如月の献立|春の訪れをお料理のなかに見つけてください
道すがら思いがけずふぅと匂ってきた香りの先に、ポツポツと花開きはじめている梅を見つけました。まだまだ寒い日々が続いていますが、立春も過ぎ少しずつ春の訪れを感じとれる日々になりました。春はもうすぐそこまでやってきています。
2月2日から如月(2月)の献立がスタートしております。食材は、河豚や松葉蟹など、冬の食材がありますが、一方で筍や菜花など、春の食材も少しずつお皿の上に現れてきています。
春の訪れをお料理のなかから見つけてみてください。
如月の献立
先附|聖護院蕪のすり流し
白子と唐墨
聖護院蕪を食べていただきたいと思い、カブと塩だけでとったお出汁に、蒸した白子と削った唐墨を合わせました。
カブは皮を剥いて乱切りにし、塩をふって出てきた水分をいっしょにミキサーで攪拌してから沸かして灰汁をとり、冷ましてから搾った100%カブだけの出汁です。
そのお出汁にすりおろした聖護院蕪を加えて、蒸した白子を浮かべ、唐墨の塩味で全体のバランスをとっています。
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前菜|飯蛸と海老芋の白和へ
きざみ黄柚子
通年みかける飯蛸ですが、年が明けてから春頃までが旬とされています。2月には毎年献立に入れる食材で、昨年は、春野菜といっしょに辛子酢味噌で和えてぬた和えのような仕立てにしました。
今年は、僕の酸味を利かせた白和へといっしょに食べてもらおうと思い、仕立てを考えなおしてみました。付け合わせにはお出汁でやさしく炊いた海老芋です。
飯蛸は、小豆といっしょに炊いて、きれいな赤い色と、ほのかな小豆の甘さと香りをまとわせてあります。
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椀物|焼河豚と揚げ蓮餅 うぐいす菜 松葉柚子
椀種に大きな焼河豚を使った料理です。焼河豚の下には、すりおろした蓮根で作った蓮餅を揚げてしのばせてあります。うぐいすの鳴く早春に収穫される京野菜、うぐいす菜がかわいらしいですよね。お出汁は鰹節と昆布でとった一番出汁です。
じつは、試作段階では、揚げた河豚と焼いた蓮餅のお椀でした。これはこれでかなり挑戦的だったのですが、揚げると河豚の味がわかりにくくなってしまうと感じたので、調理法を変えて構成しなおしています。
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造り|サヨリ昆布締めと赤貝
うるいと黄ニラの辛子酢味噌和へ
冬の食材の王様・河豚のお料理から一転、サヨリや赤貝、さらにうるいと黄ニラといった走りの食材で春の訪れを感じていただきます。
サヨリは軽く昆布締めにし、赤貝は酢橘と薄口醤油で軽く和えてあります。さらに、あえてしっかと和えずに味に不規則性を持たせたうるいと黄ニラの辛子酢味噌和へを、3点盛りのようにしてお出ししています。
お料理を一つひとつ食べていただいてもいいですし、サヨリや赤貝と辛子味噌和へをいっしょに食べていただいてもいい。一つのお皿のなかでさまざまな食べ方をしてもらえるような、余白をもった仕立てにしています。
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炙り|金目鯛の炙り 長芋 菜の花 いり酒ゼリー
脂がたっぷりのった金目鯛は、お寿司にしたり煮付けにしたりと食べ方はいろいろあると思います。金目鯛の脂よりも身のうま味をしっかり味わってほしいと思い藁焼きにしています。
藁焼き自体は、乃木坂しんでよくする仕事で、鯛や鰹などに使います。皮目だけをしっかり藁で炙ることもあるのですが、今回を、身の全面に燻した藁の香りをまとわせることで、脂の香りを中和させてて、より身の香りやうま味を感じていただけるような仕立てにしています。
付け合わせは菜の花のお浸し。いり酒で作ったゼリーをかけてから、岩手県の大久保農園さんの長芋を添えてお出ししています。
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凌ぎ|筍と松葉蟹のはさみ揚げ 筍出汁 木の芽
春らしい走りの筍が出てきました。筍の旬は、これからなのですが、やはり走りの食材でみなさまに春を感じてほしいと思い、献立のメインではなく、間をつなぐお凌ぎの位置づけでお出しさせていただきます。
メインで出す筍は、もう少しお待ちくださいね。
挟み揚げにして盛り付けたあとに、筍のお出汁をうすくはってあります。ひと口目はサクサクとした衣の食感とともに香りとうま味を楽しみながら、お出汁が浸った衣のおいしさと、最後に残った筍と蟹のうま味が溶け出したお出汁をクイっとひと飲みするまでをお楽しみいただけたらと思います。
