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不思議な彼と夏の思い出

こんにちは、こんばんは。
グラフィックとWebのデザイナー、野田 佳予子です。
『デザイン&Web のこのこワークス』の名前で、新潟県の田舎にて主に地元のお客様に支えられて仕事しています。

早々に梅雨が明け、いつも7月中旬まで蒸している新潟もすっかり夏空です。
真っ青な空と熱い風、風鈴の音に、どうしようもなく感傷的な気持ちになってしまって、昨日帰路についた彼のことを思い出しながら筆を取っています。

遥々大阪から来てくれた彼は、21歳の学生です。
彼と私の関係は、生徒と先生でしょうか。
彼は自分の夢のためのWebサイトを作りたくて、利用したオンラインサービスがきっかけで出会いました。
昨年暮れから、彼の野望の具現化を手伝っています。
絵を習いたい、直接相談したいということで、ここまで来てくれました。

彼はフットワークが軽く、即行動の人です。
最初「行ってもいいですか?」と言われたときは嘘やんと思ってドギマギしてしまいました。

ZOOMやメッセージでやりとりして、若き彼の描く夢の話をたくさん聞きました。
精神はとことん理想主義な私にとって、彼の話はおもしろく大変微笑ましいです。
同時に私は現実主義でもあるので、ぜひ実現してこの目に見せてほしいと思う反面、「もっとよく考えろ!」とも思います。
そこを深堀り、形にするのが、デザイナーである私の役目です。

長いことおしゃべりするあまり、全然関係ない話もたくさんしました。

好きなものや好きなこと。
彼は変わったもの、一つしかないようなものが好きです。
物でも人でも空間でも。
一点物の雑貨、長い年月を刻んできた家具、店主と多くのお客の時間を蓄積してきたお店、変わった人との出会い…
私には「変わった人」がどういうものかわからないので定義に苦しみますが、彼によると、私は彼の中の“変わった人を集める芸能事務所”に絶対入れるそうです。

人と違ったこと、おもしろいことをやりたいという話。
変わった人でありたい、「何してんねん(笑)」と人から思われるようなことをしたいんだそう。

臆せずどんな人とも話せる、友達になれるコミュ力おばけで。
とにかく行動することでいろんな人と出会い、次の何かにつなげていきたい。誰かと一緒ならハプニングすら楽しめる。
そのくせ、自分自身のことは全然人に話さないという。嘘やん。

小説が好きなこと。
ジブリは『耳をすませば』と『海がきこえる』ばっかり何百回も観ていること。
サッカーやってて、どう見ても陽キャのくせに、教室の片隅で本ばかり読んでいる物静かで知的なキャラに憧れてシフトしようとしていること。

人間観察が好きなこと、魅力的に思う人の話。
人のにおいの話。

今までの恋愛の話。
意図せずモテる彼が唯一恋に落ちた、高校の同級生の女の子のこと。
儚げで大人しそうな読書好き年上女性に惹かれること、妖精みたいな存在として勝手に神格化してしまうこと。

正直クソ野郎すぎて、彼の彼女には決して聞かせられません。

毎日会って何かしらおもしろいことを一緒にやる、いつメンのこと。
スタートアップの会社にジョインしていて、3つ上の社長さんとがんばっていること。

人が好き、おもしろいことが好き、考えるよりも行動で次の扉を開く彼は、内向的で心の内に燃え滾る信条と感受性の爆弾を抱える私とは異なるタイプです。
彼に贈るコピーは、ずばりこれです。

「ゆるパリピ」
「美しい中二病」

私は繊細すぎて豆腐メンタル、一人でいがちですが、彼とは抵抗なくいろんな話をしたし、楽しいです。
彼の人たらし所以なのだと思います。
豊富であらずとも優しくポジティブな言葉運び。
彼の低く静かな声色や話す調子は、感覚過敏な私の耳にも心地良く、関西弁とその根明な文化を感じさせるところも好きです。
今はすっかり新潟県民の私ですが、幼少期は奈良県で育ったせいもあるかもしれません。
野生の野田を手懐けるとは、恐ろしい男です。

もっと前から知っているような

7月4日、新潟駅まで迎えに行って、初めてリアル対面した彼は、思っていたとおりかわいらしく、思っていたより長身でした。
慣れない人とは緊張で冷や汗ビッシャビシャになってしまうはずだけど、なぜか平気でした。

新潟の景色がよく見える道を、ゆっくり遠回りで運転しました。
青々とした田んぼ、海、川。
妙な看板、敷地広々な学校や施設。
少しずつ夕暮れていく空。
彼の住む大都会とは違う光景が新鮮なようでした。

