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誰も守ってくれない。

中山七里の「夜がどれほど暗くても」を読んでいる途中、そういや昔こんなような映画があったなぁと思い出しました。

と、いうことで久々に鑑賞しましたので記録に残しておきます。

君塚良一監督の「誰も守ってくれない」
2008年の作品です。

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テーマは「加害者の保護」

4人家族の長男が殺人事件を起こし、逮捕される。
その妹を志田未来が、その妹を保護する刑事を佐藤浩市が演じています。

とにかく導入部分が素晴らしい!
当たり前の日常がガラガラと壊れていくことを暗示させ、音楽も相まってグッと画面に引き込まれる。

家族がバッシングに晒されないよう、やれ離婚して名字変えるだのやれ別の場所へ連れて行くだの、観ているだけのこちらも頭が付いていかないようなスピードで事務手続きが進められていく。
両親は混乱したまま、言われるがままにそうしている。息子が人を殺して逮捕された直後にコレです。ショックを受けて落ち込んでいる時間もない。

ここまでの展開には驚くと当時に、実際もおそらくこういうものなんだろうなという生々しさもあって心が苦しくなった。

いい映画になりそうだな。
そう思ったのです……が、しかし!!

重いテーマなのにツッコミどころが多くて辛い

ここから先は過剰なデフォルメ演出で唖然とすること多々。

特にネットオタクの描写は衝撃です。
服装といい言動といい、偏見が過ぎる。
そんでもってオタク全員行動力がやたらと高い。あんなに動ける人たちなら普段ネットばっかりやって家に篭ってないでしょうよ。
ガッツリ2ちゃんレイアウトなネット書き込みの描写もかなりクレイジー。

当時自分も軽いネットオタクだったため、傍から見たらこんな風に思われているのかと、これには非常にショックを受けました(笑)
ちょっとやり過ぎです。

家の中にあれだけの警察関係者がいながらあっさりと母親を死なせてしまったり、ペンションに迎えに来た志田未来のクソ彼氏にあっさりと保護中の志田未来を連れ出されてしまうなど、警察があまりにも無能に描かれていて気の毒な気持ちにも。

ところで冒頭以降まったく父親の姿を見かけませんでしたが、父親は一体どこへ…
関係がうまくいってなかったとはいえ、志田未来が父親のことを一切気にせず何も聞いてこないというのもすごい。

テーマがテーマなだけにツッコミまくって笑って観れるものではないんですけど、それでも気になるところは気になってしまうものです。

ラストはえらくきれいにまとまっちゃったけど、しかし志田未来の立場的にこれは…
「おまえが家族を守るんだ」なんて言われたって、まだ中学生の子にこのセリフは重過ぎる。
なんだか佐藤浩市だけがスッキリして終わっちゃったって感じがしちゃうんだよなぁ。

結局追い詰めるのは誰なのか

被害者家族側からしたらふざけんなよって話なのかもしれないけど、加害者家族側は加害者家族側でこの先は地獄です。
映画のタイトルのとおり、守ってくれる人など誰もいない。一生犯罪者の家族として憎まれ、一生追いかけられ叩かれ続け、耐え切れず自殺してしまう人も多い。

だからこうして警察が保護したりするわけで、それもやっぱり叩かれる要因になりますから、警察は基本的にはこのことは公にはしないということを映画の中でも説明されています。

ただ、そうして自殺するまでに追い詰めているのは…
やっぱり、無責任な赤の他人なんですよね。

これが問題だ。
この映画の公開から12年が経って、何も変わっていないどころか今の方がエスカレートしている。

結局佐々木蔵之介は何だったのか

志田未来と佐藤浩市はどちらも良かった。
この二人が素晴らしいのもあって、ラストまで完走できる作品になっていると思います。
この頃の志田未来が懐かしいな。

突然「ウィー」とか言い出す佐藤浩市の主治医・木村佳乃の謎キャラも印象的。彼女は一体…
記者の佐々木蔵之介は「コイツは何かあるぞ」とさんざん思わせといて結局何もないっていう(笑)ここが一番のツッコミどころだったかも。
そうそう、東MAX出てたねぇ!すっかり忘れてたよ。

最後に、佐藤浩市の部下・松田龍平がめちゃくちゃかっこいいという事を声を大にして申し上げておきます。


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