ただただ怠惰な人生だった
もっと勉強すれば志望校に絶対受かるよ!
キミはもっと頑張れる人だと思っていたんだけどな。
…………
僕は基本的に怠惰な人間だ。
どのくらい怠惰かというと、大学受験の時に全く勉強せず3浪したくらい怠惰だ。
「勉強?しなくても将来の役に何も立たないでしょ。」
……当時の僕を殴りたい。
3浪を経て無事に大学(結局地方大学)に入学したけど、入ってからも何もせずにだらだら過ごした。サークル?入ってもどうせ辞めるから入らなくていいよね。
…………
僕はそう、基本的に行動に移さないタイプの人間なのだ。
勉強しようと思ってもすぐに飽きて別のことをしだし、何か新しいことを始めるにしても怖いから、そこからいつも逃げていた。
現実から逃げに逃げ、それで得たものは周りより無駄に年を取った年齢3つ分と、トイレットペーパーのような薄くてすぐ切れる友好関係だけだった。
逃げたところでゴールは無いのだが、僕は逃げまくった。勉強、進路、部活、友達……数えたらきりがない。なにもかもから逃げまくった。
逃げて得たものはとくに無く、失うほうが多かった。
なぜ僕はあんなに逃げることに必死になっていたのだろう。
失うことが怖くなかったのか?
…………
いや違う。失うのが怖かったからだ。
僕は小学校の時、人気者とは言わないがクラスでもそこそこ目立つ人間だった。
足が速くなかったため、モテることはなかったがクラスのみんなとうまくやっていけてたと思う。
テストはほぼ100点で担任の先生もいい人だったので学校が好きで、友達と遊ぶのも好きだった。
好きだった。
…………
中学校に入ってから環境は一変した。
テストは勉強をしないと点数が取れなくなった。
先生はきつくて言う通りにしないと怖かった。
部活は必ず入らなければいけなかったので、楽な文化系の部活に入ったが、
基本的に運動部に所属する人が多いため文化系部活である僕のことをバカにすることが多くなった。
「だってお前〇〇部だろ?」って、笑われる日々が続く。
馬鹿にされても言い返せないため、僕もぎこちなく笑い返すしかなかった。
この頃からだろうか 、「イイノくんっていつも笑ってるよね」と言われるようになったのは……。
そんなんじゃ友達もできる理由なく、
一応ゲーム繋がりで一緒に遊ぶ人はできたが、あれは友達と言えるものではなかった。脅されながら付き合い続けるような関係は友達とはいえない 。いいように使われていただけだ。
そんな奴らと付き合っているときに、昔仲良かった幼稚園からの幼馴染に言われた。「あんなヤツらと関係続けない方がいいよ。」
君に何がわかるのだろうか。だって君は成績が良くて運動部で生徒会にも所属しているではないか。
あの頃の僕は麻痺していた。小学校の時とのギャップに恐れて、逃げ続けていた。
結果ほとんど失っていった。勉強、友達……。
…………
この時期のことを思い出すのは非常に辛い、思い出したくない。
心の奥底にしまっておきたい記憶だが、僕が怠惰になった理由にとても関わりがあることなので、勇気を出して振り返ってみた。こうして書いてみるとこの逃げてきたことがこれまで続いてきていたんだなと思った。
中3にもなり、皆進路を考えるようになった。周りはどこの高校に進学するかの話題で持ちきりだった。僕もそれについて話したりしたが、頭の中ではずっと、早くこの学校を卒業したいと考えていた。
3月、僕に割り振られていた番号がぽっかり空いていた。
暖かい日差しを遮るような、冷たくて虚しい風が通り抜けて行った15歳の春。
…………
滑り止めで私立は受けていたので無事高校には進学することができたが、受験に失敗した僕はさらに逃げるようになっていった。
おかげで現役も大学に受からず、3浪目まで引っ張ることになった。
なぜ、勉強する気にならなかったのだろう。
それは、勉強が将来の僕のために役に立つかどうか分からなかったからだ。
先生に勉強しろ勉強しろと言われたが、僕にはその勉強が僕の未来にどのような影響を及ぼし、僕の将来にどのような関わりを持つかが想像できなかったからだ。
だから僕はゲームをした。今その瞬間が楽しいからだ。だって楽しいから、未来の僕もきっと楽しいはず……。
…………
