大阪デクショナリー6
大正区、港区、西区の大阪西部エリアを中心に、年に2回発行しているフリーマガジン「Lifes」の中で連載している、絶滅して欲しくない大阪弁を思いつくまま紹介しているマイ“デ”クショナリーです。
【あ行】
あかんたれ
あかんたれとは関西弁で「ダメ」という意味の「あかん」と、人を罵る時の「バカたれ」などがくっついた言葉。
この言葉を初めて知ったのは作家、脚本家の花登筐が脚本を書いた「あかんたれ」という関西テレビで放送されたドラマ。
志垣太郎演じる秀松という丁稚が波乱万丈な人生の果てに、立派な商人に成り上がるまでを描いたストーリー。
鶴岡雅義と東京ロマンチカというムード歌謡グループが歌う主題歌「あかんたれ」というフレーズが何度もリフレインされ、話は覚えていずともこの曲は脳裏にしっかりとマーキングされていた。
意気地なし・弱虫などの意味も含んでおり、小さい頃、夜中トイレに行くのが怖かった時、無理に起こして付いて来てもらった祖母によく言われたことを思い出す・・・いまだに人生において、あかんたれだと思う。もう治らない。
えんぺつ
鉛筆のこと。
耳に鉛筆を挟んでたり、字を書く時にペロっと芯を舐める、短い鉛筆を大事に大事に使っている世代の方たちがよく使っていた言い方。
「えんぺつどこにやったか知らんかぁ」「そのくらいやったらえんぺつ、まだ使えるがな!もったいないことしいな」という言葉が小刀で削られたいびつな感じの鉛筆を見ると思い出す。
映さんといて
関西の情報バラエティ番組では必ずと言っていいほど路上インタビューが行われる。もちろんネタの宝庫、名言(迷言)の泉であるおばちゃん、おっちゃんらに話や意見をうかがうため。そんな時のよく見るのがさんざんタレントと喋った後にカメラなどに気づき「いや、もう映さんといてぇや」と顔を隠しながら歩き去るという光景。「カメラあるの知っとったがな」とテレビを見ているもんからツッコミが入るのもお約束。
大阪LOVER
ドリカムの曲。
今年結成30周年を迎えたDREAMS COME TRUEがUSJにできたライド・アトラクション、ハリウッド・ドリーム・ザ・ライドのために作った曲で、大阪と東京の遠距離カップルを描いたもの。
大阪弁の歌詞がふんだんに使われているのだけど、大阪人が歌うとイントネーションの違いに戸惑ったりする。あくまでも関東住みの女子が発する大阪弁の歌詞とリズム。とはいえ、大阪のライブで歌われたりするとご当地ソングの定番として、会場が異様な盛り上がりを見せるのはお約束の光景。
おおきに
感謝の意。
大きに有難しという言葉がこの言葉に変化したそうで、個人的にとても大好きな関西弁。
時折、大阪色を出している居酒屋が、お会計を済ませて見送る時に「おおきに~」と、惰性で言われるとちょっとがっかりしてしまう。
【か行】
けったくそわるい
気分が悪い、忌々しいの意。
けったは、関西弁で使うけったいな(変な)のこと。そしてこのけったいは諸説あるものの、占い用語で結果のことを「卦体 (けたい) 」 と言い、縁起が悪いや忌々しいことが出た時に“卦体が悪い”と言ってたそうで、これに強調と相手に対し投げつける意味も込めて“クソ(糞)”がつけられたそう。
今では使う人も少なくなりましたが、言葉に出されると不快な気分になることは確か。
肥えるわ
太ってしまうなぁという意。
