死にたくないなら自立しろ
今年も全国から雪の便りが届き、いよいよバックカントリーシーズンに突入します。最近は空前のパウダーブームの影響で自然の山へ足を踏み入れる方も多くなり、日本でもバックカントリースキー・スノーボードの文化が根付き出したようで大変嬉しいことです。
ガイドがいても客は死ぬ
それに伴い様々なバックカントリーガイドツアーが催行されるようになりましたが、30年以上月山でバックカントリーガイドを行ってきた我々から見ると、全国各地で危険なガイドツアーも散見されます。この前も勉強がてら某県のガイドツアーにお客として参加した際、滑走中に他のお客さんがはぐれてしまい、結局捜索に2時間かかりツアーどころではありませんでした。これは斜面を長く滑らせようとして先頭ガイドと最後尾ガイドの間が空きすぎてしまった事故でした。
2009年、北海道のトムラウシ山で起きた死者9名を出した史上最悪のガイドツアー事故をみなさん覚えておられるでしょうか?登山ブームで急成長したガイド会社が悪天候の中出発してしまったこの事故は、経済原理を優先したことで「中止」や「延期」、「引き返す」といった命を優先する判断ができなかったことが一番の原因です。
装備の違いが生死を分けた
そして参加者の中には命を失わずに済んだ人と、残念ながら亡くなってしまった人がいます。その違いはなんだったのでしょうか?生死を分けた要因、それは充実した装備と遭難対策知識の有無だったのです。トムラウシ山登山に耐えうる装備と知識をもっていた方は命を落とさずに済んだのです。
このように収益性を追い悪天候でも無理に出発したり、差別化を図り過激な斜面を求めて雪崩の巣を滑りに行くツアーは、まさに事故のロシアンルーレットと化しています。
「素人が知識を持たず単独で山に入る」のはもちろん危険なのですが、「ガイドツアーに参加し全てを他人に委ねて山に入る」のは前者と同じように大変危険であるということを、バックカントリー界でも認識しなくてはならない時期に差し掛かっています。
ガイドツアーだから安全なのか?
みなさんに是非覚えておいていただきたいのは、「ガイド」と看板を掲げている組織全てが安全なツアーを行っているわけではなく、一部のガイドに至っては最低限の安全でさえ保証できていないという現状です。みなさんがツアーに参加する際に署名するあの紙には「事故を起こしても訴えないで下さい」と書かれているはずです。
全てを他人に委ねて事故が起きた時、裁判でガイドの責任を追及するのはあなたの家族であって、あなたはもうこの世にいないかもしれません。そんな状況は誰しもが望んでいないし、そうなる前に手を打つべきです。あなた自身が正しい知識を身につけ、何が危険で何が正しいのかを知ることが最大の自己防衛となるのです。
結局自分を守れるのは自分だけ
怖さの裏側は知識不足です。雪山の正しい知識を習得して不安を払拭し、今年も安全で楽しいバックカントリーを楽しんでください。