成功法則に支配される生き方
20代の頃に成功本にハマった時期があって、自伝や自己啓発本、ビジネス書の類を読み漁っていた黒歴史がある。
思い返せばどれもこれもゴミみたいな本ばかりだったが、2割くらいは心に残る話があり、それらは今でも多少は役に立っている。
その中でも僕がとても好きな話があるので、今日はそれを紹介したいと思う。
即効性のある成功法
たまに「ポレポレさんはいいねぇ、冬でも客が途切れなくて。うちにもやり方教えてケロ!」とか「奥山くんのところは何でいつもガイジンがたくさんいるんだ?どうやって連れて来るのか教えてケロ!」
などと聞かれる事があるが、こちらも社交辞令として受け取っているので「いやいや、うちも暇ですよ」と受け流している。
しかし、中には本気で僕が特別なノウハウを持っていると信じる希有な人もいて、「秘策を教えてケロ!」と請われることがある。
ではなぜ、黙っていても客が来る京都やニセコと違い、ガイドブックにも載らないこの町に外国人がやってくるようになったのか?←PHP新書風
僕のやっていることを正直に話すと「それだけ?」みたいな反応をされるのだが、僕は今をときめくイケメン天才経営者ではないので、あっと驚くような秘策などない。
いつも答えることは同じだ。
”興味を持ってくれそうな人に会いに行く”
やったことはただこれだけ。これを、2013年から繰り返してきた。
ボストンバッグに詰め込んで
僕は記憶力がカマキリ並に悪いので、当時読み漁った本のタイトルも内容もほぼ覚えてない。
だけど、なんかの本に載っていたこの挿話だけは覚えている。
盛田はトランジスタラジオをボストンバッグに詰め込み、単身アメリカへ売り込みに行った。
これはソニーの創業間もない頃のエピソードだ。僕の記憶力はカマキリなので、本当にトランジスタラジオなのか、ボストンバッグではなくスーツケースなのか、アメリカじゃなくて盛岡だったのかは定かではないが、問題はそこじゃない。
僕はこの一文を読んで妙にワクワクした。青臭いかもしれないが、こういう冒険的な仕事をしてみたいと思った。
ボストンバッグラジオ、やってみた
実家の宿を継いだ時もこの話だけは覚えていたので、僕もいっちょやってみようかなと思った。日本に外国人観光客が増え始めた2013年のことだ。
自分で作ったパンフレットをボストンバッグ、ではなくパタゴニアのリュックサックに詰め込んで、エアアジアに乗って隣のおっさんのイビキを我慢しながらシンガポールに行ってみた。
目的地をシンガポールにしたのも、日本から程よく近くて英語も通じてお金持ちがたくさんいそうだから、という超絶アバウトな理由で、緻密なリサーチも大胆な戦略も全くなかった。
たぶんこの辺がイケメンエリート天才経営者と、塩顔落ちこぼれ経営者である僕との大きな違いだ。まず顔面偏差値が違いすぎる。
実際は本に出てきた苦労話みたいなことは一切なく、EメールはあるしFacebookやGoogle Mapまであるから、アポ取りも会社訪問もスタバでのミーティングとかも、盛田昭雄の時代よりよっぽど楽ちんだった。ありがとうテクノロジー。
そしてそれを7年間続けてたらいろんな人が遊びに来てくれるようになったし、助けてくれる人もたくさん出来た。今回のコロナ騒ぎでも、「3月の旅行はキャンセルになっちゃっうけど宿泊代は次行く時の分ということで返さなくてもいいよ!」なんて言ってくれる常連さんもできた。
何よりインバウンドブームという時流に乗れたツキもあった。昔から僕は運がいい。
成功本的なまとめ
そんでこう言う話のまとめって成功本的には大体決まっていて、とにかく行動しろ!とか継続は力なり!などと言うマッチョで暑苦しいアドバイスになる。
確かにそれはそうなんだろうけど、僕が言いたいことはそれじゃない。
性に合わない事は長続きしないってことだ。
僕はたまたま営業が苦じゃなかったからアポ取りも突撃隣の晩ご飯営業もできたわけで、ボストンバッグにトランジスタラジオの話も楽しそうだからやってみただけだ。
要は、僕は自分がやってみたいと思うやり方で楽しんでたら偶然それなりにうまく行っただけで、もっと効率的に短期間で結果を出す成功方法はあったかもしれない。
だけど、こうすれば稼げる!みたいな結果を出すためだけの方法を真似しても、それって面白くないんじゃない?って思ってる。
即効性のあるやり方で結果が出れば一時的には嬉しいかもしれないけど、後から虚しくなるでしょ。そんなの誰がやっても一緒だから機械にやらせとけばいいじゃん。
スポーツでも仕事でも、結果を出すまでの過程が楽しいんだ。そうじゃなかったらボブスレーみたいな食えない競技をやる人はこの世からいなくなる。
続けることと、続くこと
かく言う僕も、SWAT分析とかアナリティクス解析とか株式投資とかアフィリエイトとかプログラミングとか、流行りのものはとりあえずやってみた。やってはみたものの、長続きしなかった。だって面白くないんだもん。
ロードバイク、ボルダリング、ヨガ、ピアノ、料理、座禅、ツイッター、部屋の掃除...
パッと挙げるだけで続かなかったものがこんなにある。。(部屋の掃除はそういうものじゃないだろ!というツッコミは甘んじて受けます母さん嫁さんごめんなさい)
逆説的だけど、自分がこのやり方でやってみたいなと心から思えた方法は長続きする。長続きすると打席に立つ回数も多くなるから、ヒットが増えて結果的に稀に成功したりするんだと思う。
だからまぁあれだ。あんまり性に合わないことは根詰めてやらない方がいいかもねって話。成功本とか成功法則とか真似するのは確かに効率いいかもしれないけど、それで鬱になったり病気になったら一番コスパ悪いでしょ。稼ぎが少なくても健康の方がいいべ。
始まりと終わりで結論違うような気もするけどまぁいいや。おしまい。
※一番上と一番下のカッチョいいボストンバッグの写真は大阪のレザーストア、スナワチの前田将多さんからお借りしました。こんなカッチョいいバッグにナイフとランプと一切れのパンを詰め込んで旅に出たいなぁ。