おばちゃんというのは、何か楽するときや得すると感じた時、罪悪感はわかってますけど的なエクスキューズを挟む。電車で座りたい時、ちょっと隙間が空いていたりすると、「ちょっと足痛いから座らしてもらお」とか、エレベーターで1階から乗り込み、2階のスイッチを押すと「荷物多いとかなんわぁ」とか、ティッシュをもらうと「ちょっと犬に使わなあかんねんわぁ」など・・・厚かましさとたくましさ、微笑ましさが絶妙に同居している。「肥えるわぁ」も、甘いもんを食べたいとき、試食がある時などに、ダイエットせなあかんのにというエクスキューズが見え隠れ。さらに明日から痩せよという続きもある。
【さ行】
さっぱわやや
全然ダメの意。
今ではなかなか若い世代には通じない大阪弁のひとつ。商売人がよく使っていたっけ。「最近どないだ?」「さっぱわやや」「そうか、うちもや」「ほな」。これで会話が成り立つ。
しょうむない顔して
つまらなそうにしているの意。
父親に怒られた時に拗ねたようなつまらなさそうな態度をしていると、母親は必ず「しょうむない顔してんとこれ食べとき!」とお菓子や果物を食べさせてくれた。しょうむ(も)ないは諸説あるが仕様もないから来ていると言われている。ちなみにアホみたいな顔しても同様的な意味がある。
【た行】
田辺聖子
2019年亡くなった大阪市出身の小説家。
大阪弁にこだわった作品や恋愛小説を発表し続け、1964年「感傷旅行」で第50回芥川賞に選出されてから若手女流作家として注目され、その後も『花衣ぬぐやまつわる……わが愛の杉田久女』で女流文学賞、『ひねくれ一茶』で吉川英治文学賞や、菊池寛賞、「姥盛りの花の旅笠」で蓮如賞など様々な作品で受賞し、晩年まで活躍。
彼女をモデルにして藤山直美がヒロインを演じたNHKの朝ドラ「芋たこなんきん」は記憶に新しい。
関西の女性を知り尽くしたエッセイなどは今読んでも新鮮。個人的には1979年に宝塚で花組が上演した彼女が原作の「舞え舞え蝸牛」という「荻窪物語」を題材にしたミュージカルが見たかった!
玉出
西成区の南部に位置するエリアで、南海本線岸里玉出駅や大阪メトロ四ツ橋線玉出駅が最寄駅。
大阪でも“ド”がつくくらいの昭和の匂いが色濃く残る下町。そして玉出と言えば、関西人にとって黄と赤の電飾看板がおなじみのスーパー玉出が頭に浮かぶはず。低価格路線でお得感満載。時折行われる1円セールが名物。ちなみに赤と黄色は広告色として最も人間の目を引く色だそうで、スーパー玉出の看板はまさに理にかなっている。今年、レジ袋が有料となり、ここのトートバッグが大阪以外で“おしゃれアイテム”として注目されていると知った。
でん
タッチの意。
鬼ごっこなどをやった時に相手にタッチすると「今、でんした!」と言う。
「でんして帰ってきたわぁ」は、ちょっと寄って、すぐに引き返す、トンボ帰りの意味。
ちなみに蛇足ですが、西成区花園町にあるお好み焼き屋「でん」は、朝の連続テレビ小説「てっぱん」に登場するお好み焼きを仕込んでいたお店。
てんしば
天王寺公園エントランスエリアの愛称のこと。
2015年10月にリニューアルオープン。元々は1903年に開催された第5回内国勧業博覧会の会場として使用され、その後1909年に会場跡地の東側を改めて天王寺公園として開園した。
長らく市民の憩いの公園として変化しながら親しまれ、1987年には地方博覧会、天王寺博覧会(通称てんぱく)が開催。閉幕後は有料の公園に。その間にホームレス問題や青空カラオケの露店問題などがあったもののみごと再生。
芝生をメインにサッカーコート、ドッグラン、レストラン、カフェなどの施設がオープンし都会のオアシスとして市民に愛され、と同時に天王寺のイメージもここのおかげで随分と変貌した。
天神橋筋商店街
日本一長いアーケード商店街。
天神橋1丁目から天神橋6丁目まで南北に2.6キロ、約600もの店舗が連なり、各丁目の雰囲気の違いを楽しみながら散策すると楽しい。
