飛べ!!人生の真ん中にはいつも自転車があった。
全ての乗り物は飛べるものだと思っています。
高校生の時、同級生がダートジャンプとやらをやっているから一緒にやろうと言われまして、誘われるがままに同級生の親が営んでいる自転車屋に行くと、初めて見るMTB(キャノンデール)を貸してくれたのでみんなで山へ行くことに。
山道から「ここ入って大丈夫なの?」と思う獣道みたいな場所をくぐり抜けると、ちゃんと整備されたダートジャンプコースがありました。それまでやった事など一度も無い「自転車で飛ぶ」という行為を見せられて、すぐに「じゃあ、とりあえず飛んで!」とむちゃくちゃな要求をする同級生。私はおっかなびっくりしながら、初心者用のコースをとりあえず走ってみるも飛べません。そりゃ、いきなり行って飛べる訳無いですね。ですがレクチャーされながら、なんとか夕方には1つ小さなテーブルトップを飛べるようになり、すっかりダートジャンプにハマッてしまった訳なのでした。
それから週末は晴れていればコースに行って遊び、慣れてくると大きなジャンプ台にもチャレンジするようになりました。キャニオン(真ん中が谷になっている)も飛べるようになりましたが、残念ながらビビリは治らず技らしい技をメイクした事はありません。インバートやX-UPなど憧れましたけど、ワンハンドさえままならずルックバックで転倒。それでも楽しくて、自転車屋でアルバイトをしていた事も手伝いプレイバイクを作ってどんどんのめり込んで行きました。週末はダートジャンプ、平日の夜はストリート。高校2年生の終わりには部活も辞めて、ますます自転車漬けの生活へ。日の出まで遊ぶこともしばしばあったので、当然授業は眠くてほとんど勉強もせず成績は下降・・・ですが反比例して自転車は少し上達しました。
私の青春の中心軸には常に自転車があり、自転車に乗りながら笑って、自転車に乗りながら泣きました。自転車を整備しては喜んで、自転車を壊しては悲しみました。教員を夢見て教員輩出大学へ進学はしたものの成績が悪く教員免許すら取れず、それでも諦めきれずに会社員を辞めてまた大学を受験するも不合格。教員免許のいらない教員補佐という仕事をやりながら免許を取得しようと受けるも、またまた不採用。それじゃあ・・・と受けた大学職員もことごとく落ちて、ついに年齢制限にも引っ掛かり夢は潰えました。そんな私に残ったものは自転車だけでした。それで気が付けば自転車屋になっていました。
ダートジャンプからは随分と遠ざかってしまいましたが、今はトライアルに関わっています。リップを使って飛ぶジャンプと、自力で飛び上がるトライアルとでは別物ですが、トライアルも「飛ぶ」という大枠では同じですね。やはり乗り物で飛ぶと本当に楽しい。加藤登紀子の曲のように、飛びたいと思う衝動は「その昔、自分は鳥だったのかもしれない」と思うくらいです。まあ、イカロスや鳥人間コンテストとはベクトルが違う「飛ぶ」ですけどね。
生きてると色々な事があるじゃないですか。ストレス溜まるじゃないですか。ストレスは勝手に溜まるのに、預金は勝手に貯まらないとかいう理不尽もあるじゃないですか。そんな時は飛ぶといいと思います。私は今でも、自転車で飛んでいる時は初めて飛んだ16歳の自分をどこかで感じます。何も考えず、悩まず、飛ぶことにだけ集中している時間。下手くそでも全然構わないんです。自転車で飛べば、その瞬間は重力さえも振り切って自由なのです。