「はぐれ刑事三世」に言いたいこと
正直言ってかなり困惑した。
放送後、Twitterに上がっている感想を読みながら
「この作品の良さがわからない私がおかしいんじゃないのか」
「自分の感覚が今風のドラマについていけなくなってるのではないか」
「私は原田泰造の魅力をわかっていない愚かなファンではないのか」
などと考えてしまい、結構落ち込んだ。
この感想文も書いては消し書いては消し、素人のくせにえらそうなこと書いてる自分に嫌気がさし、もう書くのをやめようかとも思った。
が、それはそれで腹の虫がおさまらない。
いろいろと失礼を承知で、やっぱり書かせていただきます。
純粋に「はぐれ刑事三世」を楽しんだという方はどうか読まないでくだい。
この先文句しか書いてないです。
「はぐれ刑事純情派」とは全くの別物である
「はぐれ刑事」の冠を付けてはいるものの、主人公は安浦刑事ではなく、浦安刑事。
やっさんとは何の接点もないし、極度の方向音痴ですぐ道に迷うという意味の「はぐれ刑事」だし、純情派に出ていた人々は誰も登場しない。
「三世」に関しては、ドラマの中では「三代目だから」と言っていたがじゃあ二世は誰なんですかと思いきや、なんと藤田まこと版の前に平幹二朗版が存在していたことが判明。
それなら確かに三世で間違いないけども、平幹二朗版は日テレなので初代扱いしていいものかは謎である。
ああもう、沖雅也…
とにかく「はぐれ刑事三世」は「はぐれ刑事純情派」とは何の関係もない、全く別物のドラマなのです。
ドラマ同士を比べる必要もなければ、藤田まことと原田泰造を比べてイメージがなんちゃらかんちゃらと言う必要だってない。
とはいえ同じ冠を被らせてもらっている以上、全く関係ないというわけにはいかない。
それは元のはぐれ刑事にも、そのファンの人たちにも失礼になる。
「浦安刑事」というキャラクターの難しさ
ショックのあまりイマイチ話を思い出せないので(これ以上見返す元気もない)あらすじはコチラでご確認を↓
泰造さん演じる浦安刑事は「人の話をすぐ信じる」「すぐ騙される」「すぐ迷子になる」の昼行燈三拍子キャラでありながら、子どもの頃に両親が騙された挙げ句に自殺してしまうという、のほほんとした現在の姿からは想像し難い、かなりヘビーな過去を持つ男。
昼行燈キャラを自ら逆手に取って捜査を進めていく敏腕刑事である。
刑事やってる原田泰造はこれまでに何度も観てきたけど(もう何度目なんですか…)シリアスで硬派なものが多かったんですよね。
今回みたいなタイプはちょっと珍しい。
しかも内面には暗い過去を抱えているという、落差の激しい二面性。
一歩間違えばサイコパスになりかねないキャラクターである。
むしろサイコパスとして突っ走ってもくれても良かったかもしれないが、これははぐれ刑事純情派の後釜、人情刑事ドラマなのだから当然そういうわけにはいきません。
演出次第ではあるものの、ここらの匙加減は演じる側としては相当難しかったのではないかと思う。
しかしね、泰造さんはこういう二面性を持ったタイプの役柄は結構お得意なのです。表向きのキャラは崩さず、内に秘めた闇をいい〜加減に滲ませるお芝居が上手いんだよなぁ。
浦安という役を原田泰造に振ったのは、何の間違いもないはずだったのに。
その「演出次第」で、壊滅的なダメージを受けるハメになってしまった。
率直に言ってコメディとしておもしろくない
冒頭のヘタクソみたいなコントのノリですでに嫌な予感。
まさかこの状態で続いていくのか?
いや、まさかね…と思ったら、まさかのそのまさかだった。
かけ合いのテンポが悪く、ぎこちなさが目立つ。それでいて台詞量は膨大だから余計に悪い。
誰かが長台詞を喋り始めると途端に棒になってしまうその光景はほとんど学芸会のようだった。
テンポが命のコメディで、これはもう致命的である。おもしろいわけがない。
そこへやたらと流れるコメディチックな音楽は画面と釣り合いが取れずに浮いてしまっている。せっかく音楽自体は良いものなのに…
前半は特に酷かった。途中でチャンネルを変えた人は多かったんじゃないかと思う。
後半、紺野まひるの元カレが捕まったあたりからどうにか見れるようにはなってきたものの、そこでグッとシリアスに振り切ることもできないのだ。
笑えない上にメリハリのない展開が2時間延々続き、しかし贔屓が出ているために途中で観るのをやめることもできない。
まるで拷問のようなひとときだった。
一番の失敗は主役の扱い
さて、これで一番困るのは誰でしょう?
そうです、この状況でめちゃくちゃ難しい役を振られた主役です。
コメディとシリアスのどちらにも振り切れない脚本と演出。
当然、演じる方だってどちらにも振り切ることができない。
極めつけは終盤、談春班長が浦安の人物像をなんと全て台詞で説明してしまい(笑)その説明とここまでの浦安の姿がさっぱり一致してこない。これには驚いた。
復讐?えっ!?とてもそういう感じには見えませんでしたけど…
結局さ、浦安の陰の部分を表すようなシーンがここまでひとつもなかったから、仕方がないから最後に台詞で説明しときましょう、っていうね。
観てるこっちはそういう風にしか捉えられないよ。
浦安に大きなバックボーンを持たせるなら、もっとそこにスポットを当てなきゃダメだだったと思うんですよ。
演者はそれを踏まえて昼行燈モードの時もお芝居してるわけでしょう。
当然ですけど、やっぱり上手いんですよ泰造さん。
ニコニコしながら人を見透かすような目をしてみせたり、騙されてるような顔してほんとはそうじゃないんだみたいな目で人の話を聞いてる時とか…上手いよなぁ。
泰造さんの目のお芝居が大好きなんだ、私は。
だけどそこを活かすシーンがなきゃ、何の意味もないじゃない。最後に台詞だけで説明されたって困る。
上手さが図らずも裏目に出たわけです。
結局ただただ笑顔が胡散臭くて何考えてるのかわかんないだけの不気味な人になってしまったという、これがもう悔しくて悔しくて……
色々文句言ってきたけど、このドラマの一番の失敗はこれだと思う。
いかにもな役を振っておいて役者の持ち味を潰すという、最悪のパターン。
これでヘタクソだなんだと叩かれてしまうのは、泰造オタクとしてはたまったもんじゃない。
「はぐれ刑事三世」は連ドラとしてなら有り
単発2時間ドラマというより連ドラの初回のような雰囲気があって、おそらくそれ前提で作ってるんだろうなという感じがした。
回を重ねれば、浦安のバックボーンや、内田理央が演じた相棒の、父親との関係がもっと活用できるだろうし、そこからもっと深いエピソードも作れるでしょう。
連続モノならきっと良い作品になると思うのです。
逆に、そのつもりがないのならよくこの企画が通りましたねと言いたい。
最後になりますが、ここまで読んでくださった方がいらっしゃるかどうかわかりませんが、好き勝手偉そうなことばかり書いてしまい申し訳ありません。
それだけこのドラマにすごく期待をしていたので…
どうかお許しください。
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