天神橋筋2丁目には学問の神様が祀られ、日本三大祭りのひとつ天神祭でもおなじみの「大阪天満宮」や落語の寄席「天満天神繁昌亭」があったり、天神橋筋6丁目には大阪の庶民の暮らしを知ることができる「今昔くらしの博物館」がある。
天神橋筋5丁目には寿司屋通りと呼ばれるコスパ最高の寿司屋が集まっていたり、アーケードの一本筋を横に入ればウラ天満と呼ばれる居酒屋や立ち飲み屋、バーなど隠れた新店・名店、老舗があり、朝飲み・昼飲み・夜飲みと一日中酔えることのできる商店街でもある。
【な行】
日本橋でんでんタウン
浪速区日本橋の3丁目から5丁目にかけたエリアで、電気街として有名。
第二次世界大戦後はラジオ向けパーツや電気工具などを扱う店が増え、東の秋葉原に匹敵する一大電気街として発展。
しかし大手家電量販店の出現で徐々に衰退、反対にパソコン、それに付随してオタク系サブカルチャー発信の店舗が増え、オタロードと呼ばれるようになりエリア自体が変貌し続けている。
ここ数年は外国人の観光スポットとしても注目され、メイドカフェやガチャポンショップなどが幅を利かせていたけれど、ここ最近はコロナの影響が露骨に現れており、また混沌としたエリアになってきている。
西川きよし
芸人。
1980年代、漫才ブームを牽引し、関西の笑いを全国区に広めた漫才コンビ、横山やすし・西川きよしの功績は凄かった。コンビ解散後は国会議員を務め、関西芸人界の重鎮として、さらに妻の西川ヘレン、子どもの西川忠志、西川かの子の家族ぐるみの活躍もあって、いつのまにか“なにわのロイヤルファミリー”なんて呼ばれている。「小さなことからコツコツと」は関西を代表するギャグのひとつ。
【は行】
歯いらんわ
柔らかく喉越しのいい様。
一見硬そうに見えたものを咀嚼してみたら、思った以上に柔らかく感じた時におばちゃんおっちゃんらが良く発言する。
「これ、歯いらんわ。ほら(口を開ける)溶けたわ」みたいに。基本、おばちゃん、おっちゃんにとって柔らかいことが善となっているので、この言葉は褒め言葉に位置する。
ヘレ肉
牛肉でテンダーロインと呼ばれている部位。
全国的にはヒレ肉と呼んでいるけれど、関西ではヘレ。その柔らかさ、脂肪の少なさゆえ高級な部位。ゆえに「ヘレ食べよか」は最上級のお誘い言葉。昔、祖父が僕の7歳の誕生日に連れていってくれたのが鉄板焼き屋。そこで初めてヘレ肉を食べさせてくれた。その時の美味しさはいまだに忘れられない。今も食べたいけれど、値段が値段なだけにグッと我慢している。
【や行】
八尾の朝吉
今東光原作の小説「悪名」の登場人物。
1961年に映画化され、八尾の朝吉には勝新太郎、弟分のモートルの貞には田宮二郎が演じ、大ヒット。
以後16作も作られ、喧嘩と博打にはめっぽう強いが、女性には純情一途、お酒は一滴も飲めないという朝吉のキャラクターで勝新太郎は一躍大スターとなり、座頭市シリーズや兵隊やくざシリーズとヒット作を放っていく。個人的にオススメは「続悪名」。シリーズの中では傑作だと思っている。
よ~いドン!
朝の情報バラエティ番組。
毎週月~金の朝9時50分から関西テレビで生放送されている番組でメインMCは円広志と高橋万里恵アナウンサー。日替わりで未知やすえ(月)松本伊代(火)ハイヒールモモコ(水)ハイヒールリンゴ(木)羽野晶紀(金)が出演し、日替わり企画のリポーターとして芸人らが登場している。前半のレギュラーコーナーで街を歩いて面白い人と出会う「となりの人間国宝さん」は認定されるとステッカーがもらえるのだけど、関西を歩くと割とこのステッカーに出くわすのでちょっと嬉しくなってしまう。