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夢枕獏さんの物語の作り方。流行に縛られず新しい設定を見つける

「ほぼ日の學校」アドベントカレンダーです。

今回視聴した授業

私には、自分の感動や社会の仕組みのおもしろさについて、記事などを書いて伝えたいという欲求があります。その欲求の一部は、サービスの事例紹介などという形で、仕事の中でやらせてもらっています。でも、もっと感情をこめて、ある事象がおもしろいと伝えたい時、物語を書くという手段がほしいと思うことがあります。時々、物語を書くという取り組みもしていますが、まだ他人からおもしろいという評価を得たことはありません。物語を、それもおもしろい物語を書き続けられる人をとても尊敬しています。

『陰陽師』シリーズの著者が語る 38年間愛されつづける 物語のつくり方
夢枕獏 (作家)

1977年に作家デビューして以来、数多くの人気小説を世に出してきた夢枕獏さん。がんの闘病を経て、作家活動を再開。平安時代を舞台に陰陽師・安倍晴明が活躍する『陰陽師』の連載も40年近く続けており、シリーズ発行部数は700万部を超えました。2024年4月には同作を原案にした映画『陰陽師0(ゼロ)』が公開。2024年は大河ドラマ『光る君へ』(NHK)にも安倍晴明が登場し、「令和の呪術ブーム」にも影響を与えています。晴明を歴史上の人気スターに推し上げた獏さんにその魅力と物語の作り方を語っていただきました。

物語を作るきっかけ、物語になる生活上の要素について、伺うことができた授業です。

授業で学んだこと

『陰陽師』の安倍晴明のキャラ設定

昔から、説話や講談になって、取り扱われていた安倍晴明。現代では、澁澤龍彦さんがエッセイで、荒俣宏さんなども書いています。

僕がやったのは
安倍晴明を若くして
それまではおじいちゃんだったり
講談では子どもだったりしたのを
40歳前後の美形で
背も高くて美しい
ちょっと皮肉っぽいところがある
人物像にしたことと
同時代人の源博雅と
バディにしたことなんですね
その他のことは
あんまり特殊なことはやってない
ような気がするんですよね

この辺は、過去の人がやっていない晴明を探して、設定した、という感じ。
最初は、『今昔物語』に晴明を見つけて、おもしろいと思ったそう。そこから実際に晴明について書くまでに10年、間が空いたそうです。

伝奇バイオレンスとエロスで
売れてしまったために
これはヤバいぞと思って
来る注文がね
そういう注文なんだよね
それで危機感を持って
こういう注文しか来なくなったら
嫌だなと思って
今こそ安倍晴明の引き出しを
開けなきゃと思って
安倍晴明を書くことにしたんですよ


それまでの安倍晴明像は子どもか
おじいちゃんだったんですよ
これはやめよう思ったんですよ
少女漫画結構読んでたので
少女漫画に出てくるような
美麗の青年にしようと思って
いろいろ調べて40代前後で
相方の源博雅というのを見つけて
2人をバディにしたというのは
戦略としてはあったと思いますね

その後、『陰陽師』がどう育ったか。これは、この型でいけんじゃない? という型が見つかったことで、シリーズが続いたようです。

2話目か3話目から
これはシャーロック・ホームズだな
ということに気がついて
あ、シャーロック・ホームズに
していいんだというのが
分かったんです
シャーロック・ホームズの話の
ほとんどはワトソンが語り手で
ホームズが晴明ですよ


途中からはこれを意識して
もうフーテンの寅さんでいい
という覚悟を決めて
毎回 柴又に寅ちゃんが帰ってきて
おいちゃんとおばちゃんと
ケンカをして また出て行って
また恋をして また帰ってきて
っていうあのパターン
いいんじゃないの?
これ怒んないだろう
何度繰り返してもっていうんで
僕はわざとやってます


困った時はモリアーティ教授役の
蘆屋道満に出てきてもらって
蘆屋道満のほうが自由なんですよね
晴明だと都の外に
ほとんど行ってないんですよ

ご自身が病気をされた時、奥さんとの経験を晴明と博雅に重ねて書いたそう。狙ったわけではなく、それがBL要素となって、読者を刺激したことそうです。

物語を書き続けることについて

流行は考えないでいい。

流行りを追わない
好きなことだけをやる
流行りとか 
これは売れるだろうというのは
足がはやいので追いつかない


それ狙って売れれば
こんな楽なことはないよね
どっちにしろ賭けだから
好きなことをやった方が
楽しいし いいと思う

そして、もうとにかく「考える」=「書く」ということですね。1行書く、次の1行を書く、そして3行書けば、10行目のことが浮かんでいる、そうです。

もう一個は
死ぬほど考える
これ以外にはないです
必死に考えて
もうこれでいいかと思っても
その先がまだ必ずあるので
さらに考える
もうダメかと思ったら
さらに考える
これで同じことを
10日できれば
アイディアは必ず出ます
やる気スイッチを探しちゃ
ダメです
やる気スイッチはないです

感想

あれだけ売れている作家が、売れることは狙ってできないというのだから、きっとそうなんでしょう。でも、書くことを続けるならば、著名な画家のように死後に売れるんじゃなく、食べていけるだけの収入は得たいとは思いますけど、そこに至る方法は不明ですね。とにかく、「書く」=「考える」の先におもしろいと思ってもらえる小説はあるようなので、毎日「書く」ための時間は、ちゃんと確保しないといけないな、と思います。現在の仕事や家庭に迷惑をかけない程度に。

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のーどみたかひろ
いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。