メニュー紹介1:モリーユキノコのパスタ
以前、フンザの飲食店は、なぜパッとしないのか?という話を書いたけど、改めてその大きな理由の一つは、フンザの地元食材があまり生かされていないことにあると思う。
フンザには、まあまあの数の飲食店があるが、提供されているのはほとんどがパキスタンカレーで、それは、パキスタンのほかの地域のレストランで食べるものとほとんど変わりない。
道を歩けばサクランボやリンゴや梨やアンズがたくさんなっていて、土産物屋にはアンズオイル、クルミオイル、アーモンドオイル、ナッツ類などが売られている。これらは他の地域にない、フンザならではの食材だ。なのに、フンザのレストランでこれらを生かした料理に出会うことは、ほとんどないのだ。
だったら自分で作るべき!ということで、のどかカフェのメニューの基本コンセプトは、「フンザのオリジナル食材を生かした料理」としている。日々、研究と実験を繰り返すなかで、だんだん定番のレシピ、メニューが固まってきたので、紹介していきたい。
モリーユキノコのパスタ
去年、カフェをオープンした後、フンザの下町、アリアバードの乾物屋で見つけた、黒っぽい、網みたいな傘をつけたキノコ。初めはぼくも何のキノコか分からなかったけど、ネットで調べるとモリーユ茸(アミガサダケ)と呼ばれる、高級キノコであることが判明。ネットで料理方法を調べ、クリームと相性が良いとのことで、カフェではクリームパスタとして提供することにした。
フライパンでクルミオイルやバターを熱し、ニンニクのみじん切りを炒め、香りが出てきたら、水で戻したモリーユ茸を、戻し汁と一緒に入れる。クリームを投入し、塩、こしょう、フンザ産のクルッツと呼ばれる山羊の粉チーズを入れて味を調える。ソースが出来たら、ゆでたパスタを和えてできあがり。ソースはとても上品な茸の香りがして、茸自体もプリプリしておいしい。色味は全体的に薄茶色で地味なので、逆に、パセリや陳皮の粉末をまぶすと緑やオレンジ色が際立って、一気においしそうに見える。
個性的な茸なので、パスタ以外でも使いたいと思い、時々、クリームスープにしたり、ステーキソースにしたりしている。ほかにもクリームと合わせずに作る、おいしいメニューを考えたいのだが、まだいいレシピが思いついていない。
地元の人に聞くと、モリーユ茸は、「シリジョン」と呼ばれ、身近な茸らしい。ただ、それは日常的な食材としてではなく、その辺の森に生えているという意味でだ。ぼくも一度、友人に連れられて森の茸狩りに行ったら、生のモリーユ茸を見つけたことがある。最近は少なくなってきたが、昔は森をあるけばそこら中に茸が生えていたんだって。
一方で、この茸は地元の人はほとんど食べないようだ。この茸を使ったメニューをいろいろ聞いてみているけど、誰も知らない。森の茸はもっぱら輸出用に採られ、売られているらしい。