なんて馬鹿なことを考えていたんだろうは僕は。
今だから思えるけど、当時の僕は全てに逃げまくっていたから正当な判断ができなかった。
浪人して自分1人の時間が増えたから、こうしてちゃんと考えられるようになったのかもしれない。
1浪目でも勉強しなかった僕は、2浪目の予備校に通えるお金が無かったため、お金を稼ぐ+あまり人に合わないよう夜勤シフトのバイトを始めることになった。
勉強しないで浪人して、気づけばいつの間にかアルバイト生活。
どうしてこうなってしまったんだろう。
記念の20歳の誕生日。僕は深夜のバイト先で迎えた。
惨めな僕、誕生日おめでとう。何者でもない僕、誕生日おめでとう。
…………
成人式は出席しなかった。だって僕は何者でもないから。僕の居場所は役場から来たハガキだけ。他の居場所はなかった。
高校から1浪目までは仲良くなった友達がいたため、2浪目からは本当に1人になった。家とバイト先でしか話さない、下手したら1日誰とも話さない日もあった。
必然と1人の時間が増えたため、考えることが多くなった。今の自分のこと、今までの過去の自分のこと、そして、これからの自分のこと。
考えた結果、やはり大学は行こうと思った。一応2浪目でもセンターは受けたものの、深夜バイトの影響もあり勉強は全然できてなく結果も散々だった。
自分は形が無いと勉強できないタイプなため、宅浪は無理だと感じもう1度予備校に通うことにした。このためにバイトをほとんど貯金しておいてよかった。
3浪目も志望校は一緒で勉強は以前よりもしたが、第一志望がC判定で以前よりは上がったもののやはり足りなく、センターの結果でA判定だった第二志望に決めた。
結果としてこの決断はよかったものだと思っている。こうして自分が興味ある勉強を見つけることができ、さらに大学院に進学をしようと思っているのだから。
このことを他の人に話すとき、大学に通うためにお金稼いで偉いと皆に言われるのだが、自分では決してそんなことは思えない。
だって、本当に偉い人は、現役のときにしっかり勉強して大学に受かってる人たちなのだから……。
…………
今までは勉強といえば受験勉強のことだけかと思っていた。だけどそれは違かった。
勉強にもたくさんの種類があるし、それぞれ自分に合うやつ、合わないやつ、言ってることがそもそも理解できないやつだってある。
本を読むことだって勉強になる。そこから新しいことや自分と異なる価値観などを学べるから。なんならゲームだって一種の勉強だ。
大学生になって、実は勉強って1つじゃなく、いろんなことが勉強なんだなって感じた。気づいたのは3年生あたりからだけど。
気づいてきたら、次第に動けるようになってきた。他のことをもっと知りたいと思えるようになったからだ。
そしてそこから、自分の動ける範囲ではいろいろとやってみることにした。
僕は最近、昔からやってみたかったゲーム実況をOPENREC.cvというサイトで配信している。
今までやったことがないため怖いと思う部分はあったが、配信を何回か続けることで怖さも次第に無くなっていった。それよりも配信中に見に来てくれる方やコメントをしてくれる方が増えてきて、そういった方たちに出会えて嬉しいと思えるようになった。
僕と同時期に配信を始めた人がいて、その人を(僕が勝手に)ライバル視している。
その人は同時期に始めたにも関わらず、僕よりも人気で多くの人に見られている。
正直、くやしいなと感じる。その人にあって僕に無いものがたくさんある。これが才能の差なのかな。
ただ、逃げまくっていた僕に、競争心を抱かせたあの人には負けたくない。才能が無い僕にでも勝てる要素はあるかもしれない。
ただ、その人は僕にお構いなしに先にどんどん先に行く。他の人と比較はしない方がいいけれど、目に見えるものだから見てしまう。そして落ち込む。
どうすればいいんだろう。どうすれば配信がもっとうまくなれるだろう……。
…………
こんなこと考えながら止まっている僕に対して、時間は止まりもせず進む。
僕はどうやら深く考えすぎのようだ。
考えすぎもよくないからもう寝よう。
そこで僕は布団に入りながら今日1日を振り返るわけだ。
あぁ、今日も"ただただ怠惰な人生だった"、と。