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また会いたいなって思うひと

過去の経験に懲りず、たくさんの買い物袋を下げ、ヒーヒー言いながら帰ったその日。(だってスーパーのポイント2倍、最終日なんだもの)

だっこー!とせがむ娘をなだめて、
なんとかマンションのエントランス扉を肘で押し開けると、

その先にあるエレベーターで、
ドアを開けて、
小さなおばあさんが待っていてくれました。

初めてお見かけした方です。

エレベーターが着いた音はだいぶ前にしていたので、
ずいぶん待たせてしまったと気付き、すかさず駆け足で、

ありがとうございます!助かります!
と乗り込みました。


そこでふと気付くのです。

高齢の方とエレベーター、ご一緒してしまった。

私も娘も体調になんら問題ないけれど、本来ならお先にどうぞって譲って、次のエレベーター待った方が安心だったのではないだろうか。


そんな私の心配をよそに、娘はエレベーターの「閉」ボタンを押し、「押したー!」と自慢して、

「これなぁに?」「これはー?」とエレベーターの壁や床をいじり始めました。

迷惑掛けないようにという考えが空回って、思考が停止してしまいます。

ひゃー汗 おろおろ...
えぇっと、どうするのが正解だ??


触らないで...と言いかけたとき、

おばあさんが ふふふっ と笑いました。


かぁわいいねー!

顔をくしゃっと笑顔にして、話しかけてくれました。

その笑顔が、なんとも素敵で。
お花が咲いたように愛らしく、明るい。

マスク越しでも伝わる、
心をぽっと温かくする笑顔です。

嬉しくて、
ありがとうございます!と私も笑顔で答えました。


エレベーターがおばあさんの住む階に着くと、

去り際に、まあるい腰に当てていた手をあげて、
ばいばーい と娘に声をかけてくれました。


私は、さようなら〜と言いますが、
娘は何も返しません。

最近、気まぐれなのか、そういうことがよくあります。

親としては、ちょっと申し訳なく、ちょっと寂しいんですよね。


おばあさんは歩いて行き、
エレベーターの扉から閉まるよ と音がしました。


その時、ようやく娘がその気になったようで。

バイバーイ

と、おばあさんに手を振りながら、ぼそっと言いました。


ぼそって言うもんだから、届かないかな。

エレベーターの扉は閉まり、上の階へ。


そしたら、おばあさんが振り向き気づいてくれ、

ばーいばーーい!


と大きな声。

すでに階を上がるエレベーターの中で、私たちはその声を聞きました。


嬉しくなって、ふふふっ と笑い、

バイバイって言ってもらえたね。

嬉しいね。と娘に言いました。


娘も笑顔で うん!って。

また会いたいな。



この記事は下記 #第二回ほっこり大賞 に参加しています。

素敵な企画をありがとうございます。

世の中にほっこりがあふれますように。


#第二回ほっこり大賞



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