万年筆と自転車と
自転車の選び方を、万年筆を例えにお話ししようと思います。
万年筆好き視点でのお話なので、万年筆に興味が無い方には「なんのこっちゃ」になりますので、適当にスルーして下さい。
写真は普段、日報を書くのに使っている万年筆です。学生時代に買ったプラチナ万年筆#3776センチュリーと、最近買ったセーラー万年筆のプロフィット21です。どちらも細かい字を書く用なので、ニブ(ペン先)はFとEFです。
文房具熱は定期的にやってきては去って行くのですが、ここ最近はすっかり万年筆にハマっております。きっかけは太字を購入した事でした。今まで何本か万年筆を購入した事がありますが、どれも実用で購入していたので字幅は基本的にF(細字)。ですがブログやら動画やらを見ていると「なんだか太字が面白そう」となり、パイロットのBBを買ったのがダメでした・・・
もうインクフローが良くてぬらぬら書けて楽しい!これは他のメーカーのニブも気になる!となって、買うならB以上かも!?と太字ばかりに手を出し始めました。何本か手に入れた時に、ニブには凄い個性がある事も分かるようになります。今まで国産しか持っていなかったのですが、海外の万年筆になると本当に個性的、言い換えると品質にバラつきがあり「ハズレ」を引くと上手くインクが出ない、一定のタイミングでかすれる等の不具合があり、「万年筆は試し書きをしてから買え」という言葉に深く共感したのでした。
万年筆も新品で購入すると保証が付きます(中古でも保証がつく場合もあります)。なのであまりに渋いニブの個体は調整に出しました。すると同じ万年筆とは思えない書き味に。ルーペで見ても素人にはよく違いが分かりませんが、別物と言えるレベルで違いました。巷ではペンクリニックやペン先調整専門店などもありますので、もう商売として成立してしまうくらいの世界なんだなと。
ここでやっと自転車の登場です。
自転車は基本的にお店で組み立てなければ販売できない工業製品です。入荷時は一般車でも完成品ではなく、乗れる状態にするにはある程度の作業が必要になってきます。ここで手抜き作業で売っても、かなりしっかりと組んでも特に一般車の場合はあまり違いを感じられないと思います。というか手抜きか否かを判断する「基準」を持っていないと分かりません。恐らく自転車屋か自転車にかなり詳しい人でないと、販売されている完成車の精度は分からないと思われます。
となると、量販店や面倒くさがりなお店だと「ある程度の基準でいいや」となります。だって手間をかけても定価を上げられる訳ではありませんから、手間は少ない方がコストはかかりません。量販店勤務の時は、その基準の甘さに本当に驚いたものです。
万年筆好きな方であれば、ニブの調整が書き味に大きく左右される事はご存知の通り。嗜好品としても楽しめるモノですから、素材や色を楽しむこともできます。インク沼も恐ろしいですね。違いを知りたくなる人には本当に危ない世界です。
自転車も同じく、組み立て方ひとつで乗り味にも寿命にも、更には安全性(ここ凄い大切です)にも大きく関わります。万年筆に不具合が起きても命に関わる事はまずありません。ですが自転車に不具合が発生すると命に危険が及ぶ可能性が大いにあります。
自転車はお店に入って来た状態ですと、万年筆で例えるならニブ調整はお店の腕に委ねられます。
つまり書き味(乗り味)は完全にメカニックの腕次第という事です。
インクは一応出るし、まあ文字は書けるけどフローも悪いし引っ掛かる・・・うーんコレはどうなんだろう?というニブの状態で渡されたら、万年筆としては最悪な状態です。ちゃんと組まれていない自転車も、万年筆で例えるならそんな状態で平然と納車されている訳です。
みなさんの自転車は、ちゃんと組まれているでしょうか?
是非、信頼のできるショップさんを見つけて心から楽しい自転車生活を送れることを願っています!
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