「海の見える理髪店」
一冊の本が人生を変えることがある 「海の見える理髪店」
私たちは理髪店で髪を切る時間ってどのくらいなのだろうか。
この本を読んで、その時間が人生で一番濃い時間にも思えた。
ある海岸沿いの理髪店。
庭にはブランコがある。
目の前には大きな鏡。そこに映るのはお客さんの姿。
その背景には真っ青な海が映る。
今までの人生、いつも自分の姿は鏡の中。
そんな店主がお客さんに自分の人生を淡々と語る。
お互い言葉を交わさないが、父が子の髪を切っていたのだ。
人を殺めた父は、我が子と知りながらも父親とは名乗れない。
頭の傷は、幼い頃、ブランコから落ちて怪我をした時のもの。
誰にも分からぬように、人気が少ない場所に引っ越しをしたが、その時のブランコは捨てられず持ってきた。
お互いに親子であると分かっているのに言葉に出せない。
結婚式の前に偶然を装い父親に会いに来た。
結婚式に父を招待したい。
でも、「来てください」と伝えられない。
さりげなく、息子に父親としての人生をすべて伝える。
息子は「古いアルバムを閉じるようにドアに手をかける」
その姿は、二度と会うことがないと決心したようだ。
それを感じ、父親は息子の顔をもう一度見る。
それも「前髪の整え具合が気になる」という理由で。
我が子のことを思い、父親と名乗ってはいけない。
でも、お互いに親であり、子であることを心の奥で感じあう。
髪を切る時間が、こんなにも親子愛を深めていく。
いじらしさが涙を誘う。
*歳を重ねたからだろうか。年々、涙もろくなってきた。
*幼い頃、床屋に行くと四角いチューイングガムをもらったことをもらった思い出がある。懐かしいなぁ。
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