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かわいさも大きさも音で決まる? プリキュアとポケモンの言語学

「ほぼ日の學校」アドベントカレンダーです。

今回視聴した授業

普段、文章を書くことが多いので、言葉には興味があります。普段は、言葉の起源まで遡らなくてもいいのですが、それでも、人が心地よく受け取れる言葉、言語自体の特徴など、知っておいたほうが役に立つだろう、とは常々思っています。「ポケモン」から起源を探れるなんて、おもしろそうな授業を見つけました。

言語の起源にちょこっと近づく プリキュア、ポケモン、メイドさんの名前の話。
川原繁人 (言語学者・音声学者)

仮に「ミィ」というポケモンと「ガルルドン」というポケモンがいたとして、「体が大きいのはどっち?」と聞かれると、なんとなく「ガルルドン」の方が大きい感じがしませんか?この「なんとなく」が「おそらく、なんとなくじゃない」ということを教えてくれるのが、言語学者の川原繁人さんです。しかもテーマは、プリキュアやポケモン、メイドさんの名前ですって。なんともたのしい言語学の授業が、はじまります!

授業で学んだこと

「言語において意味と音につながりがあるのか?」という問いが最初に提示されます。

言語学における二つの主張

近代言語学の基礎を作ったとされるソシュールは、音と意味のつながりはない。ばらばら、ランダムだと言う。各国、同じ呼び名になるじゃないか。「りんご」と「apple」は違うじゃないか。それが証左だ、と言う。

一方、もう一つは、プラトンの主張。プラトンの『クラテュロス』という対話篇の中で、「名前は社会的慣習で決まっている」という人と「音そのものに意味があってそれによって名前が決まっている」という2人が議論する。

音そのものに意味がありそう
というふうに言ってて
議論のし方も面白いんです

彼は機織りの例を持ってきて
機を織る機械というのは
機を織るためにつくる
それに適した形をしている

言葉というのは物を指す道具だから
物を指し示すのに適した形を
してるんじゃないの?
みたいな議論が進んでいきます

今回は、音そのものにも意味があるという「音象徴(おんしょうちょう)」の話。

両唇音(口を閉じる)が多い『プリキュア』

『フレッシュプリキュア!』は全員、両唇音。ピーチ、ベリー、パイン、パッション。他のシリーズも両唇音が多い。両唇が丸まる音も目立つ。例えば、キュアフローラなど、「フ」のプリキュア。なぜかハ行で「フ」のときだけ両唇が丸まる。

両唇音ってかわいいんですよ
赤ちゃんが最初に
身につける音なんですよね

赤ちゃんって飲むのが仕事なんです
そうじゃないと死んじゃうから
だから唇の筋肉が発達してるので
言葉を身につける上で
両唇を使った音から出てくるんです
両唇を使った音はかわいい
プリキュアはかわいい

濁点で大きさを表す『ポケモン』

「進化する前は濁音ついてないのに進化すると濁音が出てくる」
「進化前は1個しかなかったのに2個以上になる」
みたいな例がいっぱいあるんです

簡単に言うと
進化すると濁音が増えるし
名前もちょっと長くなるという
感じがするんです
ちゃんと統計を取って調べてみよう
ってことになりました

名前に含まれる濁音の数と
こっちは高さ こっちは重さ
(略)
比べてみるとやっぱり
右肩上がりの“傾向”が見られます
濁音が増えると
進化する 大きくなる 重くなる
という傾向が見つかりました


長さも同じで
(略)
ひらがな何個で書くか
ぐらいに思ってください
これも右肩上がりで
上がっていきます
高さと重さも
右肩上がりで上がっていく


どうやらポケモンを見ても
濁音が増えると大きくなる
名前が長くなると大きくなる
みたいなつながりがある

濁点は、声帯を振動させる必要がある。声帯を振動させるためには空気を取り入れないといけない。でも、濁点の音を出すには口を閉じる必要がある。閉じた空間に空気を閉じ込めるから、口が膨らむ。口が広がることが、大きさのイメージにつながるという仮説です。濁点のある音が大きさを持つイメージは、日本語だけじゃなく、英語話者はもちろん、他の国でも見られる特徴だそう。

音の持つイメージは確かにある

共鳴音、阻害音によるイメージの違いなどについて、触れられています。授業では、メイドさんの名前の例がありました。最初は、女性なんで、丸みのある音の名前が多いだろうと思うとどうもそうじゃない。メイドさんには、ツンデレという要素があります。名前で分類すると、どっちがデレタイプで、どっちがツンタイプか、で、傾向が分かれそうという話。

ソクラテスが面白い考察を
もう残してるんですね


例えば「ρ(ロー)」というのは
ギリシャ語では
「(*巻き舌でルルルル)」
という[r]だったんですよね
よく動くから運動関連に使われる
みたいなことを考察してたりします


母音が面白くて
[a]と[i]
どっちが大きいですか
というと
大抵 [a]のほうが大きいと
感じるんですよね
「マル」というテーブル
「ミル」というテーブル
どっちが大きいですかっていうと
「マル」のほうが大きいと
判断するんです

音だけで、決まるわけではないですが、確かに、サービス名などを命名する時、どっちがイメージに近いか、は声に出して確認してみようと思います。

名前などで分析する際も、お名前をつけた方は、音以外にもいろんな思いを込めてつけられたものなので、あくまでそういう傾向があります、程度に留めてくださいね、という川原先生の注意も覚えておこうと思いました。

感想

ポケモンの話は、以前、バズった時に、少し記事を読んだ記憶はあったのですが、大きさだけじゃなく、かわいいと感じる要素が、キャラのイメージではなく、音にあったということを知れてよかった。サービス名なんかは、意味だけで、考えちゃダメですね。研究対象も身近で、ずっと興味深く聞いてられました。おもしろい授業をありがとうございました。

※参考

ポケモンネーミングにおける母音と有声阻害音䛾効果

音象徴からはじめる音声学

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のーどみたかひろ
いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。