『アイデンティティの運用』を学んでコミュ力を高める【かしこさラボ:実践編4】
今回は、『アイデンティティの運用』について考えてみたい。簡単に言えば、「あなたはどういう人ですか」ということだが、それをしっかりと言語化できるか、意識的に運用できるかとなれば話は別だ。
ソクラテスが「汝自身を知れ」といったのは、2400年ほど昔のことである。未だにこの言葉が生き続けるのは、当時から今に至るまで人間の「最大の関心事」かつ「難解な問題」であり続けたのは「自分」であるということだ。
①アイデンティティの構成要素
その他にも、仕事や趣味、所属や財産などが挙げられる。
ここでは構成要素を項目として列挙したが、その内容まで踏み込むとキリがなく、日本だけで1億2000万人を超える人がそれぞれに特徴や好みを抱えて生きている。組み合わせはココイチのトッピングを軽く超えて無限だ。
その中で「共感」を感じながら生きるため、人はコミュニティを探す。自分を受け入れ、自分を鼓舞し、自分を潤してくれる、そんなコミュニティに出会うために長い旅を続ける。
②コミュニティについて
【場所や所属の分散化】
実際は居住地の部屋のなかにいるが、同時にネット空間で架空の場所にいるように複数の場所に同時に存在できる。また、国を超えることもたやすくなった。ある意味、藤子不二雄の「コピーロボット」と「どこでもドア」だ。
生れ落ちるところは選べないが、所属はある程度選びやすくなった。同時に所属できるコミュニティも増えた。出入りも簡単になった。それは、アイデンティティの使い分けの利便性をもたらす反面、リソースを分散させるデメリットも生み出す。
【コスト】
ちなみに、「ダンバー数=150」というのがある。人間が安定的な社会関係を維持できる認知的上限の数らしく、それを超えると安定した運用ができなくなるこということだ。仕事で結構な数を消費していると考えると、それ以外に残るリソースは限られる。
また、コミュニティへの所属は、本来はお金のかかること。国や自治体でも税金が賦課されるし、無料のプラットフォームでも、広告料金などで売上を上げていて、顧客に顕在化しないだけだ。無料は有難く感じるが、良質なコンテンツに行き着くまでのコストが意外と高い。本当に有用なものは何か、お試し期間に使い倒すようにしていくのが良い。
【コミュニティの機能】
コミュニティに求められるものは、組織としての目的・目標よりも、実際に必要なのは「機能」である。構成員の数や性質によって目的や目標は流動的になるので、その存続を決めるのは必要な機能があるかどうかである。
何らかの問題を解決したいポジティブな個人の要望に応え得る「機能」をいかに実装しているかで、コミュニティの価値が決まり、後は家計や価値観と相談して所属が決まる。
③自分というリソースの運用
中田敦彦さんがお金持ちと話すときには「どうやったらお金持ちになれますか」と聞くのではなく、「どんなポートフォリオで運用しているのか」という聞き方が突破口となると話していた。そこにお金持ちの「個性」が反映されるからだ。
お金に限らず、「自分」というリソースのポートフォリオが、「個性」の重要な要素になる。それをすぐに話せる人と、その場で適当に考えている人では、魅力の伝わり方が大きく変わってくるだろう。
もちろん、現有のリソースだけではなく、フローをうまく設計・運用して、ベネフィットを上げる必要があるし、換金のしやすさ、時流や市場動向などに気を配るのは、金融資産と一緒だ。
あと、アイデンティティが分散すると、生真面目にその統合を図らなければと思う人もいる。一貫性があるほうが納得性は高まるだろうが、自分という入れ物に収まるうちは、ノイズがあるのは当たり前程度に考えていてよいと思う。出すか、出さないか。あとはリソースに占める割合の問題だ。
わたしが『かしこさラボ』の記事を無料で配信するのは、「天下国家を支える人材の育成」という目標を考えた際に、考え方を広めることを優先しているからだ。ちなみに、他の仕事は2か月ほど停止して、貯金を切り崩しながら、生活の60%程度の時間をこの作業に充てている。情報収集と考察に徹底的に時間をかける中期的なビジョン設計の時期と位置付けているからだ。
その一部を公開して、読者の思考の手間を省き、気づきが得られたなら幸いという発想だ。ちなみに、極端な生き様は真似したくないとよく言われる。しばし、低収入飛行を続けることにはなるからだろう。しかし、私もお金は欲しい。ノイズが叫び続ける。これは、二重人格でも自己矛盾でもない。
全てを決める材料は、「あなたがどうなりたいのか」というビジョンだ。そこを掘り下げないと後悔が増えることになる。若いうちにこれに時間を割けるといいんだが、社会に出てから気づくことってやたらと多いのも事実で。
自分をどうリフォームするのか。中期的な自己設計は具体的かつ慎重に考察を深める必要があるが、理想と現実のギャップが激しいときは、メンタルが病む。そういうときは、"Don't worry Be happy"(Bobby McFerrin)でも口ずさみながら、土いじりをするといい。
◎まとめ
・アイデンティティの材料はほぼコントロールできるもの
・まずは自分がどうなりたいのかの把握から
・中期的ビジョンは具体的かつ慎重に考察する
・コミュニティ選択はお試し重視・コスト許容
・コミュニティには機能を実装する
・ダンバー数とリソースの分散に留意
今回、得られたところはこんなところか。
(2022/9/13・改)