ってわけでもないけど まあ

山本さんは、仕事として、会社のラベルをつけてやられていて、こんなにダメージを負うのであれば、やはり、個人でバズるのも考えものですね。しっかり考えて、防御策まで考えないと危ない。

ましてや僕は会社のアカウントなんで
人格に対して投げてる感覚って
たぶんほとんどないと思うんですよ
看板に投げてるような感じなんで
その中でも明日発売する
冷蔵庫とかあるから
しゃべり続けなあかんわけですけど

その時にゴンって石投げられながら
「ところで」っていうのも
変な話じゃないですか

だからとにかくこれは僕がやってる
社員がやってるアカウントですけど
いただいているリプライは
全部読んでますよ
受信はしてますよっていう
表明だけはずっとしてたんです

そう、直接関係ない方は、看板に石を投げている感覚だと思います。でも、その投げた石は、中の人にちゃんと当たるわけです。こわい手段ですよね、SNSって。

山本さんがやってきたこと

最初は、コールセンターのように不具合などのクレームばかりが押し寄せると思ったら、実際にはそうじゃなかった。「新しい商品、買いました!」などの感想が届いたそうです。これまでシャープは皆さんが手に取る様々な家電を作っていたわけですが、売るのは販売店で、直接、お礼を言われることもなかった。感想が届くことは、新鮮で、嬉しい体験だったそう。

ほとんどの人は「よからぬことが起こったらどうすんねん」
っていうところで怒ってるんですよ
誰が責任取るんだと

(略)
何が起こるか起こらへんか
まあいったら やる前に
「こんなよからぬことが起こるんちゃうんか」
っていってめっちゃ怒られるんですよ

でもそれは僕は証明不可能ですよね
だってやってないから(笑)

やってない前に怒られても反論のしようもないし
対処のしようがないんで

結局僕ができることっていうのは
やって「そうならなかったよ」っていうことを証明するしか
ないわけやなと思ったんです もう

(略)
でも僕がやっていたのは
「そんなことは起こらなかったよ」
の繰り返しをやっていったんです

(略)
「あなたが危惧したことは起こらなかった」っていうことを
証明してる感じです
「こんなに読まれました」とか
「こんなにバズりました」とかじゃ
全然ないです
それはほんまにそうじゃない

企業は、成果や売上、収益を求めます。だからそのために効果があることをやっていきますが、マイナスの効果を嫌います。結果が見通せないことで、やらずに済むことならならないし、代替できる無害の施策があれば、そちらを採用します。だから、会社がやることは、おもしろくないとも言えます。山本さんがおっしゃる通り、「やめろ」と大から言われなかった運のよさもあると思いますが、やっても何も起こらないことの証明をしてくれる人も、組織の中にいてほしいな、と思いました。

感想

SNSの運用を通じて、商売や広告、マーケティングの本質を見極められていて、おもしろい話でした。企業が、やらない理由が多いことを始めて、それを企業としての姿勢ではないやり方で続けて、やってても問題起きないよ、を証明し続けて信用を得る、というケースはかなりレアだと思います。似たようなことをしようとして、失敗している企業も多いでしょう。でも、こういう活動にこそ、社員がおもしろがって仕事ができる要素があるような気がします。今後とも シャープさん( @SHARP_JP )の振る舞いを商店街で眺めていこうと思います。

山本さんに興味が出て買っちゃいました。八百屋の軒先以外でも、山本さんの振る舞いを観察したいと思います。


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のーどみたかひろ
いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。