私だけの所有者
『はじめての』より、島本理生著「私だけの所有者」を読み終わりました。
YOASOBIが大好きなPさんの影響で、自分自身はあまり知識もないままよく一緒に聴いているのですが、「ミスター」が流れると毎回とあるドラクエのお友達を思い出します。
とても不思議なので気になってその曲だけ聴いてみたところ、「叱られてばかりで」というフレーズが理由なのかなと気付きました。
バトルがとても上手なお友達で、一緒に遊ぶといつも足を引っ張ってばかりなのが申し訳なく、どうしたらお友達みたいに上手になるのか知りたくて色々教えてもらっているのですが。
ノエキャロという生き物はとてもゲームがへたで「あれもだめこれもだめ」状態でして・・・それが歌詞の「叱られてばかりで機械仕掛けの心を無力さが包んでいった」という部分にリンクしたのでしょうね。
それで興味がわいて調べたところ「セブンティーン」の小説も収録されている『はじめての』に行き着いたので、これは運命だなぁと感じて購入しました。
『はじめての』で1番最初の小説がこの「私だけの所有者」です。
手紙を書いているアンドロイドの「僕」が物語の主人公です。
大抵の人は読んでいてきっとなんとも思わないでしょう・・・でもこのアンドロイドの思考がどうにもノエキャロっぽく、それがまず不気味で悲しかったです。
この「僕」が「所有者」の元で身の回りのことをして働きながら、人の心が分からずに苦しんだり自分の感情に戸惑ったりしたことを手紙のやり取りで伝えるのですが、その内容にはあまりにも自分と重なる部分が多く「自分は本当に人間だったよね?」と奇妙な感覚に陥りました。
「所有者」の背景や「僕」を所有することになったいきさつには政治的な背景や社会も絡んでくるのですが、その全てにSFっぽいフェイク感が全く無くて「せいぜい5〜10年後」というくらいのリアリティさを感じさせられるところがすごいです。
(そういう設定はないですが。)
そのリアリティさから「もうそういう時代なんだな」と覚悟させられる部分もありました。
どんなにハイクオリティな文明になろうとも、人間の残酷さや戦争は古代からあまり変わりはないですね。
ハイライトを付けた部分も多かったですが、ひとつ載せるとしたらここでしょうか。
ごめんなさい。ごめんなさい。あなたの気持ちが分からずにごめんなさい。僕には分からないのです。なぜなら僕はしょせん機械だから
本を読んだあとも悲しくてしばらくめそめそしていましたが、改めてMVを見るとものすごい臨場感でそちらでも涙涙でした。
小説と音楽のコラボってすごいですね。
「セブンティーン」のMVもドラクエの別のお友達にそっくりなので、このあと「色違いのトランプ」を読むのもとても楽しみです。