ZOOMで話していたときと同じように、私たちはすんなり言葉を交わし始めました。
心底不思議なことに、車の中で二人きりなのに全く平気。
沈黙が全く気まずくなく、居心地良いと感じるくらい。
なにより、二人共通の話題である「におい」が、大丈夫。
驚いたことにそれは私だけではなく、実はお互いにお互いのにおいで、訳もわからず二人とも落ち着いていました。

しかし同時に、これは危ない!と私は本能的に察知しました。
おちてしまう!(苦笑)

彼と過ごして

それから5日間、一緒にご飯を食べたり、作業をしたりしながら、たくさん話しました。

最初こそ得意の人見知り発動で、彼の目を直視できませんでしたが、ほどなくして慣れました。
子どもの頃のケガが原因と言い張っている、かすかに割れた顎を、「触りたいと思うかもしれませんけど」と冗談言われたことを思い出しながら、たまにそっと盗み見しました。

朝から祭りを見に行ったり。
グラウンドで体育の授業中の高校生たちを並んで眺めたり。
夜道を散歩したり、星空を見上げたり。
これが好き、あれが好きと、お互いの好きなものを教えあったり。
神社の境内で、キラキラと日の光を受けて輝き揺れる、数多の風鈴の音に耳を傾けたり。

彼は私の話もよく聞いてくれて、ついつい話し過ぎてしまいます。
自分の内面の話や、人間の心情の機微だったり、自分の秘密や、普通しないだろう小っ恥ずかしい話、くさい話もできてしまう。
「そんなの言ってるだけだろ」と内心疑っていましたが、嘘ではなく本当に人間が好きだから、ちゃんと聞けるのでしょう。
そしてやっぱり中二病なのでしょう。
私が今こうして書いている、このムズムズするほどくっさくて恥ずかしい文章も、その感性でたぶん喜んでくれると思います。

彼はときおり、冗談か本気かわからない言い方をします。
最悪の場合、それでからかっているパターンもあり、たちが悪いです。
だから、こんな話をするのは野田さんくらい、ずっと友達でいたい人だとか平然と言ってきて、空気が読めない、冗談が通じない私は本当に困ります。
例え真面目な場面でも、嘘なんかじゃないと本人が言っていても。
これについては閉口極まりないので、わからないように冗談言うのはやめてほしいと抗議しました。

なんでセンチメンタル

「また会ってくれますか。」
私は「もちろん」と答えました。
そんな答え方をしたのは生まれて初めてでした。

「きつくなったら、そろそろ来てほしいって言ってください。そんな人に僕はおすすめです。」
「とても楽しかったです。また会いましょう。」
そう言って彼は帰っていきました。

冷静に考えたら、よく知らない人といきなり5日も二人きりで一緒に過ごすなんて、本当に意味がわからないし、ハードルが高いと思います。
でも、私も楽しかった。会えてよかった。
恥ずかしくて面と向かっては言えないけれど。
大好きな親友に会えた後みたいな、清涼感と充実感でいっぱいのあの感じ、エネルギー満タン!になりました。
疲れ果てて抜け殻になるのが常の私には、とてもとても稀なことです。
自分と世界とを遮断して世捨て人になりがちな私を、すくい上げてくれました。

なのに。
すっきりした頭と心で、すごく爽やかな気分とは裏腹に。
彼が去っていった後の事務所、開け放った窓からカーテンを揺らして入ってくる夏の風。
一緒に行った神社で買った風鈴の音。
どうにもセンチメンタルになってきました。なんでやねん!

刈り上げツーブロの短髪に地味顔でジェンダーレスな私を「イケメンですよね」と彼は言ってくれました。
この謎センチメンタルを克服できれば、私の男前度は爆上がりするはず。
感傷を葬送するため。
罪作りで人たらしな彼との、この夏の数日の思い出を書きました。

人懐っこく、子どもっぽい所作もあるけれどさりげなく気が利いて、不思議に魅力的な彼は、生徒であり、友人です。
こっそり言います。また会いたいな。
私を見つけてくれてありがとう。

冒険の果てに何があるか

そんな彼の野望は、
ふと心に生まれた思いつきや疑問などを深堀りして、平凡な毎日を冒険に変えること。
そんなコンテンツを繰り出して、一緒に楽しむ人や情報をつなげることです。

彼と私はなかなかに良いチームだと思います。
本気で、ときには生暖かく、彼のやろうとしていることを手伝うのは楽しいです。
かなりむちゃくちゃな企画もあるし、どうなるかはまだまだ未知数ですが、意思をもってひたすら行動する人のその先を見たいので、純粋に応援しています。
だから私は、こうして言葉を紡ぎ、彼を見守るのです。

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