おかえり横道世之介
こちらの本の続編を読み終わりました。
本は並行して5冊くらい読んでいることが多いのですが、前作と同じく文章が軽快でストーリーもテンポよく進むので、今同時に読み進めている本の中で1番早い読了になりました。
前作と打って変わって・・・まではいかないのかもしれませんが、明るい青春のステージから少し荒んだ舞台になっているところに、読み始めてまず「あれっ?」と戸惑いました。
パチンコも水商売も人生で全く縁がないので、完全なアウェイ感です。
あんなに日の当たる場所で生きていた人間が・・・と思いますが、人生ってわからないですもんね。
前作では自分の青春時代を重ねつつ、キャラクターにも共感を持って読み進めていったのですが、今回はそういった部分があまりなかったのと、前作で世之介の人生の終わりについては描写があったため、どこか「誰かのつけたテレビを眺めている」というような一線を引いた気持ちでの読書になった気がします。
テーマとしては「父と子」、そして「様々な形の家族」かなと受け取りました。
世之介の人生でこの時期が特に色濃かったとしたら、その理由は息子と過ごした日々とその経緯ではないかと思います。
ぎっくり腰の世之介のためにわざわざお父さんが上京したくだりを思い返すと、「父親と世之介」そして「世之介と亮太」と、ふたつの家族の関係性の対比も興味深く、もしも世之介が父親に亮太を紹介したらどんなふうに発展したかな、なんて考えたりしました。
父親が世之介に伝えたこと、世之介が亮太に伝えたこと・・・世之介はもう旅立ってしまったけど、次は亮太が自分の子に紡いでいくのでしょうね。
光司の家庭と隼人の間にも、もはや家族という運命共同体が形成されていたのではないかと思います。
光司の部屋を片付け終えた隼人がその荷物の量について言及していましたが、物質というものは無理矢理消すことができるものの、大切な人との思い出ってもう自分の人格の一部になっていて消せないですね。
今回も色々ハイライトを付けましたが、ひとつ選ぶとなると・・・
あんなに笑い合ったのに、あんなに好きだったのに、こんなときに限って、何一つ良い思い出が浮かばない。
自分の命(あるいは生)に関わるというくらいの存在の死って、その場では本当にこんな感じですよね。
まずは衝撃、次に後悔、そしてやっと悲しみ。
そんなに大きい感情の波にのまれていたら、その場で楽しかった記憶なんてすぐに出てくるわけないです。
最後のお手紙は前回同様涙々になってしまいました。
読み終わって「あー面白かった、スッキリ!」というよりは、自分が他者の人生に与えてしまう影響だったり自分の家族との向き合い方だったり、そんなことをじっくり考えてしまっています。
そして映画の横道世之介もまだ観れずにいるのですが、小説はこのあと2冊刊行されるようなことが巻末の対談に出ていたので、機会があればまた読んでみたいです。
読書って心の旅ですね。
前作の登場人物とも、今後の小説でお目にかかれたら嬉しいなぁ・・・って、それは読んだみなさん思われてるかもしれないですね(笑)。
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