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八寸|伊勢海老の黄味焼き 花豆 鮪の昆布〆
花山葵 粟麩揚げ煮 つぼみ菜胡桃酢和へ
「乃木坂しんの味をいろいろ楽しんでほしい」というのが私たちの八寸の考え方です。そのため、少しずつ盛り付けたお料理を食べながら、お酒が好きな方でしたら、お酒をもう1杯飲んでいただけるような内容を目指しています。
今月のメインは伊勢海老の黄味焼きです。黄金焼きなどとも呼ばれ、半身に割った伊勢海老の断面に卵黄に醤油を加えた液を塗って焼き上げたものは、お正月のお節料理でよく見かけます。
今回の仕立てでは、身に黄味の液をつけて焼き上げていきます。伊勢海老の身の具合が黄味で隠れてわかりづらいこともあり、火入れの見極めが難しく、さらに卵黄が固まりかける瞬間を逃さないようにする必要もあり、毎回、緊張する料理でもあります。
鮪の昆布〆は、ここ1年お気に入りの味なので、ぜひ味わってみていただきたいひと品です。
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強肴|百合根生地の鶉饅頭
べっこうあんに地辛子
ゆでた百合根だけで作ったお饅頭の中には、鶉のそぼろが入っています。まるでデザートのようにしっかり甘い百合根は、「月光」という品種で糖度が22〜24度と、メロンよりも甘いのが特徴です。それをくたくたにゆでることでしっかりと甘味を引き出します。
中のそぼろは鶉の身だけでなく骨まで入れてミンチにしたものを炒めて調味し、味付けしてあります。
この料理のポイントは、べっこうあんに加えた、福井県の地辛子です。独特のピリッとした辛みがアクセントになっており、これが鶉の味をグッと引き出す役割を果たしていると思います。
日本料理でもあまりみかけない鶉料理を乃木坂しんのスタイルでお楽しみください。
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炊合|聖護院大根 金時人参梅煮
ちぢみ法蓮草 長芋 湯葉
炊き合わせは、すべての食材をひとつの鍋で作る煮物とはちがい、一つひとつの食材を別々に炊いてから最後に器に盛り付けます。その分手間が多くなるわけですが、それぞれによって食材の良さの引き出し方が異なるものですので、その食材にあわせて仕事をしていった方が、より食材の良さをより楽しんでいただけるのではないかと思っています。
今回は、僕も初めて扱った聖護院大根を中心に、金時人参は梅煮に。ちぢみ法蓮草と長芋、湯葉は出汁で炊いてから盛り込んでいます。
料理屋らしいひと品をお食事前にお召し上がりください。
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食事|河豚と白子の玉子とじ
または、白ご飯と鯛の滋味造り
または、そば米雑炊
お食事を3つのお料理のなかから選んでいただきます
①月替わりの玉子とじ、今月は河豚と白子の玉子とじです。ふんわりトロリの玉子とじはやみつきになりそうです。
②と③は通年のご案内です。②はこれまでも乃木坂しんでお出ししてきた鯛を出汁醤油に漬けた滋味造りをお付けします。③は、料理長の石田伸二の故郷・徳島県の郷土料理で、鶏とお野菜、そばの実でとったお出汁でいただく素朴な料理です。
3種類のお食事のなかから1種類を選んでいただいてもいいですし、2種類や3種類を少しずつお出しすることもできます。お客様のお腹の具合を見ながらご自由にお決めいくださいませ。
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菓子|甘平のコンポート 苺最中
甘平は、愛媛県で開発された柑橘の高級品種です。薄い皮なのでミカンのように手で剥けるのが特徴です。この甘平をシロップで炊いてコンポートにしています。
苺最中は、フレッシュな苺と白玉、煮小豆、苺がたっぷりの苺アイスを最中生地に盛り合わせています。生地ではさんでゆっくりとつぶして手でつかんでお召し上がりいただくと、それぞれの味がバランスよく一度に味わっていただけると思います。
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乃木坂しんの如月の献立はいかがでしたでしょうか?
如月の献立の試食会の様子をYouTube「乃木坂しんチャンネル」にアップしてあります。noteで初回している仕立てとはちょっと違う試作段階のお料理を見ることもできます。併せてご覧いただくと、さらに乃木坂しんでの食事のイメージが膨らむと思いますよ!
今月も旬の食材を厳選してご用意し、みなさまのご来店をお待ちしております。
乃木坂しん店主
石田伸二
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